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サイド:宇宙コロニー軍①自由の鳥

「鳥は自由に空を舞う。だが、そのためには帰るべき巣がなければならない! 良いか! 我々宇宙コロニーに住まう者達は、その自由なる鳥であり……帰るべき巣とはすなわち! 地球である! その事を肝に銘じて、今後任務にあたるように!」


 宇宙コロニー軍統括、オズワルド・モルガンの言葉に兵士達は大きな声で返事をする。皆、地球の覇権を賭けた戦いへの士気が高い。


(正直、高すぎる気もするが……)


 一人だけ士気が違うことを悟られないように振る舞いながら、彼は他の兵士達と共に退出し自室へと戻った。

 

 ★★


「はぁ……」


 自室に戻った彼は、小型冷蔵庫から水を取り出しコップに注ぐ。コップ越しに自身の顔が見えた。

 目の下にクマがある紫色の瞳が揺れ、肩まで伸びた銀髪がなびく。


故郷(ふるさと)……ねぇ? 俺は……コロニーでずっと育ったし、不満もないんだがなぁ)


 コップの水を見つめていると、部屋の扉がノックされた。


「エセルバート・ダスティン少尉? いや、あえてこう呼ぼうか。エセル君いるかい?」


 自身の名を呼ばれ、エセルはため息を吐くと、扉のロックを解除した。そこにいたのは、ウェーブかかった金髪のロングヘアに薔薇色の瞳と左側の泣き黒子が印象的な女性だった。その麗しい容姿からは想像できない、男性的な口調で彼女は続ける。


「やぁ! ようやく会えたね?」


「……イヴァ・ラトウィッジ少尉か」


 そう彼女に声をかければ、イヴァは微笑みながら話をつづける。


「なぁに、これから同じ部隊に所属する仲間として挨拶をね? 改めて、よろしく頼むよ」


「あ、あぁ。こちらこそ」


 言いたいことはそれだけだったらしい。彼女は満足したのか、エセルの部屋を後にしていった。


(……なんだったんだ?)


 不思議に思うと共に、自分が配属された部隊について思いをはせる。彼が所属することになったのは……少数精鋭の前線部隊の一つ、バード小隊だ。


 この部隊に選ばれた者は、もれなく最優の成績を訓練と適正テストで出した者達だ。

 実際、エセルのスコアもかなり高く……それ故の部隊配属なのだが。

 

(正直、俺は地球なんて……どうでもいい)


 彼に、帰郷心などなく。

 ただ、任された任務を遂行するのみと己に言い聞かせていた。

 ――そうでなければ、この熱についていけそうにないのだから。


(さて、ミーティングまでまだ時間はあるな。もう少し、のんびりさせてもらうとしよう)


 こうして、バード小隊全体ミーテイングを控え、彼はゆったり過ごすことにした。

 束の間の休息こそが癒しであり、彼のモチベーション維持の方法でもあるからだ。


(……これから、どうなるのだろうか?)


 一抹の不安を胸に秘めながら、彼は水をゆっくりと口に含んだ。

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