その82 城内放送で集合、一番乗りはアイツ
右腕が行くがまま後に続くこと数分、妙に分厚そうな扉前に到着し、魔力を込めて開け始めていた。
「さ、入って下さい」
「おい、何なんだここは」
「城内放送室ですよ。ほら、早くしないと閉まっちゃいますよ」
自動的に閉まった途端、天井の照明がパッとつき、軽く眩しくてイラッとした。
で、室内は何だか近視感を覚え、私の妹であるオートマターのメカメカしい部屋と、非常に似ている事に気付いた。
そんな中、右腕が椅子に座りながら、早くこっちに来いと手招いてやがってた。
面倒ながらも椅子に座ると、にゅいっと目の間に、マイクらしき物体が出現した。
「この魔イクをONにすれば、城内のスピーカーと繋がって、簡単に伝えられるんですよ」
「ほぅ、こんなものまで備えていたんだな」
「はい! それでは、どうぞ!」
私は貴様に各階層の主を集めるよう命じたのに、何故私が自らの時間を要して、貴様の代役をしなくてはならないんだ。
鬱憤晴らしに右腕の椅子を、足で砕いてやり、不意を突かれた右腕は後転しながら転げ落ちていた。
やいのやいのと文句を垂れているが、私は成さなければならない押し付けられた仕事があるんだ。
邪魔をするなら、右腕の脛を何度も角っ子にぶつけさせてやる。
右腕の声を耳から通り抜けさせ、早速魔イクに向かって、言いたいことを言ってやった。
《新魔王の私だ。各階層の代表に告げる。今から1時間以内に魔王広場へ来い。一秒でも遅れでもすれば、一生もののトラウマを作ってやる。以上だ》
大変に満足のいったスピーチに、思わず自画自賛してしまうな。
「うわ……よくもまぁ、恐ろしい事を簡単に言っちゃいますね」
「貴様が任せやがったからだろ。ここは用済みだ、魔王広場に行くぞ」
「ほーい」
真面な返事もできない奴が、何故に私の右腕なのだろうかと、無駄な苛立ちを発散させるのに尻を蹴ってやった。
で、見慣れた魔王広場へとやって来たが、既に魔の者のシルエットが一つ、堂々と待ち構えていた。
「お待ちしておりました! 魔王様!」
「あれ? 竜人王君来てくれたんだ!」
「勿論です! 放送を聞いて飛んできました! 丁度天井が開いていたので一番乗りです!」
誰かと思えば鱗男だったか、よくもまぁ自分の開けた天井穴から来れたもんだな。
右腕とキャッキャウフフとハイタッチし、まるで子供のような鱗男だが、私と目が合った瞬間鋭い目つきになった。
「フン! この竜人王も階層主並みの実力持ちだ。いる権利はある」
「おい右腕、コイツ、聞いてもないのに自分を棚に上げて、気持ち悪いぞ」
「まぁまぁ~勇者様が逆鱗を取った事を考えたら、このぐらい大目に見てやって下さいよ」
「魔王様……この竜人王の為に……うぅ……」
右腕の奴め……都合のいい時だけ、味方にいい顔をしやがって。
まぁ心が寛大な私は、鱗男がいようがいまいが関係ない。
さて、制限時間内に各階層の主はちゃんと間に合うかな……ふふ。




