その53 彼女のスケルトン
骨女を一生懸命に直したデュラハンは、私に向かって片膝を着き始めていた。
お? ついに忠誠を誓う気にでもなったか。
「新魔王様。俺は骨美に言われるまで、我を見失っていました」
「ほら、勇者様。デュラハン君もこう言ってますし、今回は許してあげて下さいね?」
「何を言っている。部下の実力を知る、絶好の機会だったんだ。許しはいらん」
「ひゅー! 勇者様カッコいいー!」
「茶化すな」
「えで!?」
ウザさのあまりに、この美脚で尻蹴りを食らわせてやった。
ぴょんぴょん飛び跳ねて痛がってるな、滑稽滑稽。
だが、そんなことはゴミカス程にどうでもいい事で、私は今すぐにでも裏事情とやらを知りたいんだ。
何時までも片膝を着くアホデュラハンを、さっさと立たせて案内させるか。
「おい、デュラハン。この階層の裏事情を案内しろ」
「裏事情ですか……でしたら、骨美と共に案内してもよろしいですか?」
「構わん」
「ありがとうございます。では、早速案内しますのでこちらへ」
「あぁ。おら、さっさと行くぞ右腕」
「お、お尻が……し、死ぬ……」
尻を両手で押さえる右腕だが、物凄くお似合いな姿に、笑いを堪えるのに必死だった。
で、先導するデュラハンと骨女は、後ろを歩く私達を他所に、イチャコラし始めていた。
「ほーね美♪」
「デューラさん♪」
「ほーねー美?」
「デューラーさん?」
「骨美?」
「デュラさん?」
「骨美ー!」
「デュラさーん!」
名前を呼び合う光景だけで、これ程殺意が芽生えたのは、生まれてこの方始めてたぞ。
今まで恋人の一人もできなかった、私への当て付けなら、塵すら残さずに抹消する。
「あのー勇者様。物凄く妬ましい顔になってますけど、大丈夫ですか?」
「大丈夫なら、こんな顔にはならんだろうが……」
「すんまへん」
謝るのなら最初から口にするなって話だ。
今すぐこの場に置き去りにして、ビービー泣かせてやろうか?
そんな罰を与えようとしたが、未だに素知らぬ振りでイチャコラする、首無し鎧と骨だけ女。
憤怒のマグマがグツグツと煮えたぎり、今にも爆発しそうになった。
だが私はここで、とある事を思いついた。
既婚者である右腕が、どうして妻の尻に敷かれているのかを聞けば、気分爽快するのではないかと。
早速だが聞いてみるか。
「右腕。貴様の馴れ初めを聞かせろ」
「え? きゅ、急ですね……まぁ、いいですけど、ちょっと待って下さいね」
何やら自分の頭を叩き始めた右腕だが、右耳の穴から黒光りする球が、コロンと出てきた。
耳垢が付いていて非常に汚い。
「えーっと、今から妻との出会いを映像に出すんで、実況付きでお送りします」
「あ、あぁ」
実況は別にどうでもいいが、映像がどんなものかワクワクが止まらないぞ!




