その93 魔王城本城改善計画案 その6
八階層のケットシーの遊園地は、取り入って改善するものが無い。
裏事情のオークション会場も、不正も無く継続しても問題ない。
ただ、人間界の物資が異様な高額設定で出品されているのは、人間の私からすれば頂けない事だ。
そもそも、どうやって人間界物資を調達しているか不明なのもイケすかない。
前提として、私が数多の旅路を数年掛けて、ようやく辿り着いたのがここの魔王城だ。
もし魔の者達が人間界へ易々と来れるようなルートがあるのなら、私の数年もの時間が無駄に思えてしまう。
事実確認としてアラクネママ達に聞いてみるのが一番手っ取り早いな。
「ママ、インプ。オークション会場の人間界物資は、どうやって調達してるんだ?」
アラクネママの話によれば、透明人間物資調達隊なるものが存在し、あらゆる地域に拠点を設けて珍しい物資を届けているらしい。
文字通り、透明な姿をした魔の者みたいだが、いつの間にか物資と共に書き置きの請求書があり、毎回ちょびっと驚いてしまうのが全体的な悩みの種だとか。
「何かしらの改善策は施さなかったのか?」
「色々と試したりはしました……でも……」
そもそもその場にいるかどうかさえ不明で、声も一切出さない為、改善策自体は無駄骨に終わるだけだったと。
書き置きも物資調達のみで、個人的なやり取りも皆無。
話しているママもすっかり悩ましそうに頬杖をつき、大人の色香を放っていた、エロいな。
とりあえず大方の事情把握した事から言えるのは、透明人間の存在そのものが怪しくなってきた事だ。
今も魔王城本城のどっかに1体や2体いるのなら、魔王城本城全域に特性無効化の力を使って、透明化を明かすのも一つの手だ。
早速、対象を透明人間にだけにし、もしものことを考慮し力を永続的にもして、早速魔王城本城全域に力を使わせて貰った。
ママとインプには勿論影響無いが、いつの間にかやら円卓の上に、見知らぬハゲ小僧が寝そべっていやがった。
私がまさかと思っていると、ハゲ小僧はママの傍までうねうね移動して、キモい息遣いで興奮していた。
「でゅへへ~ママはどんな顔でもいいですな~」
「あ、え……」
「……ん? 何かいつもとママの反応が違うような……それに目がバッチリ合ってる気も……ま、気のせいか!」
空いた口の塞がらなくなったママを見て、大変に満足したクソ小僧は、何を思ったのか短パンをポイポイと脱ぎ捨て、ブリーフ一丁姿に。
そのまま私のいる玉座へと悠々と近付き、私の体を舐めまわす様に凝視し、鼻の下を伸ばしに伸ばしていた。
「ふひゅひゅ……魔王になった人間の女らしいけど、体は極上ですな~じゅる……」
「おいクソ小僧。よくもまぁ、私の目前で矮小なる汚物を、ブリーフ越しに見せやがってるな」
「え、ウソ?! オイラの事が見えあばばばば?!」
全身硬直に電気ショックを食らわせ、適当に蹴り落としてやった。
きっとこのクソ小僧は透明人間に違いないだろうが、まさここまで気色悪い奴だとは思わなかった。
未だに何が起きてるか分かっていないママ達に簡潔に説明すると、ママは即座にクソ小僧を逃さまいと蜘蛛糸でぐるぐる巻きにして拘束。
どうやら、ずっと前からいやらしい視線を感じていたのが悩みの種だったらしく、同じ視線をクソ小僧から感じたと。
ママに不快な思いをさせたクソ小僧には、とりあえず口が利けるよう全身硬直と電気ショックを解除し、何故愚行に走ったかを聞かねばならん。
「貴様は何者だ」
「ふぇ? あ、動ける」
「3秒以内に答えないと、そのまま魔獣の餌にするぞ」
「ぶ、物資調達隊の透明人間です! 餌はご勘弁を!」
やはり透明人間だったか、私の洞察力は相変わらず素晴らしいって事だな、はは。
魔獣の餌にするのは一旦止めにし、愚行理由に聞く耳を立てた。
どうやら肉々しい女が好みで、暇さえあればママや牛魔王、魔女などのエロい連中を間近で観察し、色々と捗らせて貰い、明日の糧になっていたと。
「ふざけた奴だな。金輪際しないと誓約するなら、今回は大目に見る」
「し、しますします!」
「そうか。しっかりと私の記憶に刻んだから、二度目はないからな」
「ひっ……そ、そもそも何でオイラの姿が、皆に見えてるんですか?」
「透明化の特性無効化をしたまでだ」
「や、やる事がエグすぎる……」
透明人間にとやかく言われたくはないし、クソ小僧が元々愚行に走ったのが元凶なのだから、決してエグイとは思っていない。




