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サイド:宇宙コロニー軍④鳥達は大地へ

 慌ただしい艦内。

 走り回る乗組員達。

 そんな中発進体勢に入ったバード小隊を確認して、管制室から指示が入る。


『火星連合軍の部隊を確認しました。射出までのカウントを行います』


 オペレーターの緊迫した声色にも、エセルの表情は変わらない。

 彼は静かに機体の中で、待機していた。

 発進時の重力に備えるためだ。


(仕事だからな。やれるだけのことをやるだけだ)

 

『射出まで、ファイブ、フォー、スリー、ツー……ワン……』


(いよいよか)


『射出』


 オペレーターの声を合図に、機体が射出された。エセルの身体に重力がかかる。


(この感覚……慣れんな)


 宇宙コロニーでは、重力も制御されていてここまで負荷がかかることはあまりない。それこそ、アトラクション等あえて望まないかぎりは。

 だからこそのパイロットスーツであり、地球用にカスタマイズされている。


(それはありがたいんだがな……。このクラクラするような感覚は気に入らないな)


 不満を抱きつつ、エセルの乗るゴルドラーベ・グルートが地球の空へ舞い降りる。座標を確認し、安全に着陸できるポイントを見つけるとそこめがけて姿勢維持装置を操作していく。

 着地するとブースターを噴かせ、大地を駆ける。

 先導するのは、隊長であるナフムだ。その後を残りの三人が追従する。


(鳥の名を冠した機体が、大地を駆けるか。妙な気分だな)


『敵影を確認した。皆、戦闘体勢に移行してくれ』


 ナフムの声が響く。すぐに敵機が向かってくるのが見えた。


(この動き、腕が良さそうだな。もしや、噂の精鋭部隊か?)


 向かってきたのは、銀色の古書で読んだ人狼みたいな外観をした機体だった。日本刀と呼ばれる剣種の武器を構え、一直線にこちらへ襲いかかろうとしているのが確認出来た。


『凄いスピードだね! じゃあ、ボクが行こうか?』


 イヴァの声が通信機から響く。どうやら、この銀色の機体の相手をしようとしているようだった。だが、敵機はイヴァの機体を素通りし、エセルの乗る機体……ゴルドラーベ・グルートめがけてきた。


「ターゲットは俺か……。ちっ、めんどくさい」


 エセルは敵機である銀色の機体からの攻撃をかわすと、武器である銃と鎌が一体化した複合武器、デスサイズガンを構えた。


『エセル少尉! その機体はすまないが頼んだ! 残りの相手はこちらに任せてくれ!』


「了解した」


 端的に答えると、エセルは再度日本刀を構えた敵機と対峙する。先程の攻撃とは違う太刀筋で仕掛けて来るのを、鎌部分で防ぐと、突然オープン回線が開いた。


『いやぁ! 金色の機体さん、良い動きしますね! では、いざ勝負してもらいますよ~』


 戦場という緊迫した状況の中、相手の軽薄な声色が異質に響くのだった――。

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