沈黙の“壁” 第1話:巨匠の“沈黙”
さて、今日からは新しいエピソードが始まります。
今回のテーマは「ベテランからの技術継承」です。
どの職場にもある、世代間のコミュニケーションの壁。
高橋たちは、どう向き合っていくのでしょうか。
株式会社テックフォレストには、一つの大きなリスクがあった。
チームの基幹システムの一部に、長年、ベテランエンジニアの鈴木守だけが担当してきた、いわば「ブラックボックス」化した領域があることだ。
彼に万一のことがあれば、業務が完全に停止してしまう。
マネージャーの佐藤理恵は、そのリスクを解消するため、プログラマーの高橋健太を、鈴木の後継者として育てることを決めた。
佐藤のオフィスの小さな会議室。
三人の間には、重たい空気が流れていた。
「…というわけで、鈴木さん。
高橋くんに、少しずつでいいから、あのシステムの保守業務、引き継いでもらえませんか。
あなたの知識は、会社の財産なので」
鈴木は、腕を組んだまま、不機嫌そうに「…まあ、時間が空いたらな」とだけ答えた。
(俺の技術は、マニュアルに書いて覚えるような、安っぽいもんじゃねえ。
そもそも、なぜ俺が、苦労して貯め込んだノウハウを、ただでくれてやらなきゃならんのだ…)
一方、高橋も、伝説的なエンジニアである鈴木を前に、完全に萎縮していた。
(どうやって引き継げって言うんだよ…。何から聞けばいいのか、全然わからない…)
佐藤は、二人の間にそびえ立つ、分厚く冷たい「職人の壁」を感じていた。
指示を出したはいいが、これでは前途多難だ。
頭の痛い問題が、また一つ増えてしまった。
案の定、引継ぎは全く進まなかった。
高橋は、何から手をつけていいかわからず、かといって不機嫌そうな鈴木に声をかけることもできず、ただ気まずそうに自分の席に座っている。
鈴木は、そんな高橋を一瞥するだけで、自分の仕事に没頭し、教えようとする素振りも見せない。
二人のデスクの間には、見えない「壁」が、日増しに高くなっていくようだった。
本日もお読みいただき、ありがとうございます。
教える気のないベテランと、聞き出せない若手…。
とても現実的で、胃が痛くなるような問題ですね。
この高い壁を、あの賢いアシスタントは見過ごすのでしょうか。
続きは、また明日の更新で!
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