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11.呪いの子の身の上話

 暗くなった森の中をハルは銀髪の女性に案内されながら、ついていった。先程の殺伐としたやりとりはどこへやら。すっかり打ち解けた二人は、お喋りしていた。

 


 「先ほどはすみません。私はセレネと申します。この奥にある屋敷で働いております」

 「いえいえ、こちらこそ。私はハルって言います。え、こんな森の中に家があるんですか?」

 「はい。もうじき見えてきますよ」


 すると、目の前に大きな屋敷が見えた。ハルの住んでいる屋敷よりは小さいが、普通の人からすると充分とも言える大きさだった。若干古びていたが、寧ろそれがいいとハルは思っていた。

 ハルはその屋敷にしばらくの間、見とれていたが、セレネが扉を開けたことで正気に戻り、中に入っていた。



 この時ハルは少しだけこの屋敷から少しだけ禍々しい何かを感じとっていたが、気のせいだと思いすぐに忘れた。



 セレネの案内で中に入ったハルは応接室のようなところに案内された。セレネは丁寧にお辞儀をした。

 「そろそろ夜になりますし、何かお夕食をお持ちします。まずはお茶でもいかがですか?」

 「ありがとうございます。お願いします」

 「かしこまりました。後、本棚にある本はご自由に読んでいいですよ」

 「え、何で?」

 「森の中で本を持ってくるのは相当の読書好きだと思ったからです。ではごゆっくりと」

セレネは笑顔でそう言い、綺麗に部屋から出て行った。ハルはその言葉を聞き、(このメイド絶対ただもんじゃ無いわ……)と感心した。


 ハルは本棚からいくらかの本を持って、先ほど自分が座ったところに座り、読み始めた。

しかし、途中から何か違和感を感じた。それはさきほど玄関で感じた物と同じだった。

その気配はだんだん強くなり、ハルは本を読むのをやめ、少し焦りだした。


 

 (えー……やっぱりここ絶対なんかいるって! 確かこういうお屋敷には大抵人食い鬼とかいう類いのものがいてそこで騒動とか起こるけど……まさか異世界で体験するとは思わなかったわよ! )

その気配が近づくにつれてハルは更に焦りだした。

 (まだ屋敷の本全部読んでないのに死ぬのはいやよ! いざとなったら魔法でも何でも使って逃げてやるわ! でもそれってある意味死亡フラグよね。あーもー! どうしたらいいのよー!)

 すると、扉が開き、ハルは驚いた。そこにいたのはセレネとその後ろには綺麗な夜空みたいな髪を持つ、セレネより少し幼い目隠れの少女がいたのだ。



 「申し訳ございません。ハルさん。お嬢様がどうしても会いたいと聞かず……」

セレネにいれて貰ったお茶を飲みながらハルは聞く。どうやら、久々の客人に興奮した少女が無茶言ってここに来たとのこと。

 「初めまして、クロエと申します」

目隠れ少女は優しくそして溌剌と自己紹介をした。ハルも続いて自己紹介をする。


 しかし、ハルは言いたいことがあった。

 「あのー……ところで先ほどから何か少し違和感を感じるのですが……」

 「? 違和感とは?」

 「闇の気配が強いような……」

その一言でクロエとセレネは少し真剣な顔つきになる。どうやら何の事だが分かったようだ。

 そして、セレネが真面目な顔つきになっていった。



 「お嬢様は昔から左手で触るとものがすぐに枯れたり、死んだりするのです」

 「つまり、呪いをかけらてる、と言うことですか?」

 「はい、それ故家族や他の使用人には忌み嫌われてまして……15になった年にここに閉じ込められました」

 「はぁ、そんなことが」

とハルは気の毒そうに頷いたが、内心は(確かに可哀想だけど、触られて死んでしまっては嫌だもの。ご家族の気持ちも分からなくは無いわ)と思っていた。



 「一時期、お嬢様は左手に手袋を着けていましたが、やはりそれでも効力はあるみたいで……」

 「なるほど……解呪とかは試しましたか?」

ハルが聞くと二人は残念そうに首を振った。

 「試すには試しましたが、どれも至らず…」

 「なるほど、そうですか…ところで左手を見せてことは出来ますか?」

 「はい見せることなら」

 そう言って、クロエは手袋を外した。ハルはその左手を極力触らないようにして見る。



 彼女の左手は禍々しいオーラが出ており、一瞬ハルは怯んだ。しかし、好奇心にかられ見ていく。

極力触らないように手の甲や掌を見る。すると、何やら薄い何かが見えたのだ。

 ハルは一通り見た後、元の席に戻り、二人に向かって言った。


 「もしかしたらですが、私になら解呪出来るかも知れません」

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