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サイド:火星連合軍④怪物達の中の怪物

 数分前。

 出撃命令が出たナイトメア小隊は近接特化である摩希人(まきと)の機体、銀狼幻月(ぎんろうげんげつ)を先行させる布陣を取る事にした。

 理由は、上記の通り機体の性能もだが……パイロットである彼の性格も考慮したのだ。


(いやー! いよいよ出撃、実戦かぁ~!)


 理由を知ってもなお、摩希人の態度は変わらない。いつも通り、軽薄に……そして楽しげに発進()()をしていた。

 

『ナイトメア小隊各員に告ぐ。これより、敵機と戦闘に入る。では、各機……発進せよ!』


 管制室からの指示を受け、各員の搭乗する機体が発進した。先陣は、勿論摩希人の乗る銀狼幻月だ。

 刀を構え、ブースターを噴かせて速度を上げていく。

 獲物(てき)を――求めて。


 ****


「おー! 敵機、捕捉~! って、おぉ~? 金色の機体がいますね! 隊長、アレもらいます!」


 隊長であるスヴェトの返答も待たず、一直線に金色の敵機へと向かって行った。鳥のような翼を持った、美しい機体。

 それを……無性に壊したくなったのだ。


 新しい玩具を見つけた子供の如く、目を輝かせながら舌なめずりをする。

 そして、刀を抜いて斬りかかる。

 だが、敵機は鎌と銃の複合だろう……これまた珍しい武器を構えて防いだ。それがとてつもなく()()で、気づけば摩希人は回線をオープンにしていた。


「いやぁ! 金色の機体さん、良い動きしますね! では、いざ勝負してもらいますよ~」

 

 話かけてみたが、向こうから返事はない。

 そのかわりに、敵機は武器を構え直し銃身を向けて来た。


(シャイな方なのかなー? まぁいいや。どうせ、殺すんだし)


 気を取り直して、摩希人も刀を構え直す。敵機の銃身から実弾が放たれる。

 それを慌ててシールドを形成して防ぐと、自分の機体を動かして刀を再度振るう。

 相手はギリギリでかわすと、今度は鎌部分で斬りつけて来る。

 その斬撃をいなしながら、次なる手を考える。

 だが……それすらも、摩希人にとっては楽しい事だった。


(こんな命のやり取りなんて、戦場でないとできませんからね! さぁ、どんどん行きますよ! お相手さん、覚悟して下さいね?)


 刀と鎌がぶつかり合う。互いに譲らない戦いを繰り広げる最中、それは起こった。


 ――異常気象、超巨大ハリケーンだ。


『摩希人少尉、引くぞ! ここまでの規模のハリケーンは想定されていない! 機体が持たん! 急げ!』


(ちぇー、邪魔されちゃったかー! 自然っていうのは、こういうのがあるから……面白いね!)


 敵側も命令を受けたのか、牽制しつつ撤退して行く。

 視線は金色の機体を追いつつ、摩希人も撤退の体勢に入る。


「愉しみは……最後まで、てね?」


 あくまでも愉しむのが、摩希人の流儀であり生き方なのだから――。

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