その8 新魔王の衣食住
炎耐性持ちだった右腕だが、衣類とシュークリームが消し炭になって、下着一丁となった。
改造した私が言うのもなんだが、今の右腕は無駄に良い体だ。
イケてる面も相まって、異性なんかはコロッと落ちそうだ。
なんせあの伝記の挿絵は見栄えだけはいい。
人間の女達にも少なからず需要があるもんだから、正直驚きだ。
しかし!
そんなパンイチ野郎の容姿はどうでもいい!
私は逸早くこの殺風景な広間から出たいんだ!
「おい右腕」
「なんでしょう!」
「私の衣食住の場はどうなっている」
「あ」
いっけねー何も考えていなかったや、って面をしてやがる。
そんなんでよくも隠居生活を望んでいやがったな。
怒りを通り越して殺意が芽生える。
「い、今すぐご案内するので付いて来て下さい!」
ほぅ、当てはあるみたいだな。
期待はしないでおくが、ここよりかはマシな筈だ。
右腕の向かうがまま、私は無言の圧力で後に続いた。
「ここになります!」
何やらカビと埃臭い場所だな……扉もなんだか古臭いぞ。
「あ、開きました! どうぞ!」
「……なんだここは」
「すみません。今は納屋しか真面な場所がなくて……」
積荷が埃に塗れた糞みたいな納屋だ……。
私が横になるだけでスペースがなくなるぞ。
牢獄よりも酷い環境だ、許せん。
「貴様……私に対する待遇はこれでいいと思ってるのか?」
「だ、駄目ですか?」
「当たり前だぁあああ!」
「ひぃ!?」
どこをどう見て、この場所を魔王に相応しいと思ったんだ。
もしコイツの部屋がこれ以上のクオリティならば、部屋を納屋にしてここに住まわす。
「いいか右腕。今から私の部屋探しをする。拒否権はない。いいな」
「りょ、了解です」
部屋探しのついでだ、今から城内徘徊だ。
魔王城の内情を知らなくては、魔王は務まらないだろうしな。
「えーっと……どこからにします?」
「近場からだ。どうせ全て見回ることになるしな」
「げ」
面倒臭いなって感情が表情に滲み出てるぞ。
潰されたいのか?
まぁ潰したどころで、元の顔面と大差ないだろうし、そもそも触れたくない。