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朔の進路と、美園。

フローライト第九十七話。

クリスマスの日の夜、美園は仕事を終えてマネージャーさんの車で家に向かっていた。途中、マネージャーさんに電話が入り、マネージャーさんが少し深刻そうに話していた。


「何かありました?」と通話を切ったマネージャーさんに聞く。


「んー・・・美園ちゃん、ツイッターチェックした?」


「いえ・・・今日はまだ・・・」


「美園ちゃんと同級生の男の子の動画が出ちゃってるんだよ」


「えっ?」と美園はスマホを開いた。検索してその動画を見つける。


それは明希の店に行く途中で見つかり囲まれてしまった時の動画だった。


「これ・・・」


利成がたまたま通りかかって助けてくれた・・・その時の様子も映っている。


「その男の子・・・何なのかって・・・」


「何なのか?・・・彼氏です」


「・・・いつから?」


「デビューする前からですけど?」


「デビューの時に聞かれなかった?男女関係」


「聞かれたけど・・・私はアイドルでも何でもないし・・・」


「いや、それがそうはいかないんだよ」


「・・・・・・」


 


マンションの前に着くと「多分、また連絡すると思うから」と言われる。


自宅の玄関に入ると、朔の靴があった。


(え?今日呼んだっけ?)


そう思いながらリビングに入ると、「おかえり」と咲良と朔が言った。


「ただいま・・・朔、今日約束してたっけ?」


「してないけど・・・」と朔が咲良の方を見た。


「私が呼んだの」と咲良が機嫌よく言う。


「は?どういうこと?」


「だってクリスマスじゃない?一緒にクリスマスやろうと思って」


「何で私に言わないの?」


「え?だって美園、仕事だったし・・・」


「ラインくらい見れるよ」


「そう?ごめんごめん」と咲良が言う。


「大体どうやって朔に連絡したの?」


「ラインだよ」としれっと咲良が言う。


「は?何で朔のライン知ってんのよ?」


「教えてもらったんだよ、ねー」と咲良が朔の肩を抱いた。


「・・・・・・」


「何よ?いいでしょ?ラインくらい」


美園は咲良の言葉を無視して自分の部屋に行った。


(まったく、咲良はのんきでいいわ・・・)と思う。


「美園・・・」と朔が部屋に入ってくる。それから「ごめん」と謝ってきた。


「別に朔が謝る事ないでしょ?咲良が呼んだんだから」


「うん・・・」と朔が立ったままうつむいている。


「ま、私も朔と会えて嬉しいしね」と言ったら朔が顔をあげて嬉しそうな顔をした。


「でも、ちょっと問題起きた」と美園はベッドにドサッと座った。


「問題?」と朔が不安そうにする。


「これ」と美園は自分のスマホでさっきの動画を出してから朔にスマホを渡した。朔がそれを見ている。


「どうしよう・・・」と見終わってから朔がひどく不安そうな声を出した。


「朔はどうもしなくていいから。私がどうにかするから」


「でも・・・」


「朔、もし知らない人に声かけられて何か聞かれても絶対答えないで。何も言わないこと。わかった?」と美園はまだ立ったままでいる朔を見上げた。


「うん・・・」


「大丈夫だから」


「・・・・・・」


「それより、お父さんは?どうなの?」


そう聞いたら朔が途端に落ち着かないような表情になる。


「何でもない・・・」


「何でもない?まず座んなよ」と朔に言うと、朔が床のラグの上に座った。


「何でもないとは?」


「・・・専門に行きたいって言ったら・・・」


「言ったら?」


「・・・殴られて・・・お母さんも・・・」


「え?お母さんも?」


「うん・・・」と朔が頷く。


「何?お母さんも殴られることあるの?」


朔が頷いている。


(え、じゃあ、完全にDVじゃない)と美園は思った。


「俺のせいだから・・・」


「何で朔のせいなのよ?」


「俺が・・・だから自衛隊に行ったほうがいいのかなって・・・」


「は?朔?ちゃんと考えな。自分のことだよ?朔のお父さんは何にも関係ないの」


「・・・・・・」


朔がうつむいている。


「朔?」と美園は朔のそばまで言って朔の顔をのぞき込んだ。


「俺が言うこと聞けば・・・お母さんも殴られないし・・・俺はお父さんの前から消えることができるし・・・」


「それ間違ってるよ?」


「・・・・・・」


「お父さんの前から消えるのに、自衛隊に行く必要なんかないよ。ただ家を出ればいいでしょ?」


そう言うと朔が顔を上げた。


「家を?」


「そうだよ。来年は十八才になるんだよ?何でも仕事はあるし、家も出れる」


「でも・・・俺、何もできない・・・絵を描くしか・・・」


「絵が描けるでしょ?もっと本格的にやろうよ」


「本格的って?」


「本気でやるってこと」と美園は立ち上がった。朔が不安そうに見上げてくる。


「どうしようかな・・・明希さんの店だけじゃダメだよね・・・きっと他にも方法があるよ」


美園はスマホを開いてみた。


「ユーチューブ・・・はダメだし・・・絵を売るか朔を売るか・・・いや、両方だね」


「美園・・・」と朔が立ち上がる。美園は机の前の椅子に座ってパソコンを開いてイラストや絵画、色々検索した。


「朔、まだあと一年ある。その間に考えよう。とりあえず自衛隊は行くって言わないでよ。専門で何とか通して」


「でも・・・お父さんが・・・」


美園は朔の方に向き合った。


「お母さんはいつも殴られてる?」


「ううん・・・俺とのことで揉めた時に・・・」


「そうなんだ。お母さんも自衛隊に行けって?」


「ううん・・・言ってない」


「何て言ってるの?」


「何も・・・」


「何も?」


「うん・・・」


(やれやれ)と思う。朔の母親は夫の顔色をただ窺っているだけらしい。


 


奏空が帰宅してからみんなで夜の食事を取った。咲良が機嫌よく朔と話しているのを奏空が珍しそうに見ていた。美園は奏空に今日ツイッターでのことを聞いてみようと口を開いた。


「奏空」


「ん?」と奏空が美園を見る。


「私と朔のことが動画ででちゃったんだけど・・・そのことでマネージャーさんがまた連絡するって・・・どうしたらいい?」


美園がそう言うと、今まで喋っていた咲良も口を閉じてこっちを見た。


「あ、何か言ってたね」と奏空がわりとのんきに言う。


「奏空の時はどうしたの?」


「俺の時はー・・・」と奏空が考えてから「どうだったっけ?」と咲良に振った。


「知らないよ、私は」と咲良が言う。


「私は部外者で、話し合いの中には混ぜてもらってないから」と咲良がご飯を口に入れた。


「そうだっけ?」と奏空が言う。それから「多分・・・話し合いを散々して・・・メンバーから総スカンくって・・・社長さんから色々文句言われて・・・アイドルやめようかと本気で思った感じだったかな?」


「そうなんだ。で?結局どういう風に収まったの?」と美園は聞いた。


「最初は利成さんに確か罪を擦り付けて・・・咲良の妊娠の時はいよいよ隠せなくて・・・それで結婚するって通した気がする」


「よく通せたね」


「まあ、売り上げ次第ってことになって、とりあえず保留みたくなったんだよ」


「売上とは?」


「歌の売り上げや、ライブの動員数、まあ、その他もろもろ?」


「どうなったの?減ったの?」


「ところが、何と増えたんだよ」と奏空が笑った。


「えー何でだろう?奏空が何かやったとか?」


「俺が何するのさ?魔法使いじゃないんだからさ」と奏空が料理を口に入れた。


「だって奏空は物事の全体が見えるって言ってたじゃない?」


「見えるけど、見えるだけだよ。だからといって何もできないよ」


「ふうん・・・」と美園は箸を置いてから「それじゃあ、何にも参考にならないじゃん」と言った。


「基本的には事務所の方針に従うしかないよ。そこに所属しちゃってるからね」と奏空が言う。


「あーだから面倒なんだよ。芸能界なんて」と美園はうんざりとした。


「美園・・・」とさっきから黙っていた朔が口を開いた。


「ん?」


「俺・・・その・・・」と朔が口ごもる。


「何よ?」


「その・・・もし邪魔なら・・・」


「邪魔なら?」


「その・・・」とまた朔が口ごもったままうつむいた。


「邪魔じゃないし、一緒にいるって言ったでしょ?」


美園が言うと奏空が「へぇ、美園も成長したね」と言った。


「どういう意味?」


「いや、ちゃんと本質が見えたんだ」


「まあね」と美園が言うと咲良が「まったく意味がわからないんだけど?」と呆れたように言った。


すると奏空が咲良の方に微笑んで「自分本位の場所から少し移動したってことだよ」と言った。


「そうなの?私にはまったく変わらずに相変わらずの上から目線のお嬢様に見えるけどね」と咲良がしらっとした感じで言った。


「ごちそうさま」と美園が席を立った。すると朔も慌てて席を立って「ごちそうさま」と言う。咲良が「どういたしまして」と笑顔で朔に答えている。


美園が部屋に入ると朔が自分の鞄からスケッチブックを取り出した。そして「これ・・・」と美園に渡してくる。


「何?」と美園は受け取って中を開いてみた。女の子の絵が鉛筆や色鉛筆、パステルのようなもので描かれている。


「可愛い・・・どうしたの?これ」


「毎日描いてた・・・美園にあげるよ」


「私に?いいの?」


「うん、クリスマスプレゼント」


「えーありがとう。嬉しい」と美園が笑顔になると朔も笑顔になった。


「でも私、朔に何も用意してないよ」


「いいよ・・・俺は」と朔が言う。


「ごめん、今度絶対何かするから」


そう言いながらスケッチブックをめくった。幼い女の子から大人の女性まで描かれている。その中の一枚は制服姿だった。


「あれ?これうちの学校のだよね」と美園は言った。


「うん・・・そこに描いてあるのは全部美園だから・・・」


「えーこの可愛い子供も?」


「うん」


「私の子供の頃ってこんな可愛くないよ」と美園は言った。


「そんなことないよ」と朔がベッドに座っていた美園の隣に座ってくる。


「アハハ・・・何か子供の頃から知ってるみたいだね」


「・・・美園が来世も一緒にいようって・・・」


「あーあれは朔が言ったんだよ」


「そうなの?」


「そうそう」と美園は笑った。自分でも何であの時、そんなことを言ってしまったのかわからなかった。


朔が美園の頬に手を伸ばしてきて頬を撫でてきた。


「前に・・・美園が泣いた時・・・言ってたよね」


「そうだね」


「わかんないけど・・・俺もそんな気がした・・・」


「そう?じゃあ、きっとそうなんだね」と美園は朔に向かって微笑んだ。


「泣かないで・・・」と急に朔が言う。


「泣いてないよ?」


「もう泣かないで・・・」と朔が美園に口づけてきた。


朔の唇の感触に身体が何だかしびれるように快感が走る。朔の手が美園の膝を撫でてきて美園も朔の頬に手を伸ばした。しばらくは舌を絡めたり、唇を舐め合ったりしながら朔が美園の膝を撫でていた。朔の手がスカートの中に入ってくる。


(何かすごく感じちゃう・・・)


「大丈夫?」と朔が聞いてくる。


「うん・・・」と美園は言った。


朔の手が下着の中に入ってきた時、身体がビクッと震えてしまった。朔が気がついて美園の顔を見た。


「気持ちいい?」と聞かれて美園は顔を赤らめた。返事をしないでいると朔の指が美園中に入ってくる。


「美園も気持ちよくなって欲しい・・・」と朔が言ってから、スカートをめくりあげて下着をおろしてきた。それから感じる部分を舌で舐められて美園は身体をよじった。すると朔が吸い付くように舐めてきた。


「朔・・・ダメだって・・・」と美園が朔の舌から逃げようとすると、足を朔の手が押さえてきた。


(あ・・・ヤバい・・・)


美園はもういちど身体をよじって朔から離れようとした。朔が美園の足を強くつかんでくる。


「朔・・・離して・・・」と美園は思わず言った。すると朔が指を入れてきた。


「あ・・・」と美園は強い絶頂感を感じて身体がけいれんした。朔が動きを止める。


「美園?」と朔に顔を覗き込まれた。美園が黙って布団で顔を隠すと、「何で隠れるの?」と朔が聞いてくる。


「だって・・・」


「気持ちよくなれた?」と朔が聞いてくる。


「うん・・・」と美園が答えると、朔がすごく嬉しそうな笑顔になって「ほんとに?」と言った。


「うん・・・ほんと」と美園は布団越しに朔を見た。


「良かった・・・」と朔が美園に口づけてきた。


(散々自分のをやってからのキスは微妙だ・・・)と思っていたら、朔が自分のズボンと下着をおろして美園の中に入ってきた。


「美園」と名前を呼びながら身体を動かす朔はいつもの通りだ。


──  ちゃんと本質が見えたんだ ・・・。


奏空の言葉を急に思い出す。


(朔・・・朔が私には必要・・・)


朔を受け取めながら、鮮明な朔と自分との縁が見えたような気がした。

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