沈黙の“壁” 第2話:賢い“弟子入り”
全く進まない、ベテランの鈴木さんからの知識継承。
マネージャーの佐藤も、高橋も、完全に手詰まりです。
この状況を、解決する糸口はあるのでしょうか。
高橋と鈴木の間に割り当てられた「知識継承」のタスクが、数日間まったく進捗していないことを、『ワンチーム』が見逃すはずはなかった。
ある日の午後、マネージャーである佐藤のPCに、『ワンチーム』からプライベートな通知が届いた。
『インサイト:「知識継承」タスクが進捗停止しています。
原因として、継承すべき知識が体系化されておらず、双方にとって負担が大きいことが考えられます』
続けて、こう表示された。
『提案:鈴木様の過去5年間の作業ログを分析し、「知識継承カリキュラム案」をドラフトとして作成しました。
ご確認の上、佐藤様から鈴木様へ「議論の叩き台」としてご提案いただくことで、鈴木様の心理的負担を軽減できる可能性があります』
佐藤は、添付されていたカリキュラム案を見て、その的確さに目を見張った。
週ごとのテーマから、具体的なトピックまで、完璧に体系化されている。
彼女はすぐに鈴木を会議室に呼んだ。
「鈴木さん、先日の件、丸投げしてしまってごめんなさい。
教える側も大変ですよね。
それで、叩き台として、こんなカリキュラムを考えてみたんですが、どうでしょうか。
これに沿って、少しずつお話を聞かせていただけると、すごく助かります」
鈴木は、ぶっきらぼうな顔で資料に目を通したが、その表情が少しずつ和らいでいく。
これなら、自分が一から考える必要はない。
自分の知識を、ただ話せばいいだけだ。
何より、マネージャーが自分のためにここまで準備してくれた、という事実が、彼の職人としてのプライドを心地よくくすぐった。
「…ふん。お前がそこまで言うなら、やってやるか」
鈴木は、少しだけ口角を上げて、そう答えた。
お読みいただき、ありがとうございます!
今回もまた、『ワンチーム』が驚くべき提案をしてくれました。
ベテランのプライドを尊重し、教えられる側ではなく「教える側」をサポートする。
なんとも優しい一手ですね。
次回、このエピソードもついに完結です。
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