17.ハル式小説の書き方講座
今日から九時投稿になります。ご了承下さい。
「書きたいですか、小説を」
「あぁ、お前が楽しそうに書くものだから。面白そうだなって思ってな」
「なるほど……ですがショコラさん。何でもかんでも書けばいいってもんじゃ無いのですよ」
「え、そうなの?」
「はい。書き方を……え、もうこんな時間!? ショコラさんご飯食べ終わったら教えますよ」
「分かった」
そう言うとハルはキッチンの方にかけだし、ショコラも後を追った。
そして昼食を食べ終えた数分後、ハルは再び図書館にやってきたが、そこにいたのはショコラだけでなく、なぜか屋敷のメンバーが勢揃いしていたのだ。
「あ、あの……ショコラさん。これって一体……」
「皆も小説書きたいって言っててな」
「あー……そう言うことですか、まぁ一人教えるのも全員に教えるのも一緒なのでやっていきますよ! 皆メモの準備はいい!?」
ハルは図書館内になぜかあった黒板を使いながら、小説の書き方の基本をレクチャーしていた。
「まず物語は起承転結。始まり、展開が進んで、盛り上がって、締めると言うことが大事よ、読者も入りやすいもの。山登りでいきなり、頂点に立ったりするわけ無いでしょ」
「ごもっとも」
「続いて、起承転結を纏めたプロットというのがあるの。要はあらすじを纏めた物ね。物語をより緻密に書くなら書いた方がいいわ」
「はい質問。書いた方がいいって言うことは書かない人もいるのか?」
「世の中には寧ろプロットなんざ書いたら書いた気になって……となる人は多いわ。でもざっくりとしたあらすじを書く方が何を書くのかわかりやすくていいわよ」
「続いてそれに登場するキャラクターね。ストーリーにそったキャラを書くことは大事よ。例えばこの前書いた冒険譚は主人公サイド、味方サイド、敵サイドと考えたわ」
「ふむふむ。基本はこれら?」
「まぁ……他にもあるけど、後は文章ね。展開が始まるところは一字開けるとか、シーンが変わるところは空白を作るとか。読者も読みやすい方がいいでしょ」
「納得」
「まぁ、ここまでが小説の書き方でございまして、あんた達何書きたいのよ」
ハルがそう言うと皆、待ってましたとばかりにジャンルを言い出した。
「待って待って、一人ずつ言って頂戴、何言ってるかさっぱり分からないわ…」
興奮する住民達を何とか抑え、ハルは一人ずつ聞くことにした。
「はい、まずセレネ。何書きたいの」
「ミステリーを書いてみたいと」
「ミステリー……いわゆる謎解きね。大概殺人とか多いけど」
「そんな物騒な」
「話を聞けい、中には不可解な物を意外な物で解いていくのも悪くないわね」
「意外な物……ですか?」
「ええ、例えば時計とか、本とか。謎を解く鍵を共通してシリーズにするのも悪くないわ
」
「なるほど……」
「主人公はその話以上に謎にするともっと面白くなるわ。全て隠すのではなく、ある程度は見えているけど奥が見えない感じかな」
「ありがとうございます。参考にします」
「はい、続いてクロエ。何書きたい」
「私……恋愛ものを書きたいと思ってまして…」
「恋愛ものか、なら最初は片想い。主人公の方が惚れると言うのはどうかしら」
「そうそう!」
「相手は魅力的なほどいいわね。見た目も中身も完璧な」
「うんうん!」
「そして、恋のライバル登場。ライバルとの駆け引きも面白いわ」
「そうよね!」
「最後は主人公と想い人がくっついてハッピーエンドって言う感じでどうかしら」
「え、そこで終わりですか?」
「この世界……バットエンドは恋愛ものも当てはまるのよね……結局別れさせられて結婚相手は別の人とか、そう言う余計なものを付けるから……。ええそこで終わりよ。現実的なことはいったん無視よ」
「なるほど……そこで終わるんですね…ためになります」
「ハイじゃあ次、ルビィ! 何書きたいの?」
「あ、あのハル様、私達二人で書いていいですか?」
「別にいいわよ」
「私達子供に分かる童話を書きたいのです!」
「童話ね……なら、話は簡単なものでいいわ」
「簡単とは?」
「とあるお姫様のドレスの話だったり、空の色の話だったり、とかだと良いわね。絵を付けたりして分かりやすくするのもいいわ」
「わー凄い!」
「さすが、ハル様! 絵は私に任せて!」
「サフィ、絵が得意なの? 凄いじゃない」
「はい!」
「じゃあここにメモがあるから参考にして頂戴」
「うん! サフィ早速書こう!」
「待ってよルビィ」
「クレセは書きたい物ある?」
「あたいはハルと同じ冒険物が書きたいぜ!」
「そうね……一口に冒険ものといっても多いのよね。財宝を探したり、呪いを解くため世界を旅したり、ただ世界を旅するのもいいわね。私は呪いを解くための旅にしたけど」
「はい! 武者修行の旅を書きたいぞ!」
「お、いいじゃん! 目指すは世界最強ね」
「うん!」
「ならば、主人公は強さにストイック。ライバルとかもいた方が面白いわ。そして強くなるために自分より強い悪役とかをバンバン倒すってのは?」
「面白そう! いいね、何か楽しくなってきた!」
「それでいいわ!」
「レイラって何か書きたい物ある?」
「うーん……そうですね。個人的には物語ではなく日記を書きたいかと」
「なるほど、日々の出来事を纏める感じで」
「そう」
「レイラならそこに薬師としての知識を加えて、薬とかハーブの紹介すればいいと思うな」
「分かりました! 早速書いてみます!」
「んじゃあ、最後、ショコラさん!」
「書きたい物が多くてな……なぁどうすればいい?」
「じゃあその書きたい物を一遍ずつ書くのはどう? 短編集よ。ただ内容は凝縮する必要があるけどね」
「なるほどな! 欲張りセットと言うことか」
「まぁ、そう言うことになるわね」
「なるほど、じゃあ書きに行ってくるわ」
ショコラのこの一言を皮切りにメンバーは自室に戻り、各々書きたい物を書き出した。
数日後、全員の原稿ができたと言うことで、皆で原稿を読み比べをすることになった。ハルが言うには「この前セレネが指摘してくれたけど、内容の矛盾や誤字脱字の確認ね」とのことだ。
「ショコラ様、字が間違ってます」
「えー……どれどれ。マジかよ! 気付かなかったー、サンキューレイラ。でも、このハーブクッキーのハーブの量おかしくないか?200じゃなくて20だろ?」
「え!? あ、ホントだ……」
「本でもドジを発揮するのかオマエは……」
「ルビィさんもサフィさんも分かりやすいです……!」
「クロエさんの文章も面白いね!」
「でも、クロエ様、なぜこの場面を見てないルレッタがこの状況を把握してるのでしょうか……」
「あ、間違えた!」
「全く……10ページもいかないのに、もう間違い5つって…多過ぎでしょ」
「そうか? でもセレネ。ここ場面変わってるのに詰まってるぞ」
「はぁ!? そんなわけ……あった……」
他のメンバーの原稿を読み合い、皆間違いや脱字などを訂正した。
さて、原稿の修正を終え、ハルはこの前お世話になった商会に向かった。
「すみません、お久しぶりです」
「あら、この前のお嬢さん」
すると、受付嬢ではなく、店主がおり、彼が応対した。
「いやー、また来てくれるとは思いませんでした? して今回のご用件は?」
「この前より多くなってしまったが、これ全部刷って欲しい。お金はこちらで出すから」
「ほう! こちらの原稿の全てですか! これ全てお嬢さんが?」
「いえ、私ではなく住民の皆さんが」
「ホホホ、楽しそうですなぁ。そうそうお嬢さんの本、かなり売れ行き好調ですぞ」
と店主はほくほくと笑う。
「それは何よりです」
ハルは笑顔で店主に原稿を預けた。
そこからまたしばらくして、町ではショコラ達の本がかなりの売れ行きを叩き出していると言うニュースが載っていた。
「いやー、まさかこうなるとはな」
「でも小説書くのって楽しいですね」
「まぁ、詰まったりすると結構大変だけどね……」
「また書きたいな」
と皆思い思いを口にしながら、のんびりと談笑していた。
さて、ある日クロエに呼ばれたハルが彼女のの部屋に来た。ノックしてハルは言う。
「クロエー、来たわよーいるー?」
返事はない。ドアを回すとそこにクロエはおらず机に原稿が一束あるだけだった。
「全く、どこ行ったのかしら…これ原稿よね。読んでいいって事かしら?」
ハルは机に乗った原稿をペラペラとめくるしかし、内容を読んで驚愕したのだ。
それは恋愛ものと言えば恋愛ものだが、男性同士の恋愛ものだった。まさかここでBLを読むとは想像だにしてなかったハルは冷や汗を垂らす。
そして、何かの気配がして振り向くと不敵に笑うクロエがいた。




