第1話 異世界転生? 2500年振りの再会。
あったま痛てぇ……。昨日そんなに呑んだか……?なんで土の上で寝てんだ。何も思い出せん……。
服の土埃を払い、立ち上がると。目の前には女が転がっていた。
昨日酔って青○でもしたか。いや、童貞の俺が青○は絶対にしない。貞操観念だけは固く護っているんだ。
「おい、大丈夫か?姉ちゃん」
声をかけても返事がない、少し戸惑いながら肩をさすると、横顔が見えた。
肌は透き通るように白く、鼻筋が通り、瞼からも分かる大きい目だった。滑らかな長い黒髪が、それらを強調している。
そして、幾ら声をかけても反応がない。慌てて呼吸の確認をするが、息は正常な音で行われていた。
まだ酔ってんのかな。
「おいって、起きろよ」
少し鬱陶しくなって頬を摘むと、女はゆっくり目を覚ました。少しふらついていたので、注意しながら体を支えてやる。あれ?この女……背がめっちゃ高くないか。180cmある俺よりも高いぞ。
乳もでけえ……。
「貴方……だれ?」
「俺は祐也、お前こそ名前は」
「私はマリア……」
外国人か?いや、黒髪な上に、日本語の発音が自然だな。ハーフか?
「マリアさん、昨晩の記憶はあるかい?何かしてたら悪いな」
ポケットを探るも、あるはずの物がない。外に出る時は、必ず尻のポケットに入れるのだが。
「覚えてないわ。何も」
「そうか……」
あれ、落としたか。寝ていた場所を見渡すも、全く見つからない。もう一度体をまさぐるも、一向に見つからない。
タバコがない!!火は……火はあるのかよ。くそぅ……まだ3本しか吸ってねぇのに。
あ、携帯もない。まさか、物取りされて捨てられたのか?
知らぬ場所でGPSが使えない。誰にも連絡が取れないのは、さすがに不味いな。
「おい、あんた携帯持ってないか?落としちまったみたいでさ」
「携帯?なんのこと?」
「まだ酔ってんのか?携帯電話のことだよ。スマートフォン」
女は、本当に知らない顔をしている。言葉は通じているし、日本に住んでいると思うのに。携帯を知らないなんてことがあるか?
「……俺はしがない公務員だ。あんたの仕事は?」
「コウムイン?仕事……」
「住所は。何人家族だ」
「分からない。でも、多分家には1人」
どうやら、嘘をついている訳では無さそうだ。真っ青な顔をしている。記憶喪失ってやつか。
携帯はないし、とりあえず人を探すか……。と思ったが、辺りを見渡しても建物が見当たらない。
「住所はわからなくてもさ、どこら辺に住んでるとかは分からないかな?」
確実に俺の近所ではないし、この女の生活範囲だったりしないだろうか。あーでも、記憶喪失の人間に聞いても、どうしようも……。
「あっち」
女が指で示した。
まさかとは思ったが、疑った所でどうしようも無い。訝しげな顔をしながら着いて行った 。
15分ほど歩いた頃だろうか、赤レンガ通りにありそうな建物が見えた。
「お前、住所も何も覚えてないんだよな?」
「ええ」
「なんで家の位置が分かったんだ?」
「さぁ……」
「さぁ……って」
嘘をついている様子はなし、慌てる様子もない。妙に落ち着いている。ただ、目に光がない。
俺は頻繁に見てきた目だ。パチンコや競馬で全財産溶かして、借金積んで、女房に逃げられ、酒にひたっている自殺未遂者の孤独な目だ。
「タバコある?」
「無いわ」
「そっか。じゃあ、少しお世話になれないかな。お金も家も無くてさ」
「ええ、良いけれど」
「ありがとう」
家の中へ、土足で上がって行った。
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