サイド:宇宙コロニー軍⑤鳥達の覚悟
異常気象の襲来により、撤退を余儀なくされたバード小隊は敵をけん制しながら後退して行った。
その道中、エセルに通信が入る。イヴァからの個人通信だった。
『大丈夫かい? 確かカタナというのだったかな? そんな物を持っていた銀色の機体のパイロットに随分気に入られていたようだけれど?』
「興味はない。だが……あの手のタイプは得意じゃない」
これはエセルの本心だった。彼は根本的に薄情な人間性だ。だが……それでも、あの銀色の機体のパイロットに対しては、不快感を覚えていた。
(何故? 俺はこんなにも嫌悪を……?)
自分でも不思議に思いながら、イヴァに一言告げて通信を切った。
――次は殺す。
彼らしくない言葉を、イヴァがどうとらえたのかはわからない。だがエセル本人はというと、すくなくとも気分は良くなかった。
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数時間後。
機体の損傷の確認作業や、休憩等を終えたバード小隊はミーティングルームへ集まっていた。
議題は勿論、交戦した火星連合軍の部隊についてだ。真剣な表情を浮かべて、隊長であるナフムが口を開いた。
「皆、集まっているな? それでは……早速だが始めよう。既にわかっていると思う、本日交戦した部隊こそ、おそらく火星連合軍の特殊部隊だろう」
その言葉に、ミーティングルームにいる全員が深く頷いた。あの特殊な機体構造に風変わりな武器の数々……。諜報部隊から送られてきていたデータと一致していたのだ。
それを踏まえた上で、ナフムが更に話を続ける。
「それで、他の敵機は勿論の事……ゴルドラーベ・グルートを集中攻撃した機体について皆の意見を聞かせてほしい」
「少なくとも……不快でしたね。これは攻撃された自分の感想ですが」
「いや、貴重な意見だ。エセル少尉、続けてくれ」
ナフムに促され、エセルは淡々と自分の考えを話す事にした。その声色はいつもの冷淡さとは違い、どこか怒りのような感情が含まれていた。
「そうですね……。交戦した時のあの武器……その速度と威力もですが、何よりオープン回線をしてきた意図がわからない。あちら側の司令官の指示としては不可解ですし、何より敵意と殺意が向き出しでした」
「そうだね~。ボクも違和感を覚えたな、あの銀色の機体については。警戒するに越した事はないかもしれない」
イヴァが口を挟んだが、その通りだったため誰も咎めなかった。その上で、ナフムが残りの三人に向けて話かける。
「これから戦いは激化していくだろう。そして、必然的にあの部隊と何度もぶつかる可能性が高い。皆、覚悟をより一層意識してくれ」
無言でエセル、イヴァ、マリーは頷くとそれぞれ覚悟を改める。特に直接交戦したエセルは静かに内心で決意していた。
――あの銀色の機体は、必ず仕留めると。




