会社のコミュニケーション 第2話:データがささやく“最適解”
自分の判断ミスで、部下を苦しませてしまった高橋。
藁にもすがる思いで導入した、謎のプロジェクト管理ツール『ワンチーム』。
果たして、このツールは、彼の救いとなるのでしょうか。
数日後。
マネージャーである佐藤は、プロジェクト管理ツール『ワンチーム』のダッシュボードを見て、眉をひそめていた。
DBサーバー移行タスクの進捗バーが、ほとんど動いていない。
高橋くんは、あんなに頑張っているのに。
私の判断が、彼を追い詰めてしまっているのだろうか…。
彼女が自分の判断ミスに気づき、どうしたものかと頭を抱え始めた、その時だった。
画面の隅に、『ワンチーム』から、彼女だけに見える形で、通知がそっと表示された。
『提案:タスク「顧客管理システムのDBサーバー移行」について。
現担当者(高橋健太様)の進捗では、完了に10日以上の遅延が予測されます。
一方、社内スキルマップの分析によると、鈴木守様のスキルセットが本タスクに98%合致しており、担当変更した場合、2日以内に完了する見込みです』
「……!」
佐藤は、そのあまりに的確な分析に息をのんだ。
これは、彼女への批判ではない。
ただ、客観的なデータに基づいた、プロジェクトを成功させるための、この上なく合理的な「提案」だった。
翌日、佐藤は高橋と鈴木を会議室に呼んだ。
「高橋くん、DB移行の件、大変だったわね。本当にありがとう。
ただ、全体の状況を見た上で、私が判断を間違えていました。
ごめんなさい。
ここからは、スペシャリストである鈴木さんにお願いしようと思います」
そして彼女は、高橋に向き直って続けた。
「代わりに、高橋くんのセンスが絶対に活きる、新しいUIデザインのタスクをお願いしたいの」
高橋の顔に、みるみる安堵の色が広がっていく。
自分の能力不足を責められたわけではない。
もっと輝ける場所を、会社が用意してくれたのだ。
鈴木もまた、自分の専門性を頼りにされたことに、静かに、しかし強く頷いた。
データが示した「最適解」は、誰のプライドも傷つけることなく、チームをあるべき姿へと導いた。
本日もお読みいただき、ありがとうございます!
ついに、謎のツール『ワンチーム』が、その能力の一端を見せ始めました。
でも、本当にこんなにうまくいくのでしょうか?
次回、高橋のチームに訪れた、確かな変化を描きます。
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