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その75 新魔王のサポート係

 スポーツウェアに着替えたはいいが、久々に着たもんだからサイズがキツイ。

 特に胸がギチギチで、今にもはち切れてしまいそうなぐらい、運動に不向きな格好になっている。


 それに歩くのも若干躊躇うぐらいに、スポーツウェアのあらゆる関節部分も、危機に瀕している。

 右腕の着替えを嘲笑いに行きたいのだが、この恰好では無理そうだ。


「勇者様ー? 着替え終わりましたかー?」

「あ、あぁ」

「なら、会場に行きましょうか。ここから直に行けるみたいですし」


 このまま会場に向かえば、スポーツウェアが見るも無残に破け去り、痴女まがいも同然な姿で登場する事になる。


 やはり、今の内にスポーツウェアを脱衣し、通常着で体験会に参加した方がマシだ。

 幸いにも自動装備の力があるから、着替え自体はものの数秒も掛からないから、今の内に着替えてしま。


「勇者様? こっちになりま」

「ばっ!? 今来るんじゃ」


 私はつい、右腕に向かって止まれの仕草をしてしまい、急な動きに耐え切れなかったスポーツウェアは、ビリビリに破けてしまった。


 ガッツリと見やがった右腕はプルプルと震え、堪え切れない感情と共に吹き出した。


「ぷぅううううっ! ゆ、勇者様……くぷぷっ……や、破けちうぐらい太っ」

「それ以上先の言葉を言ってみろ……魔界での制裁を一番重いものにしてやる」


 一瞬で真っ青になった右腕は、口チャックジェスチャーで、それ以上の言葉を口にしないと誓ったみたいだ。

 今回は見逃してやるが、次に不適切な言葉を口にすれば、減らず口に詰められるものを詰めれるだけ詰めてやる。




 通常着に即時着替えた私は、びくびくと怯える右腕に先導させ、体験会の会場へと足を踏み入れた。


 すでに数十人もの魔の者達が、柔軟ストレッチで今か今かと待ち侘びている様子だった。


 勿論ムキムキ男もニコニコスマイルで、ストレッチのサポートをしていたが、私達に気付いて暑苦しく接近してきた。


「やぁ! ちゃんと着替え……おや? 魔人ちゃんは着替えなかったのかな? でも大丈夫! 君がそれでいいなら、いいさ!」

「すまんな。今度は適した格好でやらせて貰う」


「良い心掛けだね! お、そうだそうだ! 君達の体験会のサポート係を紹介するよ! おーい! こっち来てー!」


 確かにムキムキ男がいくら器用でも、この人数を一人で相手するのは、流石に無理なんだろうな。

 そんなサポート係の魔の者が駆け寄ってきたが、ムキムキ男がデカすぎてどんな奴か見えなかった。


「彼らをサポートしてあげてね! じゃ! あとはよろしくね!」


「はい! えーサポート係の赤オーガ……ひぃ?!」

「あ? 人の面見て、悲鳴とは何だ」


 赤肌の魔の者が、みるみる青ざめているが失礼にも程があるぞ。

 拳の一発でも腹に食らわそうとしたが、右腕が肩を無断でポンポンして止めやがった。


「忘れたんですが勇者様。彼は昨日、勇者様にバインバインした赤オーガ君ですよ」

「ちょ、ちょっと?! 思い出させないでくれよ!」


 コイツが私にバインバイン……ほぅ、あの忌まわしき愚行の主だったか。


 すっかり記憶から消え去っていたのに、右腕が余計なことをしたお陰で、胸をバインバインされた感触も思い出したぞ。

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