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「ヘマぁ、久しぶりぃ」


 そして、今日は約束のお茶会の日。


公爵家(お姉さまの嫁ぎ先)が寄越した馬車から降りた私を出迎えたのは、ピンク色の髪に緑色の目をした甘い容姿をした女性。

この女性こそが、学園で噂になっている私のお姉さま「カミラ・ペドロサ男爵令嬢」。正確には嫁に行ったため、「カミラ・グルレ次期公爵夫人」だ。

 

「ヘマ、久しぶりだね。しばらく見ない間に大きくなったね」

「お久しぶりです。エミリオン義兄様おにいさま

 

お姉さまと一緒に私を出迎えてくれたのは、義兄のエミリオン・グルレ次期公爵です。ダークブロンドの髪に知的なダークブルーの目を持っている自慢の義兄です。

お姉さまが公爵家に嫁いだと言っても、私はただの男爵令嬢。最初はエミリオン義兄様と話をするたびに緊張しましたが、義兄様がフレンドリーに私に接してくれるため、今では緊張せずに話ができるようになりました。



このお茶会の参加者は、私とカミラお姉さまとエミリオン義兄様。それに、ひと足早く姉の元に向かった弟と妹。


……そして、他2人。


私達姉妹と義理の兄までだったら、「姉夫婦が私の入学祝いのために開いたお茶会」だとわかるのですよ。


でもね………


「ヘマ、カミラの結婚式以来ね」


 なんで、王太子妃のレイチェル様がいらっしゃるのですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


「今日準備されているのは、外国の珍しいお菓子だ。どれも、アスール商会から購入したものだが……ヘマは食べたことあるかい?」


なんで…

王太子殿下であるラウル様もいらっしゃるのですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


ラウル様!!今、戴冠式の準備で忙しいのではないのですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


それよりも、お姉さまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

なぜ、男爵家でも公爵家でもなく、王宮でお茶会を開くのですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!今日のお茶会の主催者ってお姉さまですよね!?レイチェル様じゃないですよね!?





「ヘマ姉さま!!見てください大きなカマキリ捕まえました」

「フリオが見つけたカマキリより、僕が見つけたカマキリの方が大きいです」


 思わぬ人物達の出迎えに軽く眩暈を起こしていると、二人の男の子が私の元に駆け寄ってきた。


1人は私たちの弟であるフリオ。もう1人はラウル様の弟であるニコラス様。今年10歳になる2人はとても活発だ。

そんな2人は洋服を泥で汚し、その手には大きなカマキリを持っていた。

 

 フリオぉぉぉぉぉぉぉ!!

ニコラス様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


普通、王族や貴族は泥だらけになるような遊びなんてしません!!ちょっと、ニコラス様付の侍女!!何をやっているのですか!!きちんと注意しなさ……って、侍女である貴女が、なんで一番大きいカマキリを手に持っているんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


 「にいしゃま、にいしゃま」

 

  フリオ達の後に続きやって来たのは、4歳になる妹サリタ。サリタは私たちの元にやってくると、ラウル様の足に抱き着いた。


 サリタぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

ラウル様は貴女のお兄様ではありません!!


ラウル様も「ん?なんだいサリタ?」と、反応しないでくださいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!








 

サリタがラウル様の足に抱き着いたあと、すぐにラウル様付の侍女がやってきて、王宮にある庭園の1つに案内された。案内されて庭園は色とりどりの花が咲き誇っていた。


「ヘマもぉ、学園のぉ1年生になったのねぇ。学園懐かしいわぁ」

「そうね。私たちが在学中は色々あったわね」


 お茶会が始まると、お姉さまとレイチェル様は学園時代の昔話に花を咲かせます。多くの貴族の令息令嬢が集まる学園。きっと、派閥争いなどが激しかったのでしょう。


「私がぁ在学中にぃ、3回もぉ婚約破棄が起こってぇ大変だったのよぉ」


 なるほど、お姉さまの在学中には3回も婚約破棄が起こったのですね……


「それが原因かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 入学式で「婚約破棄」が強調されたのは、お姉さまの在学中に3回も婚約破棄が起こったからなのですねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!


「その3回とも、きっとお姉さまが原因で起こったのですね!!!」

 

 そうじゃなきゃ、「噂の……」や「伝説の……」なんて言われるはずがない!!


「ヘマぁ、全てのぉ婚約破棄のぉ原因がぁ、私にぃあるわけぇないじゃない~」

「あっ、そうですよね……」


 さすがのお姉様も、3回も婚約破棄の原因に…… 


「私がぁ直接の原因になったぁ婚約破棄騒動はぁ、たったのぉ2回だけよぉ~」

「なんだ、たったの2回……ってお姉さまぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 「たった」の2回「だけ」……じゃないですよ!!2回「も」って言うんですよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!


しかも、その言い方だと残りの1回も間接的に関わっていますよね!?


「やっぱり、お姉さまが原因じゃないですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


王宮に似つかわしくない私の叫びがこだまする。


 お姉様の発言に、エミリオン義兄様はやれやれと言わんばかりに肩をすくめ、レイチェル様は「懐かしいわ」と言い、ラウル様は「詳しく教えてくれ」とレイチェル様に詳しいことを聞こうとしている。弟妹はニコラス様と一緒に庭園を掛けている。そんな中、ニコラス様付の侍女だけが私の肩を労わるようにポンポンと二回叩いてくれた。













私が入学してから早3か月。


私は、順風満帆な学園生活を送っていません。

入学から1か月たった頃から、私の私物が盗まれるようになりました。

最初は、万年筆やインクが無くなるようになり、「どこかに忘れたか、落としたのかな?」と思っていましたが、それが毎日続けば流石に私物が盗まれていることに誰だって気づきます。

筆記用具の次に無くなったものが、学園に持ち込んでいるアスール商会の商品。

学園に許可を取り、クッキーやアメ、チョコレートなどのお菓子を売っていたのですが、目を離した隙にそれらを盗まれてしまいました。

私のクラスは、上位貴族が集まるエリートクラス。お菓子が買えないほど貧窮している人などいらっしゃいません。


昨日なんて乗馬の授業後、制服に着替えようとしたところ制服が跡形もなく消えていました。学園の規則で学園内にいる間は制服着用が義務付けられています。そのため、乗馬の授業後がお昼休みだったこともあり、慌てて馬を借りてグルレ公爵邸に向かいお姉さまに頼みこみ御下がりを借りました。


そして今日……


「アニタ・フロレス!!貴様は、セラフィナ・スルバラン侯爵令嬢に命令され、ヘラ・ペドロサ男爵令嬢に多くの嫌がらせを行った!!僕の婚約者に相応しくない。ここで、貴様との婚約を破棄する」


 お昼休み、お昼を食べながら次の授業の課題について、私とアニタ達4人とセラ、そしてセラの婚約者であるシモン・デレオン侯爵令息様の7人で話し合っていると1人の男子生徒が私たちの席にやって来た。

 そして、その男子生徒がアニタに向かって婚約破棄宣言を行った。


「ビト様、私はそんなこと「うるさい!!子爵家のくせに意見を言うな」

 

 アニタがビト様と呼んだ男子生徒は、確かビト・アリケス伯爵令息様。フロレス子爵家同様多くの文官を輩出している家だ。噂だと、勤勉なものが多いアリケス伯爵家の中でビド様は勉強が好きではないらしい。


「アリスケ伯爵令息。私の婚約者や君の婚約者を観衆の前で罵倒しているが、何か証拠でもあるのかい?」

「デレオン様、もちろんです!!証拠はこれです!!!!」


 シモン様の問いかけにアリケス様が取り出したのは、今まで盗まれた私の万年筆にインク、粉々に砕けたクッキー。そして昨日無くなった私の制服。


「フロレス子爵令嬢だけじゃない!!そこにいる子爵家・男爵家の者は私たちが本来入るはずだったクラスを奪った悪人です!!下級貴族のくせに生意気です。スルバラン侯爵令嬢も、上位貴族を蔑ろにする悪人です。デレオン様もこんな女との婚約を破棄すべきです」


 アリスケ伯爵令息は上位貴族なのに成績上位クラスに入れなかったため、成績上位クラスに入ったアニタ達のことを逆恨みしているみたいですね。そして、自分を優先しないセラのことも恨んでいると。


 なるほど、理由は分かった。



 私は心を落ち着かせるように大きく息を吸って



「私の物を盗んでいた犯人は、お前かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 吸った息を全て吐き出すように、叫んだ。


「それに、私の友達を侮辱するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 幼馴染のセラが私に嫌がらせをする理由はないし、同じ授業を受けいつも一緒に行動している4人は、私の私物を盗むことなんてできない。普通に考えればわかることなのに。


ふざけるな!!


「決闘だ!!表に出ろ!」

 

 いつも持ち歩いている白い手袋を、アリスケ伯爵令息の顔に叩きつけた。


「ヘマ、決闘は基本的に校則で禁止されているよ」

 

 シモン様の言葉に、校則を思い出した。食堂を見渡すと、お目当ての人物と丁度目が合った。


「ドュアルテ様!!決闘の許可をください!!」


 私のお目当ての人物、生徒会長であるドュアルテ公爵その人だ。校則には「学内での決闘は禁止とする。しかし、決闘をどうしても行う場合、生徒会長の許可を取ること」と書いてある。

 

「いいわよ。ヘマ・ペドロサ男爵令嬢とビト・アリケス伯爵令息の決闘を許可します」


 ドュアルテ公爵は笑顔で決闘の許可を出してくれた。笑顔なのに青筋が立っているように見えるが、そんなこと今は気にしない。


 さあ、そこのクソ伯爵令息!!私がその腐った根性を叩きなおしてやるわっ。


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