その38 牛魔王からの優勝賞品
濃厚過ぎて喉越しはいまいちだったが、味と香りは最高だったな。
右腕は未だに飲んでいるが、構わずに牛女とでも話しておくか。
「この母乳は牛女のか？」
「勿論♪ 女の子は無料で飲み放題♪ 今なら直飲みしても良いわよ♪」
なんたる誘惑だろうか。
同性でありながら心揺れ動いてしまった自分がいた。
きっと、底のない母性を牛女から感じたからだろうな。
それにしても、直飲みが同性にのみ許されているのは、異性が右腕みたいな連中がいるから規制しているんだろうな。
「ぷぅふぁ！ 相変わらずの中毒性ですね！ もう一杯貰いたいです！」
「ダメですよ♪ 男の人は一回だけ♪」
「ふひぃー！ 余計に飲みたくなるー！」
「ひたすらにキモいな」
貴様なんぞ、底なし沼で溺れてしまえばいいんだ。
だが、どんな事があろうとも蘇るのがコイツだ、思考するだけ無駄だな。
牛女で気を紛らわして、右腕の事はすぐに忘れよう。
「おい牛女、そもそも闘技場の目的は何なんだ。ただの遊戯なら廃止するぞ」
「ちゃんと訳アリですって、勇者様」
貴様に聞いていないのに、よくもまぁいけしゃあしゃあと居られるな。
「可愛い顔が怖いよ♪」
「ふん！ 可愛いのではない、美しいのだ！」
「あらー♪」
牛女は如何にも男受けしそうだからな、真の美しさが分かっていないんだ。
私が直々に美容教室でも開いて、魔の者達の雌を磨くのもありだな。
美しさがあってこそ女は輝く、私の母もよく言っていた言葉だ。
何時思い出してもいい言葉だ。
さて、魔の者改造計画の一つを鮮明に考えられた事だ。
現実に戻って、話でも聞いてやるか。
「で、訳アリってのはなんだ」
「そうでしたそうでした。訳アリ理由ってのが、優勝賞品が牛魔王ちゃんの、生搾り特濃ミルクだからなんです！」
「ほぅ……男共に闘技場という場を与え、飲ませるチャンスも与えてるのか」
「そうよ♪ 私は強い方が好みですし、定期的に搾らないと胸が痛くなっちゃうんです♪」
だからと言って、わざわざ目の前で、乳房をたぷたぷ揺らす必要があるのか？
揺れに合わせて右腕の頭が動いて、凄まじい嫌悪感が体に走ったが、まぁいい。
「要するに、闘技場の連中は変態の集まりなんだな」
「それ、誉め言葉よ♪」
連中も頭がおかしいなら、その頂点に立つ奴もおかしいのか。
もはやここにいる意味もなくなったな、早く次の階層へ向かうか。
「事情は把握した。今後も渾身的に働け」
「はーい♪ そういえば、その頭の角はどうしたの♪」
「これか？ 牛頭の兄弟から捥ぎ取った」
「も、捥ぎ取った？」
何やら牛女の空気が一変したぞ……体付きも何だか、グラマーから筋肉質に変わってるぞ。
立ち上がった牛女は、私を見下ろしながら、全身から熱気をムンムン放ってる。
お？ 急にやる気になったのか？
