古びた妖怪図鑑に記された降霊術
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」を使用させて頂きました。
図書館の閉架書庫から出して貰った妖怪図鑑は、予想以上の年代物だった。
宇宙人の目撃例は証言者の特徴が間違っているし、明らかに編集者が適当にでっち上げた創作妖怪が載っているし。
まあ、こうしたユルさも昔の児童書の味わいだね。
私にとって重要なのは、降霊術の手段を記したコラムだよ。
「成る程…サトリ様を呼び出すには、必要条件が色々あったんだね…」
閲覧室で読みながら、思わず頬を緩めちゃったよ。
どんな質問にも答えてくれるサトリ様という怪異は私達の祖父母の若い頃に流行った噂で、その正しい召喚法は長らく忘れられていたの。
この私こと鳳飛鳥、オカルト小学生の異名は伊達じゃない。
古の都市伝説に再び日の光を当ててみせるんだから!
時は午前零時。
私は児童公園の公衆電話を訪れていたの。
「残数4のテレカを入れたら、後は4のボタンを連打するだけか…」
「もしもし。私、サトリ様よ。」
すると受話器の向こうから甲高い声が聞こえてきたんだ。
噂は本当だったんだ。
「最後に受電したのは何年前かな?久し振りだなぁ…」
誰もがスマホを持つ時代に、テレカを使う降霊術なんて流行る訳がない。
時代に対応出来なかったサトリ様は、怪異として風化しつつあったんだ。
「久々のお客さんだから、今日は目一杯サービスするよ。何でも質問してね!」
「そ、そりゃどうも…」
降霊術で呼び出した怪異に喜ばれるとはね。
これも一種の人助けかな。
そんな私の降霊術に意外な邪魔者が現れたんだ。
「君、小学生だね?こんな時間に何してるの?」
「げっ…」
何と相手は巡回中の警官だったの。
「公衆電話で何してたの?まさかイタズラ電話じゃ…」
「あっ、これは…」
言い訳を考える間もなく、緑色の受話器は警官に取り上げられてしまったの。
だが、これがサトリ様の逆鱗に触れたんだ。
「よくも私達の電話を邪魔したわね…このサトリ様の恐ろしさを思い知らせてやる!」
切電直前のサトリ様の声は、今までとは一変した鬼気迫る物だったの。
「うっ!?」
そして次の瞬間、警官の身に異変が起きたんだ。
「は…腹が痛い!」
身体を海老みたいに折り曲げ、ビクビクと痙攣する制服警官。
そして私には目もくれず、公衆便所へ一直線に駆けて行ったんだ。
この隙に乗じて帰宅した私だけど、あれ以来サトリ様に電話はかけていないの。
やり直すなら、夜中に公衆電話を使っても補導されない年になってからだね。
それまでサトリ様が存在を維持出来ていれば良いんだけど…