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サイド:宇宙コロニー軍③エセルバート・ダスティンという男

 自販機で購入した紅茶を飲み干したエセルは、缶をゴミボックスに捨てて、休憩用に置かれていた長椅子から立ち上がった。


(今のところ、出撃命令までは出ていない。調査隊の報せによる事でもあるし……自室に戻るか?)


 少し悩んだ後、自室の方へ向かうことにしたエセルは、母艦内を進む。

 宇宙コロニー軍の母艦……アルストロメリア。

 花の名を冠したこの船の中が、今の彼らの家であり、基地だ。

 白を基調に色鮮やかなラインが入った母艦を、気に入っている者も多いようだった。


(……まぁ、関係ないけどな……)


 生憎(あいにく)、エセルには興味がない事であり、(ねつ)もない。

 ただ一つ、彼が興味を持っている事があるとすればそれは――。

 

(やっぱ、缶の紅茶は可もなく不可もなくだな)


 彼の唯一の趣味。

 それは紅茶に多少のこだわりがある事だ。

 もっとも、知識が深い訳でもなく、愛飲しているブランドがある訳でもない。

 ただ、好みやすいものがあるだけ。


 ――エセルという人物は、どこまも希薄な思考の持ち主なのだ。


(さて、暇だし……仮眠でもするか)


 自室に戻るなり、備え付けのベッドに寝転がる。大の字になり、天井を見つめていると、携帯端末のバイブ音がした。


(なんだ? つーか、誰だ?)


 視線をやれば、私用の端末からだった。表示を見れば……母親からだった。そのメッセージを見る事すらせず、エセルは静かに息を吐き、仮眠に入った。


 ****


「あら? お早いのね、エセルバート少尉」


 仮眠後。

 ミーティングルームへ入ると、そこにはすでにマリーがいた。

 彼女は読んでいた本を仕舞う。

 その佇まいは美しく、気品すら感じられるものではあったが、エセルの感想はそこまでだった。


「アンタも早いじゃないか」


「えぇ、気合を入れないとですもの。貴方は違うのかしら?」


 ()かれて、エセルは思わず口ごもる。なにせ、彼にはこの任務への想いも熱も、一切ないからだ。

 その様子を見たマリーは、エセルの回答を待っているようだった。

 仕方なく、エセルは口を開く。


「俺は、俺の仕事をするだけだ」


「……そう。そういうのも、在り方の一つね」


 否定もせず、だが肯定もしない彼女の態度に安堵したエセルは、離れた席に座ると静かに待機する。

 これからの事に想いを馳せる事はない。

 なにせ彼には……地球への興味も関心も、全くないからだ。


(これからの事なんて、どうでもいい)


 どこまでも無関心に、そして冷静な思考を巡らせるエセル。

 そうしている内に、残りの二人もやって来たのだった。

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