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第3話 念願のニコチン。飼い猫が貧乳ロリ猫耳娘に?大男の逆襲。

「やぁ、おっさん。さっきぶり」


「あ?あぁ、朝に来たガキか」


太いおっさんは、まだ店先に立って棚をいじっていた。そんなデカい腹を垂らして、よく疲れないものだ。


「タバコ置いてる?紙巻のやつ」


「ばかやろぅ。ガキが吸うもんじゃねぇよ。乳でも咥えてな」


「俺は26だよ。身分証作ってきた、素直に売ってもらおうか」


おっさんは怪訝な表情を浮かべ、登録証の白黒写真(念写)と年齢を睨みつけている。


「こっちはニコチン食いたくて我慢ならないんだ。一本でもいいからさ。取り敢えず売ってくれ」


まだ訝しげに首を傾けている。一発殴ってやろうかと思ったが、流石に俺もそこまで堕ちていない。


「それに、お前なぁ……妹も連れてるんだから、タバコじゃなくて飯食わせてやれよ」


「は?妹?」


「妹じゃないのだ!!妾はママなのだ!!」


「は!?誰だよ!!」


後ろには、俺よりも少し背の高い少女が立っていた。触覚のような金髪ツインテールに、猫耳、少し浅黒い肌。赤を基調としてファーの白縁、長袖に膝上のトップスに、極短ホットパンツの組み合わせを着ていた。


「分からんのか!!裕也とは100年の仲だと言うのに!!」


このロリは、なんで俺の名前を知っているんだ。それに100年の仲って……。


ん、猫耳?よく見るとしっぽもある。こんな猫娘と知り合った覚えはないんだが。


「いや、誰」


「な、本当に分からんのか!!朝から夕まで、親よりも成長を見守り続けてきたというのに!!」


当たり前だが両親でもない。兄弟もいない。朝から夕まで。黒い猫耳にしっぽ……まさか。


「にゃん吾郎。にゃん吾郎なのか?」


「やっと気がついたのか!!道で見つけてから、ずーっと後ろにいたのに。一切見てくれないから寂しかったぞ!!」


なぜ飼い猫がこの謎の世界まで?というか、何で萌えキャラみたいになっているんだ……。というか、年寄り猫だったよな。どうしてロリの格好に……。


「はっはっはっは。久しぶりの再会か?しかもママとは、ガキ……そんなヤラシイ格好させて、中々良い趣味してるじゃあねぇか」


「あ、いや。こいつの方が、本当に歳上なんで」


「下の毛が生えたらガキでも漢だ。よしみで売ってやるよ」


「だから違うって……まぁ、タバコは貰ってくよ。ありがとな」


銀貨を二枚置いて、さっさと店を離れていった。女関係に反応したおっさんほど、面倒な相手はいない。ニヤニヤしながら、一切話を聞かなくなるのだ。


「ちょっとこっちに来い」


細い腕を掴み、人通りの少ない路地へと連れて行った。


「なぁ、なんでお前そんな格好してるんだ。というか、何でこの世界にいるんだ」


大きく襟の空いたトップスに、ほぼ生脚を剥き出しにしたホットパンツ。明らかに露出の多い服装だった。外見の幼さが影響して、ものすごく犯罪臭がする。


「ユウが好きそうにしていたからな!!妾は全部しってるんだぞ!!この世界へは一緒に来たのだ!!」


そういえば。こっちに来る前、観ていたアニメの推しがそんな服来ていたな……。うん?一緒に来た?俺にはそんな記憶ないんだが。


「良いか?この世界は日本よりも治安が悪いんだ。さっきも大男に絡まれたし。肌の露出は少ない方が……」


「大男?知ってるぞ!!こいつだろ?」


指さした先には、傭兵団の登録所で、蹴りを入れた男だった。


「昼は世話になったなぁ。借りを返しに来たぞ、クソガキィ……」


手には全長3mはある斧を構え、体にはフルプレートメイルを着込んでいた。白い水蒸気を口元から吐き出し、関節にはシリンダー状のものが見える。どうやら、本気で殺しに来たようだ。


「吾郎、後ろに下がれ。合図で逃げるぞ」


裏には、あのアウ〇レイジ達が控えているはず。こいつ一人を殺したところで、袋叩きにされるだけだ。


「逃げる?こいつを殺ればいい話なのだ!!」


「舐めてんじゃねぇぞ!!」


「オオオオォ!!」と唸り、少女の身長を超える斧が、体を真っ二つに切り裂いた。


しかし、一切血が出ない。肉も骨も無く、ただ黒い泥のような断面が見えていた。


「吾郎!!」


「ユウに当たったらどうしてくれるのだ……?」


少女の顔が怒気に染まっていた。瞳孔は薄く鋭く変わり、切断面が一瞬で繋がる。全身の体毛が逆立ち、尾は太く膨らんでいた。


軽い足取りで、家の外壁を跳ね、倍の身長差を一瞬で埋める。目線が合い唖然とする男を、拳で兜ごと吹き飛ばした。


巨体が地響きを立てて崩れ落ち、それに合わせるように、遠くで車の走り去る音がした。


「後ろにいた人達、『てめぇが振った喧嘩は、てめぇでケリつけろ』って言ってたからね」


「ここへは、死ぬため来たって訳か……」


というか、猫の聴覚って本当に鋭いんだな。俺には音が鳴っているだけで、全く聞き取れなかった。


妙な気持ちの中で、古い箱から一本つまむ。煙草を指に挟みながら、ポケットから取り出したZI〇POで火をつけた。


おもむろに咥え、死んだ目で肺へ吸い込む……煙が重い。フィルターがついていないのか、タールに攻撃されているのが分かる。


甘く苦い経験のない味だった。


目的もなく、理由もなく、見知らぬ世界に住んでいる。意味不明な出来事に刺激はあるが、そこに感慨深さはなかった。


タバコはそんな自分を知らせてくれると同時に、鈍らせてくれる。


「帰るか。俺の家じゃないけど」


「うん!!ユウが居るなら何処でも良いのだ!!」







次回から、迷宮に入ります。その先には、何が待っているのでしょうか。誰かの故郷?


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