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その21 竜人王

 逆鱗提供してくれた大トカゲ共は、フワフワと飛び立ち、優雅に宙を漂っている。


「……あのフワフワ精神って、元に戻るんですか?」

「戻る? 幸せそうでいいじゃないか」

「……時間が解決してくれると、信じてます」


 貴様は無駄な強メンタルだからな、そんな好き勝手言えるんだ。

 精神面がそこまで心配になるのは、貴様の教育が行き届いていないだけの話だ。

 私には一切関係ない。


 だが、気が向いたら精神正常化も考えなくもない。



 渓谷の深部へと歩み続け、唐突に右腕が止まれのサインをしてきやがった。

 偶然を装って、私の豊満な乳房を鷲掴みしていたら、頭部が吹き飛んでいたぞ。


「勇者様はここで待ってて下さい」

「また待ち惚けさせるのか。沈めるぞ」

「貴方は竜人王君のトラウマですから、やっぱり行かせられません。ので、絶対に来ないで下さい」


 それは貴様が頼りないから、あとで必ず来て下さいませ、という意味合いだろう?

 分かっている分かっている……私は出来る女だ。

 ここぞという時に姿を見せることぐらい、容易い。


 右腕が一人、開けた場へと駆け、中央でくつろぐ大トカゲに話し掛けていた。


「竜人王君ー! もう起きて大丈夫なのかーい?」

「んぁ? 誰だてめぇは」

「ワシだよワシ、魔王。元ね」

「んー……? は! 失礼致しました!」


 ほぅ、右腕の姿が異なっても、忠誠心までは消えていなかったか。

 中々にできる鱗男じゃないか。


 もう少し様子を見て、楽しんでからのご登場だな。


「粗末な場ですが、おもてなしさせて頂きます。お前ら、運んで来い」

「しっかり王してるね。カッコいいぞぉ?」

「褒めても何も出ませんぞぉ?」

「ふふふ♪」

「ふふふ♪」


 なんだあの、のどかなでキャッキャウフフな空気は……貴様らは男同士だろ。


 それはさておき、運ばれてきてる果実や酒が、実に美味そうだ。

 そろそろ飛び入り参加しても問題ないだろうし、鱗男もきっとサプライズに驚くだろうな。


「私も混ぜろ」

「ふふ……あ?」

「私も混ぜろと言ったんだ」

「どこのどい……あっあっあ……」

「りゅ、竜人王様が泡吹いてぶっ倒れたぞ!?」

「お気を確かにぃい!?」


 私の姿を見た途端に、泡を吹いて失神なんて、まったく無礼な奴だな。

 しかも円形脱毛症ならぬ、円形脱鱗症が後頭部にあるぞ。


 苦労してるんだな、気持ちは察しないぞ。


「何で勝手に来ちゃったんですか?!」

「貴様が楽しそうだから、ムカついて来た」

「ぶち壊しにも程がある!」


 やいのやいのと五月蠅い右腕を聞き流し、美味い果実と酒を嗜むのだった。

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