その57 七階層 サキュバスハーレム
全世界の統括に一歩近付いたと分かれば、残りの階層の裏事情も、さっさと見て回ってしまおう。
占い師とデュラハン達と別れ、右腕の首根っこを掴みながら、次の階層へ向かうエレベーターへ乗り込んだ。
「あの、勇者様。雑扱いも程々にして下さいね」
「貴様が改善すればいい話だ。私の手を煩わせるな」
「突っかかる方も、悪いと思うんですけど」
「あ?」
「ひゅ~♪ ひゅひゅ~♪」
口笛で乗り切りたいみたいだが、普通に無理だからな。
エレベーターが次の階層へ到着したが、何やら変な色付き空気が、もわもわと漂っていた。
また乳牛みたいなフェロモン野郎がいるのかと、内心ガッカリ感が否めないぞ。
ともあれ、ここまで来たからには裏事情を把握する必要がある。
「おい右腕、早く先導しろ」
「あ、はい」
右腕の奴、珍しく先導するのを躊躇っていたぞ。
この階層は確か、サキュバス達が催淫を引っ切り無しに掛けてくる、淫猥な階層だったか?
しかしだ、右腕が躊躇う理由にはならならず、むしろ意欲的に案内すると思うんだが……。
「あの……勇者様。一つ言って置いていいですか?」
「なんだ」
「そのですね? ここの裏事情は、勇者様なら無害も同然なんですけど、ワシみたいな男には有害なんです」
「いるのはサキュバスだろ? 本来なら貴様は喜ぶべきだろ」
「そうなんですけど……実際に見て貰った方が早いですね」
通路を奥に行くに連れ、右腕のテンションがあからさまに下がってるな。
サキュバスの階層である裏事情に、一体何があるというんだ。
突き当りの大きな両扉まで着くと、右腕は溜息を一つ漏らし、私に顔だけ向けてきた。
「……いいですか勇者様。釘を刺して置きますが、この先にいるサキュバスは全員、実体を持った幻影になります」
「幻影? 誰かが作り出してるのか? まさか……貴様の妻であるサキュバスクイーンじゃ……」
「違います! 妻には魔王城で働かせていませんので、この階層に関与してません!」
「どっちでもいいが、早く開けろ! ふん!」
「あ!」
扉を蹴り破った先には、淫靡な空気が充満する歓楽街が広がり、ド派手な露出をしたサキュバスが、男の魔の者と一緒に歩く光景が映った。
そして建物からは、喘ぎ声やらが絶えず漏れ聞こえ、私はこの裏事情をすぐに理解した。
「な、七階層の裏事情、サキュバスハーレムです……」
「ふーん……これが有害ね……貴様、嘘を吐いたな」
「違うんです。さっき言ったじゃないですか。ここのサキュバスは実体を持った幻影だって」
「だからなんだ。鼻の下伸ばした連中の目的は変わらんだろ」
「……幻影を作ってる、この階層のリーダーに会わせてあげますから、とりあえず付いて来て下さい」
淫らな歓楽街を、マイナス気分で進み始めた右腕。
コイツがこうなってしまう、この階層の主はどんな奴なんだ?