会社のコミュニケーション 第1話:すれ違う“配慮”
はじめまして、作者です。
これから始まる最初のエピソードは、3話構成の短いお話となっています。
主人公たちの日常に、どうぞ、お付き合いいただけますと幸いです。
20X5年10月、株式会社テックフォレスト。
プロジェクトマネージャーの佐藤理恵は、山積みの課題を前に、こめかみを軽く押さえた。
彼女は自分のチームを愛しているし、メンバー一人ひとりの能力を最大限に引き出したいと、常に願っている。
しかし、複数のプロジェクトが同時に動く現実の中、個々のケアまで手が回らないことに、歯がゆさを感じていた。
「…というわけで、この『顧客管理システムのDBサーバー移行』、高橋くんにお願いしたいんだけど、いいかな?」
佐藤が声をかけたのは、プログラマーの高橋健太だった。
彼は、真面目で実直な性格で、与えられた仕事は必ずやり遂げる。
少し主張が苦手なところはあるが、この責任感の強さがあれば、この重要なタスクも乗り越えてくれるはずだ。
それが、佐藤の彼に対する「配慮」と「期待」だった。
「…はい。がんばります」
高橋は、緊張した面持ちで短く答えた。
本当は、データベースの深い知識を要するこのタスクが、自分の得意分野ではないことに気づいていた。
だが、期待をかけてくれた上司をがっかりさせたくない、という想いが口を閉ざさせた。
その日から、高橋の苦闘が始まった。
彼は、言われたからにはやり遂げようと一人で抱え込み、連日遅くまで残業を繰り返した。
しかし、作業は全く進まず、焦りとストレスだけが、雪のように降り積もっていく。
一方、このタスクの最適任者であるベテランエンジニアの鈴木守は、別の単純な保守作業を割り当てられており、定時きっかりに静かに会社を後にしていた。
佐藤の「配慮」は、チーム内で、静かに、そして残酷にすれ違っていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
働く中で感じる、ちょっとした理不尽やストレス…。
そんな日常が、優しいテクノロジーで少しだけ素敵に変わっていく、そんな物語を描いていきたいと思っています。
主人公の高橋は、果たしてこの後どうなるのか。
もしよろしければ、また明日もお付き合いください!
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この物語の公式サイトを立ち上げました。
公式サイトでは、各話の更新と同時に、少しだけ大きな文字サイズで物語を掲載しています。「なろうの文字は少し小さいな」と感じる方は、こちらが読みやすいかもしれません。
今後は、キャラクター紹介や、作中のITシステムの解説なども充実させていく予定ですので、お楽しみに!
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