表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/142

その54 元魔王の馴れ初め

 耳垢付き黒球を、手の平に乗せた右腕は、魔力を込め始めた。

 するとどうだ、黒球から立体映像が目の前に映され、マジで意味不明な現実に直面した。


「今から見せるのは、披露宴に使った馴れ初めダイジェストですんで、そこんとこよろしくです」

「分かったから、さっさとしろ」

「急かしん坊はモテませんよ」

「あ?」

「嘘ですごめんなさい! え、映像スタート!」


 この容姿端麗の申し子である私が、モテない訳がないだろうが。

 バレンタインデーには数え切れん程のチョコレートを貰ったんだぞ。

 到底右腕が一生を持っても及ばない、圧倒的な数をな。


 マジで舐め腐ってる右腕には、映像を見終わり次第、もう一度尻蹴りを食らわせてやる。



 そんなこんな映像が流れ始め、魔王城をバックに盛大な音楽と字幕が現れた。


 何々……ワシとサキュバスクイーンが出会ったのは、魔王城が完成した間もない頃だ。


「おい。貴様の妻は、あの淫魔の女王なのか?」

「そうですけど」

「……捏造か」

「はぁー……続けますね。再生っと」


 場面が切り替わり、魔王城前の広場で魔の者達が、宴を繰り広げている場面になった。

 どんどんクローズアップされて、とある魔の者にピックアップされたぞ。


 字幕によると、当時100歳の若かりし魔王であると。


「おい。このイケてる若造は誰だ」

「字幕でワシって書いてあるじゃないですか」

「またしても捏造か」

「再生しまーす」


 無視しやがったなこの野郎。

 で、ドエロイ服装の痴女が、メロメロになった取り巻きを引き連れて、右腕の目の前を通り過ぎたぞ。


 ふ、ふーん……サキュバスクイーンなだけあって、私とタメを張るぐらいには美しいじゃないか。


 しかしなんだ。

 映像がそのドエロイ痴女を追う訳でもなく、取り巻きの最後尾に現れた少女にピックアップされたぞ。


 字幕には、当時見習いサキュバスだった、後のサキュバスクイーンであると。


「右腕……いくら何でも、少女だと擁護できんぞ」

「まぁまぁ、続きを見てから好きなだけ言って下さいよ」


 随分と自信有り気だな、将来的にハゲるのに生意気だ。


 再び場面が切り替わり、少女が一人で綺麗な庭園で、ベンチに座って溜息を付いていた。

 そこへ若かりし右腕が現れ、少女の隣に座り、目と目が合っていた。


 これが右腕とサキュバスクイーンとの出会いなのかと、少しばかり興味がそそられるな。



 で、字幕には、この後二人はこのまま滅茶苦茶愛し合いましたとさ、END。


「おい! 最低だろ!」

「お互い本能的に求め合っちゃったんですよ♪ てへ♪」


 ENDロールには撮影兼編集が、竜人王単独で流れて、映像が終わった。


 ここまで酷い馴れ初め映像に、吐き気を催しそうになったが、どうにか飲み込んだ。


 そして約束通り、右腕の尻に蹴りを食らわせてやった。


「けつぅうううう?!」

「ふん! しばらくケツを労わってろ!」

「あのー……裏事情に到着しました」

「さぁさぁ、お入りになって下さい♪」

「ん? あぁ」


 最低な右腕は無視して、デュラハンとスケルトンと共に、裏事情のある扉の先へと足を踏み入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ