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無双した男爵令嬢の妹の苦悩

行き当たりバッタリで書き始めたため、設定に甘いところがあります。

よろしくお願いいたします

 私はヘマ・ペドロサ。

 アスール商会を営んでいるペドロサ男爵家の次女。我が家は商家からなりあがった所謂成金貴族だ。もちろん、そんな我が家には治める領地など無い。


 私が住んでいるガラクシア王国では、全ての貴族子息・子女は16歳になる年に王立学園に入学することになっている。

そんなわけで、つい最近まで知り合いの領地で暮らしていた私も、学園の入学に合わせて王都にやって来た。


 そして、今日は王立学園の入学式。『同年代の人たちと交流を深められる』と楽しみに思い、昨夜は眠れなかったため入学式が始まる時間ぎりぎりに入学式会場に到着してしまった。


 「ヘマ、待っていたわよ」


 入学式会場の席は早い者勝ちだ。時間ぎりぎりに到着してしまったため、空いている席を探していると、一人の女子生徒が声を掛けてきた。


「スルバラン様!!」

「も~『スルバラン様』なんて他人行儀なことしないで。今まで通りセラって呼んで」

「それではお言葉に甘えて……セラ、久しぶり」


 私に声を掛けてきたのは、スルバラン侯爵家のセラフィナ。男爵家の娘である私とは違い由緒正しい侯爵家の御令嬢。男爵家の私が易々と名前を呼ぶことなんて、まして呼び捨てにするなんてできません。

 

 なぜ私が侯爵家の令嬢を愛称で呼ぶことができるのか?


 それは、私が2週間前まで住んでいた場所がスルバラン侯爵領だったからです。そして、私がお世話になっていたのは、セラの家でした。


 セラは、騎士団長をしているスルバラン侯爵の娘です。詳しい理由は知りませんが、セラのお兄様と私のお姉さまが知り合いなのです。

 領地に引きこもりがちで同年代の友達がいなかったセラを心配したセラのお兄様が私のお姉さまに相談して、セラと同じ年だった私がセラの話し相手として、スルバラン侯爵家に赴くことになったのです。

 最初の一か月は敬語や丁寧語でセラと会話をしていたのですが、「堅苦しいことは嫌い。敬語と丁寧語禁止」と言われたので、途中から一切敬語・丁寧語を使わなくなりました。12歳から一緒に過ごしていたため、今では友だちや話し相手というより姉妹なような関係です。



 

「ヘマの分も席を確保しといたわ。こっちよ」


 セラに手を引かれ、セラが確保した席に座った。

 

私がセラの隣に座ると周りがこそこそ話し始めた。きっと、「男爵家の令嬢が侯爵家の令嬢の隣に座るなんて……」と言われているのでしょう。侯爵領に住んでいた時から、沢山の大人にさんざん言われてきたので慣れているけど、気分は良くない。


しかし、交わされている会話は私の予想とは異なっていた。



「スルバラン様の隣に座っている方はもしや、あのペドロサ男爵家のご令嬢」「伝説を作った、カミラ様……」「あの噂のカミラ嬢の妹君……」など聞こえてきます。


 あのペドロサ男爵家のご令嬢?

 伝説を作った、カミラ様?

 噂のカミラ嬢?


 いったい何のことなのでしょうか?つい最近まで侯爵領で暮らしていた私にはわからないです。なぜ皆さま私を恐れと期待に満ちた目で見るのでしょうか?


 え?

 お姉さま、在学中に何かやったのでしょうか?


 ひと足早く王都にやって来たセラに話を聞こうとしたら、入学式が始まりました。流石、学園の生徒です。式典が始まるとピタリとお喋りをやめました。

 



 粛々と入学式は進み、最後の学園長のお言葉が始まりました。長いお言葉を聞き流していると、学園長と目が合いました。すると、学園長は心得ていると言わんばかりに頷きます。


 なぜ頷くのでしょうか?

 私と学園長は初対面なはずです。


「最後に、新入生の諸君。くれぐれも、婚約破棄は行わないように。今回の新入生の中にペドロサ男爵令嬢がいるため、本当に無謀な婚約破棄は決して行わないように。もう一度言うぞ。安易に婚約破棄はしないように」


 いや、なぜ入学式でこんなに婚約破棄を行わないように強調する必要かあるのですか?なぜ私の名前がここに出てくるのですか。そして、私以外の入学生たち学……園長の言葉に強く頷くのですか?


 これも、2年前に卒業したお姉さまのせいですか?

きっとそうですよね!?



 入学式後、担任の先生に先導され私たちは自分の教室にやってきました。

 この学園では、爵位を問わず、入学前に行われる学力テストの結果でクラス分けがされます。それでも、幼いころから優秀な家庭教師に勉学を教えてもらっていた高位貴族と、そうではない下位貴族では入学前の学力の差は大きく、そのため上位クラスは高位貴族、下位クラスは下位貴族となってしまいます。


 私とセラは成績上位クラスです。成績上位クラスの大半は伯爵家以上の令息令嬢で占められていますが、私のように、入学前に勉強を頑張った子爵家・男爵家の令息令嬢が数名います。



「はじめまして。私はアスール商会を営んでおりますペドロサ男爵家のヘマと申します。よろしくお願いします」


 まず、私が教室に入って行ったこと。それは、上位クラスに数名いる下位貴族の令息・令嬢に話しかけること。


 なんせ、我が家が経営しているアスール商会のメイン顧客は子爵・男爵そして裕福な平民。両親に「きちんと子爵家・男爵家の子息令嬢と友だちになって、うちの商品を宣伝すること!」と口を酸っぱく言われてきました。そのため、子爵・男爵のお友達が必要なのです。セラもそれをわかっているため、セラはセラで高位貴族の令息令嬢とお話をしています。



「は、はじめまして。フロレス子爵家のアニタと申します。よ、よろしくお願いします」

 教室の隅で固まっていた、4人の令息令嬢たちは私が話しかけると、そのうちの1人が代表して名乗ってくれた。


 フロレス子爵家は爵位こそ低いものの、その勤勉さから代々王宮で文官として働いている。つまり、成金男爵家であるペドロサ男爵家より由緒ある貴族だ。


「私は、つい最近まで王都にいなかったため、王都の流行に疎いのです。もしご迷惑でなければ、フロレス様、私とお友達になってくださいませんか?それから他の3人方もぜひ私とお友達になってください」

 

 無礼にならないようにできるだけ、丁寧な言葉使いを心掛ける。普段の私を知っているセラフィナに言わせれば、私は「猫をかぶっている」とのことだ。


「俺……失礼しました。僕はバラスコ子爵家のアーロンと申します。お会いできで光栄です。」

 バラスコ子爵家は代々優秀な騎士を輩出る家だ。子爵家のためバラスコ子爵家の者は団長になることはできないが、バラスコ子爵家出身の騎士は多くの部隊に引く手数多だ。


「私はヒル男爵家のマリアナと申します。よろしくお願いします。ペドロサ様」

 ヒル男爵家は小さいながら、放牧が盛んな領地を治めている男爵家。ヒル男爵家の領地で育った羊からは良質な羊毛は取れます。ぜひ、アスール商会で取り扱いたい商品です。


「僕はピナル男爵家のウーゴと申します。数々の武勇伝を残したカミラ様の妹であるペドロサ様にお会いしたかったです」

 ピナル男爵家は私と同じく、新興貴族。紡績業の功績が認められて叙爵された。ヒル男爵家の羊毛、ピナル男爵家の紡績技術……新たな商品開発ができそうです。


「フロレス様、バラスコ様、ヒル様、ピナル様、これからよろしくお願いします」


 私は、改めて4人と握手を交わした。


 初日で、セラ以外の学友を作ることに成功して嬉しいのだけど、ここでも出たあの言葉。


「あのカミラ様」「武勇伝を残したカミラ様」


お姉さま、本当に本当に本当に本当に何をしたのですかぁぁぁぁぁぁぁ!?




 教師から軽く今後の予定や注意などの説明を受けたあと、私たち新入生は放課後となった。お昼を少し過ぎた時間に終わったためアニタの提案で、食堂でお昼を食べることになった。私たちは自己紹介後、お互いを名前呼び捨てにすることになった。

なんでも「スルバラン様呼び捨てにいているのに、私たちを様付けで呼ぶのはおかしい」とのことだ。


「失礼。貴女がヘマ・ペドロサ男爵令嬢で間違いなくて?」


 4人と楽しく食事を楽しんでいると、1人の上級生が私たちの席にやって来て、私に声を掛けてきた。


 声を掛けてきた女性を見て私たち5人は固まってしまった。私に声を掛けてきたのはこの学園の生徒会長にして国王陛下の姪であるビビアン・ドュアルテ次期公爵。この学園で誰よりも高貴な女性。


「そ、そうでず」


 あぁ噛んだ。



 ドュアルテ様に名前を呼ばれ、緊張のあまり噛んでしまった。そうでずって……恥ずかしい。

 

「カミラ様にはあの時は大変お世話になりました。あの時の恩返しとは言いませんが、何か困ったことがあったら生徒会を、いえ、我がドュアルテ公爵家をぜひ頼ってください。あらゆる手を使ってお助けいたします」


 ドュアルテ様は私向かい頭を下げながらそう言うと、颯爽と食堂を後にした。ドュアルテ様の姿が見えなくなってから、ウーゴは「やっぱり、あの伝説となっている事件は本当のことだったのだな」と言い、その言葉に3人は頷いています。

 

 え?え?えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!

 お姉さまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


 ドュアルテ様に感謝されるなんて何をしたのですかぁぁぁぁぁぁぁぁ!


 史上初の女公爵予定のドュアルテ公爵が男爵令嬢である私に頭を下げたのですよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!何をしでかしたのですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!









 入学式後、家に帰るとお姉さまからお茶会のお誘いの手紙が届いていた。私は返事を書いた手紙を侍女に渡し、すぐに公爵へ持っていくように伝えた。



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