56.コンテストとその後
さて、ついにコンテスト当日はやってきた。
ルビィがチラシを貰ったというパン屋では店の中で多くのパンが並べられていた。
シンプルなパンが多かったゆえか、アイデアがあったとしても似たり寄ったりで店主も少しだけ険しい顔をした。
そんな中、彼は一つのパンの前に止まった。それはルビィとハルが作ったジャムパン及びあんパンである。
「このジャムパンとかあんパンとはなんだ?」
店主はパンの目の前にあるネームプレートを見てルビィに聞いた。ルビィは笑顔で尚且つ自信満々に答えた。
「様々なフルーツを砂糖で煮込んだものをジャムと言い、それを中に詰めて焼きました。餡の方はカボチャや栗を滑らかにし、砂糖で味付けしたものです。サンプルはこちらに」
「ほうほう、これだけでも充分に美味しそうだ」
そういい、店主はスプーンですくってジャムと餡をそれぞれ一口ずつ食べる。
途端、目を開き店主は盛大に喜んだ。
「何だ! これは! これだけも充分おいしいぞ!?」
そして、店主はパンの方に手を伸ばし、一口食べると更に喜び、飛び跳ねた。
「な、な、な、なんだ!? 今まで私が食べていたものは何だったのだ!? パンの中に何かを入れるという新しい発想! そしてうまい!」
店主のその言葉に見せにいた全員は反応して、ルビィが作ったパンを皆見た。
そして、1人が恐る恐る手を伸ばし、口に入れた。
「確かにこれは旨い! 皆食べてくれ!」
その言葉を皮切りに全員食べ始めた。食べたもの全員が「旨い!」「美味しい」と言う肯定的な意見であり、その様子を見た店主は笑って、こう言った。
「よし、決まったな! 新商品はこちらのジャムパンとあんパンにする! ところでレシピはどこかね?」
「えっと……それなら……こちらに……」
店主のあまりの喜びようにルビィは半分引きながらも、ジャムパンとあんパンのレシピ、そして、ジャムと餡のレシピも渡した。
店主は喜んでそれを受け取ると、それをまじまじと見た。
「なるほど、これらをパンに詰めるといいのだな」
「はい、それにこちらでジャムと餡は用意いたしますので」
「本当か!?」
ルビィの提案に店主ははしゃぎ、ルビィはそれを見て、(そんなに大げさにはしゃぐことかなぁ……)とどこか遠い目をしながら見ていた。
周りの参加者も拍手をしており、ルビィはただ1人複雑な表情をしていたのだった。
「へぇー、結局採用されたんだ」
「しっかし、あそこまで喜びますかね、普通」
「ま、今まで誰も考えたこと無かったしから当然じゃない?」
ルビィは机に突っ伏しながら、ハルに愚痴る。ハルはそれを読書しながら軽く受け流していた。
あの後ジャムパン及びあんパンはその店に並べられることになり、大人気の商品になっていった。そして、それと同時にルビィの噂も流れていったのだ。
その後図書館。
「ハル様ー! 今度はあちらのお菓子屋からアイデアが欲しいと!」
「これで今月何回目だ!?」
リディルで今一躍時の人となったルビィに新商品のアイデアを出して貰おうとたくさんの人が屋敷に押しかけ、ルビィはもはや疲労困憊だった。
ハルはやれやれと思いながら、手助けをしようと思い、とある小説の一ページを捲った。




