サイド:火星連合軍③大上摩希人という青年
(さてと、他の方とも無事交流できたことだし……なにをしようかなー?)
自身の機体、銀狼幻月を携帯端末で撮影しつつ、思考を巡らせる摩希人はふと、反射して写る自分の姿を見る。
赤みかかった茶髪に童顔な自分。
少しかっこつけてピアスを着けたのは満足だったが、容姿の幼さを拭うのには役に立たなかった。
(ま、日本系は基本若く見られるし? それはそれで面白いしねー)
気にする事をあっさりとやめた摩希人は、その場から離れて行く。
向かうは……トレーニングルームだ。
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トレーニングウェアに着替えると、摩希人は大きく伸びをしつつ更衣室を出た。
トレーニングルームに入れば、広い敷地内に結構な人数が思い思いに身体を動かしたりしているのが見える。
(いやぁーみんな元気ですね! さぁて! 僕も動くかなぁ!)
軽くストレッチをすると、摩希人はランニングコースのスタート地点に向かい、タイマーをセットすると走りだした。
広いとはいえ、戦艦の中。
空調により、空気が入れ替えられているためそこまでではないがやはり……。
(あー! 早く地球を手に入れて、思い切り海沿いを走りたいなー! 憧れているんだよなぁ!)
昔の映画を見た時に、そういうシーンがあったのだ。
それ以来、彼の夢の一つとなっている。
そう、摩希人は映画マニアだ。
それも、かなり昔のものを好んでいる。
(自分が生まれる遥か前の映画とかの映像が残っているの、いいよねー! あ、地球を手に入れたら掘り出し物映画とかもあるのかな? 楽しみだなー!)
誰かに聞かれれば、間違いなく不謹慎と言われた事だろう。
だが、心の中なら自由だ。
(ふう、だいぶ走ったけど……うーんまだ遊び足りないな? どうしようかなぁー)
あらゆる事を軽薄に楽しむ。
それが、大上摩希人という青年なのだ。
これが彼の在り方であり、そして生き方。
このスタンスを変える者など……おそらくいないだろう。
彼はそういう人間だ。
ある意味自由気ままであり、そしてある意味人生を縛っている。
その歪な生き方で過ごしてきた摩希人だからこそ、出来うることもある。
それは……恐怖すら楽しんでしまうという事。
どこまでも不謹慎に、自分の思うままに生きる青年。
それが、大上摩希人である――。