サイド:火星連合軍②ナイトメア小隊
摩希人が所属するナイトメア小隊。
火星連合軍の中でも、突出した操縦技術を持つエリートの集まりだ。
(構成員ではスヴェト少佐が一番階級上位で隊長。シグルド中尉がその補佐で、僕とドゥエイン少尉が階級一緒なんだよねー。一応、大まかなプロフィールは把握しているけれど、それでも、うん! やっぱり顔を合わせた方がいいね!)
一人納得すると、摩希人は端末に転送されてきた資料に目を通す。
すでにミーティングは始まっているのだ。
「この資料にある通り、宇宙コロニー軍においても特殊部隊が存在するとのことだ。まぁ、やはり……そう易々とはいかんという訳だな。次に地球環境においてだが、火星よりも気候が不安定なのは確定なようだ」
スヴェトの言葉に、残りの三人が頷く。これは、地球到達前から予想されていたことだ。
というのも、人類が地球を離れた理由の一つが、気候変動による環境の悪化と記録されているからだ。
事実今、母艦アース・ザ・ソンの外、つまりは地球の最低気温が三十六度もあり、かつ、暴風だ。
火星も整備し、人の手が加わっているとはいえ自然環境自体を操作はできなかった。故に、地球ほどではないが、天候予測が必要なくらいには自然の猛威がある。
(そういう意味では、宇宙コロニーの連中より地球環境に適合しやすそうなんだけどなー)
「いくら火星においても自然災害はあるとはいえ、地球の現状は相当らしい。各員、それも踏まえて行動するように」
勢いよく返事をすれば、スヴェトはプラチナブロンドの髪をひと撫ですると、静かにグレーの瞳に闘志の光を宿す。
「いいか! 我々の母星のためにも、なんとしてでも地球を我ら、火星連合軍のものに!」
(いよいよ、始まるんだ……争いが……。負けていられませんからね! 海をみるためにも!)
士気が上がったナイトメア小隊の四人は、それぞれの機体チェックのため、格納庫へ向かうことになった。
作戦日時まではまだだが……念のためだ。
心躍る摩希人の横に、シグルドがやってきて声をかけてきた。
「お前さん、随分と楽しそうだな? 殺し合いをするっていうのに」
「あー……僕、そういう時だからこそ、楽しいことを考えるようにする癖がありまして~あはは! だって! ネガティブな気持ちになったら、モチベーション下がるじゃないですか!」
明るく答える摩希人の言葉に、シグルドは納得したのか静かに一言呟いて去って行った。
「――なるほどな」
前を行く彼の背中を見つめながら摩希人は思う。
(人生、楽しんだもの勝ちってね!)