サイド:火星連合軍④怪物達の中の怪物
数分前。
出撃命令が出たナイトメア小隊は近接特化である摩希人の機体、銀狼幻月を先行させる布陣を取る事にした。
理由は、上記の通り機体の性能もだが……パイロットである彼の性格も考慮したのだ。
(いやー! いよいよ出撃、実戦かぁ~!)
理由を知ってもなお、摩希人の態度は変わらない。いつも通り、軽薄に……そして楽しげに発進待機をしていた。
『ナイトメア小隊各員に告ぐ。これより、敵機と戦闘に入る。では、各機……発進せよ!』
管制室からの指示を受け、各員の搭乗する機体が発進した。先陣は、勿論摩希人の乗る銀狼幻月だ。
刀を構え、ブースターを噴かせて速度を上げていく。
獲物を――求めて。
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「おー! 敵機、捕捉~! って、おぉ~? 金色の機体がいますね! 隊長、アレもらいます!」
隊長であるスヴェトの返答も待たず、一直線に金色の敵機へと向かって行った。鳥のような翼を持った、美しい機体。
それを……無性に壊したくなったのだ。
新しい玩具を見つけた子供の如く、目を輝かせながら舌なめずりをする。
そして、刀を抜いて斬りかかる。
だが、敵機は鎌と銃の複合だろう……これまた珍しい武器を構えて防いだ。それがとてつもなく愉快で、気づけば摩希人は回線をオープンにしていた。
「いやぁ! 金色の機体さん、良い動きしますね! では、いざ勝負してもらいますよ~」
話かけてみたが、向こうから返事はない。
そのかわりに、敵機は武器を構え直し銃身を向けて来た。
(シャイな方なのかなー? まぁいいや。どうせ、殺すんだし)
気を取り直して、摩希人も刀を構え直す。敵機の銃身から実弾が放たれる。
それを慌ててシールドを形成して防ぐと、自分の機体を動かして刀を再度振るう。
相手はギリギリでかわすと、今度は鎌部分で斬りつけて来る。
その斬撃をいなしながら、次なる手を考える。
だが……それすらも、摩希人にとっては楽しい事だった。
(こんな命のやり取りなんて、戦場でないとできませんからね! さぁ、どんどん行きますよ! お相手さん、覚悟して下さいね?)
刀と鎌がぶつかり合う。互いに譲らない戦いを繰り広げる最中、それは起こった。
――異常気象、超巨大ハリケーンだ。
『摩希人少尉、引くぞ! ここまでの規模のハリケーンは想定されていない! 機体が持たん! 急げ!』
(ちぇー、邪魔されちゃったかー! 自然っていうのは、こういうのがあるから……面白いね!)
敵側も命令を受けたのか、牽制しつつ撤退して行く。
視線は金色の機体を追いつつ、摩希人も撤退の体勢に入る。
「愉しみは……最後まで、てね?」
あくまでも愉しむのが、摩希人の流儀であり生き方なのだから――。




