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四百年の螺旋階段・新たな戦い  作者: エラワン
14/18

転送不可

 ダニエル氏の軍は、ポルス家から出陣する軍を牽制するようにとの命令を、ヴァシーレ・ルプ公より受けている。

 だが、ダニエル氏の軍一万に対してポルスの軍は二万から三万近いと見られる。もしポルス軍が二手に分かれて、片方がダニエル軍に、もう片方が国境に向かえば牽制にならない。


「ダニエルさん、どうしますか?」


 ダニエルさんはにやりと笑った。


「ユート殿、此れをご覧くだされ」


 ダニエル氏が足元のカバーを剥ぎ取ると、


「これは!」


 あの万博で見かけた機関銃ではないか。

 確かにあそこで、ダニエルさんは機関銃の前を離れなかったのを覚えている。いつの間にか、大量の弾丸と共に機関銃を二機買い求めていた。フリーターの話しをヒントに、鉄砲鍛冶の仁吉が考案し、その弟子の改良により、さらに高性能な機関銃となっていたものだ。

 ダニエル氏はこの機関銃を馬車で、ポルス軍の集合地点近くにまでこっそり運び、設置した。


「撃て!」


 ダニエル氏の号令が響くと二機の機関銃が火を噴く。

 驚いたのはポルス軍だ。近くに敵軍は居ないと油断していた事もあったが、カミナリにでも打たれたような衝撃を受け、馬は散り散りに走り去ってしまうではないか。

 ただし、一斉射撃が終わると直ぐに撤収する。

 そしてポルス軍がやっと馬を集め終わった頃を見計らい、別な地点から再び射撃をした。この繰り返しで、ポルス軍はダニエル氏の軍により見事に牽制され、国境に向かうどころではなくなってしまったのだった。


 だがここで別な思いもしない事態が起こった。


「どうしたんですか?」


 ユミさんが深刻な顔をしている。


「結翔さん、どうも転送システムに不具合が生じているようなんです」

「えっ!」


 そろそろ結菜さんを迎えに行きたいと思っていたのだが、転送システムが正常に働かなくなっていると、研究所から連絡があつたという。


「連絡は出来るのですか?」

「メールの送受信だけは、今はなんとかなるようです」


 信号程度の時空移転なら出来るようになったという。直ぐ結菜さんにメールを送る。


「ケロケロ、ケロケロ」


 結菜さんのアイフォーンで、着信音が鳴っている。


「結菜さん、遅くなったけど、そっちはどう?」

「わぁ、やっと通じた。どうどころじゃないわよ!」

「えっ、何か有ったの?」

「それがとんでもない事態なの!」


 結菜さんから、フランス革命が前倒しで起こってしまったと、その文面からも分かるほど興奮した説明を受ける。


「今は王妃さま達と外国に逃げようとしているところなのよ」

「えっ、そんなに切迫しているのか」

「でも大丈夫よね。ユミさんに転送してもらえぱ、簡単に解決するわ」

「あっ、いや、それが……」

「なに、どうしたの?」


 メールの送受信は出来るようになったが、人の移転はシステムの不具合からまだ出来ない状態らしいと説明する。


「ええっ、そんな!」

「ごめん、転送が可能になったら直ぐに行くから」

「…………」




 三台の馬車に分乗して、ルイ十六世と王妃、結菜さん他数名が、深夜秘かに宮殿を出発する。護衛は四十名の猟騎兵で、若い近衛士官が指揮をした。

 ここで王妃と同乗している結菜さんが、ふと感じたのか疑問を口にする。


「私達って、隠密に行動しているんですよね」

「…………」

「夜はともかく、昼間これだけの護衛をされた綺麗な馬車が、注目を集めないわけが無いでしょ」

「でも、私達は王家なのよ」

「あの……」


 そして、やはりというか、途中で休憩に立ち寄った村では、住民がゾロゾロと集まり出した。さらに、なんとルイ十六世が馬車を降りて、村人と呑気に歓談を始めてしまうではないか。


「ちよっと、何考えてるのよ!」


 一行は皆あまり目立たないようにと、庶民に変装してはいるのだが、それでもこの護衛ではチグハグだ。

 とても逃避行中とは思えない呑気なルイ十六世の様子に、さすがの王妃も少し心配顔になって見ている。


「この王の逃亡情報は、きっともう革命派側に届いているわね」

「私達大丈夫かしら?」

「国境まで後どの位掛かるのですか?」


 王妃の説明では早くても、まだ丸一日か、一日半は掛かるだろうという。


「もう追っ手がこちらに向かっていると思っていいわ」

「…………」


 結菜さんはまた声を出してしまう。


「ユミさん、早く!」

「そのおまじないは効き目があるの?」

「王妃さま、このおまじないは効き目があると一発で助かります」







 ルーマニアとの国境にも特段の変化は無く、ポルス軍はダニエル氏の軍に牽制され、身動きが取れない状況が続いていた。


「ユミさん、まだ直りませんか?」

「それが、どうも単純な状態では無いようなのです」

「というと――」

「一方通行の可能性もあるんです」

「えっ」


 今パリに時空移転をすると、帰って来れないかも知れないというのだ。


「つまり、それだけシステムが不安定という事なのですか?」

「そうです」


 おれはまた結菜さんに連絡を入れた。


「結菜さん」

「結翔さん、直りましたか?」

「いや、それがまだなんです」

「ええっ」


 一方通行の可能性もあると説明する。


「だからもう少し待って」

「…………」





「安兵衛」

「はい」


 おれは安兵衛を呼ぶと、決意を打ち明けた。


「そう言う事でしたら、拙者も殿と共にまいります」


 言い切った安兵衛は刀を掴んだ。


「ユミさん、おれ達をパリに送って下さい」

「結翔さん」


 帰って来れないかも知れないリスクを犯しても、結菜さんの危機を救わなくてはというおれの言葉に、ユミさんは折れた。

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