第0話 背徳者の死。神の死。
薄汚れたベランダから見下ろすと、パキッと整ったスーツを身にまとい、黒塗りのレクサスに若い男性が乗り込んでいた。
忙しなく周りも働き回っている。
「あーーー。会社に核でも落ちてこねぇかな」
煙を吐きながらボヤいた。
あいつらが働くから、俺も出社しろと言われるん
だ。みんなやる気を無くせば、俺も行かなくていいのに。資本主義死ね。
国民全員が、書類整理、グラフ作成、資格勉強、一切捨てて、要求された量だけ、畑を耕していればいいのに。
サラリーマン全員死なねぇかな……。核がなくても、クラスター爆弾に毒ガスでも入れれば逝けるか。
「ニャァァアオ」
リビングで飼い猫が呼んでいる。飼い始めて26年か、長く暮らしているが未だに構ってちゃんだ。獣医も困った顔をしていた。
あっ、この世から獣医も居なくなったら不味いな。それに、医者もいなくなるのか。煙草で肺が死んでも、酒で肝臓が死んでも、モルヒネ入れてくれる人間が必要だ。なんで安楽死が認められないのだろう。
「そうだ、反対する道徳学者も抹殺しよう。本ごと燃やして、消し去ってやろう」
煙草を咥え、タールとニコチンを肺に吸い込む。少しづつ口から吐き出していると、上の階から遠く声が聞こた。
「何してるの!!太郎ちゃん!!こちらに戻ってきなさい!!良い子だから!ね?」
鬼気迫る声色から、野次馬根性を発揮して、柵から身を乗り出した。火をコンクリートの地面で踏み消し、上を覗き見ると……。
かなり小ぶりな尻がこちらに向いていた。手を伸ばそうとした瞬間に、突風に煽られ、小さな体がフワッと宙に舞う。
俺は勝手に柵を飛び越えていた。
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「ああ。なぜ私は時を知ってしまったのだろう」
「あなたが知恵深いからでしょう?」
「なら知恵なんて……逝きたくないよ。例え生き返ったとて、再び君に逢えるとは限らない」
「必ず、必ずや再びお逢いできますよ。それに、時の知識がなければ、異邦の地で私と出逢うこともなかったでしょう?大丈夫です。身に鎖をかけてでも、永遠に待っていますから」
「いいのかい?君に枷を背負わせて……」
「はい。白峰でいつまでもお待ちしております」
※もう一度考え直しました。