表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/142

その68 九階層 魔蟲の王国

 善意を行った事で、気分が頗る良くなった私は、次なる九階層を目指す為、エレベーターに乗り込んだ。

 フェルト人形はちゃんと亜空間収納にしまい、部屋に戻ってからベッドに置こうと思ってる。


「じゃあ、九階層に移動しますよ」

「ん? あぁ……待て」

「へ? ど、どうしました? 屁こいたのバレちゃいました?」

「ケツ穴は後で無くすとして、九階層って蟲の場所か?」

「はい。九階層は魔蟲(まちゅう)の王国になります」


 人間の世界で最強な存在である私だが、唯一不得意なものがある。

 そう、それは虫系統の生物だ。


 昨日、キノコ紳士に冬虫夏草のベッドを勧められた際、私は内心肝が冷えていたんだ。

 それぐらい、蟲という生物が昔からどうしても不得意なんだ。


 まぁ、月光蝶みたいな人の成りをしてるのなら、ほとんど気にはならないのが幸いだ。


 だからと言って、この世に蟲さえいなければ、正真正銘の世界最強の存在になれるんだ。


 だが、アイツらは無限に生き続けているも同然なぐらい、無駄な繫殖能力がある。

 なので、全てを排除しようものなら、私の命が幾らあっても足りない程、時間が掛かる計算になる。


 現実的でない蟲共の世界排除は、私の願いでもある。

 しかし、どうすればこの願いを実現すればいいのかが、私には分からない。


「あのー……九階層に行きますよ?」

「勝手に行こうとするな! 九階層はこれから封印する!」

「いや、ダメに決まってるでしょ。魔蟲達も生きてるんですよ?」

「私が不得意な連中だ。魔王城に存在するのは許さん!」

「裏事情を把握しないと、魔王が務まらないのでは?」


 随分と痛い所をついて来るじゃないか。

 ただ、それが現魔王に対する態度なら、上から目線も甚だしい。

 もうこのまま右腕諸共、九階層を封印してしまえばいいか。

 うん、そうしよう。 


「右腕……短い間だったが、中々にいい仕事っぷりだったぞ」

「え、急に何ですか。怖」

「封印する最後に労ってるんだ。有難く思え」

「しれっと恐ろしいこと言わないで下さい! もう、九階層に行きますからね! えい!」

「な!?」


 どうやら右腕は、現魔王である私に意に背き、私を憤慨させたいらしいな。


 ふざけた奴め、ただの肉塊にして蟲の餌にしてやる。

 このエレベーターという密室である以上、右腕に逃れる術はない。

 さぁ、己の行動を一生悔いるが……。


「エターナルバリアー発動! これで勇者に封印されません! へへーん!」


 な、何だと……右腕の奴にも、絶対的な守りを発動する術があったのか!?

 どんな物理攻撃も食らわない奴が、更に術系統も効かなくなるなんて……こんなことがあっていい筈がない!

 力を開放すれば易々と破壊できるだろうが、それでは右腕に負けを認めていると言ってるようなものだ!

 それを分かっていやがる筈だろうから、尚更腹が立って仕方がない! 


「右腕、今すぐそれを解除しなければ、肉塊では済まさんぞ」

「ぴゅ~ぴゅるる~♪ 聞こえませーん♪」

「……その幼稚なバリアーは外れた瞬間、貴様の金玉を潰してやる」

「あ、九階層に着きましたよ」

「な……に……」


 耳に響く鳥肌の立つ羽音、カサカサと動く気味悪い足音、そして蟲臭い匂い。

 そんなクソみたいな要素を詰め込んんだ、数多の蟲達が視界に広がり、私は今にも気を失いそうになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ