サイド:火星連合軍⑤怪物達の中の怪物
「言い訳はあるか? 摩希人少尉?」
「いやぁ~特にはないですね! はい!」
ここはナイトメア小隊のミーティングルーム内。今、摩希人は隊長であるスヴェトに勝手な行動をした事を咎められているのだが……。
「反省も後悔もないという訳か。はぁ……まぁそれも含めて隊に編成したのはこちらだ。これ以上は不毛だな。自席に戻れ」
「はい!」
元気よく返事をする摩希人に、スヴェトは眉を潜めるが当の本人は気にする事もなく、言われた通り席へと戻って行く。
摩希人が着席したのを確認してから、スヴェトが隊員達に向けて話し出した。
「さて、我々が交戦した相手だが……宇宙コロニー軍の連中の精鋭部隊であろうな」
「同感だ、隊長。あれこそバード小隊だろう。見た目からしてわかりやすい」
「シグルド中尉の言う通り、ですね……。かなり手強かったです……」
ドゥエインが同意するように口を開く。他の皆が真剣な表情を浮かべる中、摩希人は口にこそ出さないが上の空だった。
彼の心を占めているのは……加虐心。
(あの金色の機体……綺麗だったなぁ! あぁ、壊したいなぁ!)
摩希人には一つ悪癖がある。
それは……気に入ったモノを壊してみたくなる事。
(パイロットはどんな人なんだろーなー? 女の子とかだったりしないかなぁ? そしたらワンチャン彼女にしちゃったりしてー。……でも男だったら……どう殺そうかなー?)
ニヤつきそうになるのを堪えながら、スヴェトの話を聞くふりをする。摩希人にとって、作戦等資料で見れば十分であり、わざわざ口にする意味がわからないからだ。
だからこそ――摩希人にはチームワークの概念が理解出来ないのだが。
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ミーティングが終わり、皆が退出して行く。それを確認して摩希人も退出しようとした時、シグルドに声をかけられた。
「おい」
「はい? なんですかー?」
「お前……あまり命を軽んじるなよ。まぁ通じるとは思っていないがな……」
「ははは、酷いですねー! 僕だって多少の理性くらいあるんですよー?」
悪気なく言う摩希人に、シグルドは息を吐くとそれ以上は何も言わずに去って行った。
(お堅い方だなー! でも頼もしいし? 僕的には楽に好き勝手できるし! 良い事づくめだなぁー! あぁ早くあの金色の機体を壊して……海を見たいなぁ!)
どこまでも……ある意味無邪気な思考を巡らせると、摩希人は鼻歌交じりに自室へと戻って行くのだった。
――必ずあの金色の鳥を壊すと改めて決意しながら。




