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第四話 魔物に対し40mm榴弾の召喚。迷宮で初めての魔石狩り。


「なぁ。これ……どこからくすねてきた」


顔見知りの太った雑貨屋が、目元に魔法陣を浮かべながら唸っている。


「盗んでねえよ。もらって来たんだ」


「こんな質のいいポーションをか?魔素濃度が精密すぎる。王都の魔導院で研究対象になるレベルだ。金貨120枚は下らないね」


思っていた10倍以上の値がついた。それにしても、あの女性は何者なのか。感動の落ち着いたいまでも、つい崇めてしまいそうになる。


「6倍に薄めたら幾らになる」


「高品質な中位の回復薬となるだろうね。金貨4枚で仕入れて、6枚で売ることになるだろう」


「金貨3枚で譲るから、5枚で売ってはくれないか。ここだけ、独占的に仕入れさせる」


顎の肉を揺らしながら、雑貨屋はうなづいた。




稼ごうと決心した、明くる日の早朝。


「ここが……迷宮」


目の前には、5Mはある巨大な鉄の扉が口を開けて佇んでいる。入場窓口のお姉さんには「気がついた時にはあった」と聞かされているが、明らかに人為的なものを感じる。異世界では何でもありなのだろうか。


開きっぱなしの鉄の扉を脇目に、薄暗い中へ入っていった。


メンバーは吾郎と俺の2人、そして時間帯も早朝。曰く「情報を洩らしたくない」とのことだ。


しかし、しっぽが真っ直ぐに伸びている所から、ただ人に構わず暴れたいだけだと分かった。


弱いランプに照らされた、岩肌のような荒い地面を歩いていく。風景は、鉱山跡のようで、天井はくり抜かれ、道幅も場所によって異なっていた


数十分後、辺り一面は血祭りとなっていた。


前方で突撃を仕掛けてくるのは、汚れた髪を振り乱し、細長い腕で剣を振り回す、人型の化け物だった。


ある一匹は、少し破けた革鎧を着こなし、錆びたロングソードを振り上げる。しかし、空いた腹には即座に少女の拳が叩き込まれ、体には大穴が空いていた。


吾郎のペースに取り残された、要領の悪い化け物を数匹斬り殺す。動きやすい体になったとはいえ、近接戦は苦手だ。吾郎は猫としての本能があるが、現代日本人の俺には欠片も残っていない。


目配せすると、細身な金色ツインテールとしっぽをパタパタさせ、ドヤ顔で親指を立てている。その間に襲われないか不安で仕方がなかった。


そして、彼女は稀に、スキルを使わせるため、わざとこちらへ獲物を逃す時がある。


今も3匹、必死に掻い潜りながら、迫ってきていた。しわで埋め尽くされた顔に、てっぺんハゲの汚れたロン毛。下腹も風船のように出ている。白目のない、かなり醜悪な奴だ。


「成仏しな」


せめてもの供養を呟き、右手首に左手を添え、右の手のひらを人型へ突き出す。


固有スキル「背徳者」は、「非人道的な兵器を召喚魔法によって呼び出す」ものである。


手首に力を込めると、送られた魔素が紫電を放ち、赤白く光を発する。手のひらから信管が頭を覗かせ、弾丸、薬莢が姿を現した。


160cm程度の相手に、


40mm機関砲 近接信管の榴弾である。



視界に浮かぶ光学照準器模様と、人差し指を重ね合わせ、不安と興奮を胸に発射した。


撃針が発射薬を点火させ、薬莢が火を吹き、醜貌達へと飛翔する。すぐさまに炸裂し、真正面含め全てをミンチにした。今なお、辺りには肉の焼ける匂いが立ち込めている。


本当に効率の悪い攻撃だが、非人道的なまでに相手を破壊しなければ使えない。召喚は、要練習、要工夫だろう。


前方でも、猫娘が狩りを楽しむように、しっぽを横振りながら拳の一撃で屠っていく。圧縮した空気で殴っているらしいが、俺の頭には凄まじいパワーである事しか理解できなかった。


後方で洩れた(洩らされた)人型達を爆散させていると、


「ユウも格闘で戦うのだ!!ママからの命令だぞ!!」


なんて言いつけられた。「ああ、分かったよ」と素っ気なく返し、仕方なく奴らの錆びた剣で応戦する。


しかし、とにかく扱い辛い。どうにも、過剰火力な砲弾の発射と、剣の間合いは相性が悪いのである。


剣を使いこなすような技術は持っていない。余りにもハンデを背負いすぎているのだ。


それに、化学兵器的な毒を塗ろうにも、両刃で鍔迫り合いするには恐ろしい。自分に傷一つでも入れば、致死毒ならお陀仏である。


仕方なく、魔素量の馬力で、斬るというよりは叩き割る、引き裂くような戦いを繰り広げる。


受け止めた刃を無理やり押し返し、相手が受け止めようものなら、刃ごと叩き割る。吾郎がスピードと一撃必殺なら、俺は豪と粘り強い打撃だ。


ようやく戦いに一息がつき、煙草に火をつける。焼け焦げた火薬の匂いが、タールをも凌駕して味が鈍る。


さらに、吾郎が化け物共の胸を引き裂き、魔石を取り出す光景は、少女兵がドックタグを探すようで……どうにも気分が良くなかった。だが、何故だろう。煙草の味は引き立つように思えた。


燃える地面から、全く変化のない藍色の鈍く光る小石を拾い上げる。醜くハゲ散らかし、側頭部から垢まみれの長髪を振り乱していた。あの劣等感の塊から、宝石のような資源が採れるなんて。こんなにも恐ろしくグロテスクな仕組みがあるだろうか。


そう頭をよぎると、煙草の香りは、阿片窟を思わせるような甘い味に戻った。


「先に進もうか。吾郎」


「ママと呼ぶのだ!!猫の姿ではべったりなくせに……。ユウは変に意地を張るのだ」





ちなみに。この洞穴は、岩肌が光合成のように酸素を生み出すらしい。



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