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女勇者、引退したい魔王に代って、魔王になる  作者: とある農村の村人
8章 オークキングとダークエルフ
124/142

その124 ウンディーネの湖畔だった沼地

 ホムンクルスの森を抜け、眼前に広がる混濁色の沼地景色を眺めている。

 見た目通りの異臭と、グポグポな粘度具合は、足を1歩も進みたくなくなる。


 もし落ちたりすれば、一生沼地とズッ友だろうから、安全且つ確実に向こう側に着く方法を模索せねば。


「嫌な顔が出てますよ現魔王様」

「私はか弱き乙女だぞ。沼地ってワードだけでも嫌に決まってる」

「沼地じゃないですよ勇者様。ここは正式にはウンディーネちゃんの湖畔です」


 我がもの顔で横入りしてきた右腕に、反射的に蹴りを食らわせようとしたが、それを上回る本能で蹴る行為を中断させた。


「……タイトルでネタバレしてるから、知ってる」

「え? タイトルって何ですか? 勇者様?」

「知らんくていい」

「えぇー」


 無駄に知ろうとすれば、ろくな事にならんぞ、とは決して言わない。


「で、何故湖畔がこの有様なんだ」


 右腕の拙い説明によれば。酒にすっかりハマったウンディーネが、毎度毎度ゲーゲー吐き続けた結果みたいだ。


 つまり自分の湖畔を、己の吐瀉物で染めたって事か、汚っ。


「ハマり過ぎた今は、自分でお酒を作っちゃうぐらいになってるんですよ」

「あぁーそういえば、オークション会場で1番高い酒にあったな」


 確かウンディーネの雫酒だったか、あれは甘味とスッキリした味わいがとても美味だった記憶がある。


 だが、蓋を開けてみれば、ただの飲んだくれが作った酒だとはな。

 もはや雫酒にもゲロった物も入ってるんじゃないかと、疑いたくなるな。


「魔王様達ー即席ですけど、船を作りましたよー」

「ん? おぉー流石だなヘカトンケイル」


 誰かに何を言われるでもなく、自らの意思で行動するとはな。

 その大変に素晴らしい行動力は、是非とも右腕のアホに見習わせたいもんだ。


 即席の割には十分過ぎるクォリティーの船に乗り込み、汚い湖畔を進む事になった。

 が、時間を持て余すのもあれだから、奴に教育がちゃんとしていたかを聞いてやることにした。



「私だ。聞こえてるか」


《は、はい! コチラ精霊王です! 何か御用でしょうか!》


「四大精霊を教育しただろう貴様に、再教育が必要かどうか判断する為に神託した」


《はわわわわわ……きょきょきょ教育には真心込めたので、四大精霊の皆には全身の細胞という細胞に、ワタシの教育が刻まれている筈です! 間違いありません! 断言できます!》



 コイツ、詳細を聞かずにボロボロと教育者だと認めやがった。

 もはや再教育は必須だな、ふふ。


「精霊王。お前の再教育は決定したが、今の天界はどうなってる」


《へ? そ、そりゃハデス様が勇者様に屈服したと、すぐに知れ渡ったので、ゼウス様が血相変えて守りを固めて……今、再教育決定って言いました?》


「状況は把握した。天界で指咥えて待ってろ」


《ちょ!?》



 ゼウスは怖気付いて守りを固め、精霊王は再教育に恐れをなしている。

 これ程までに愉快な事はないだろうな、今から天界に行くのが楽しみだ。


 どんな手を使って天界の連中に泡吹かすか、心ウキウキ浮足立つ中、右腕がちょんちょんと何か訴えていた。


「勇者様勇者様。あそこ見て下さい」

「なんだ? ……あれはウンディーネか?」


 ぷかぷかと汚い湖畔に浮かび、優雅に仰向けで漂っている青色肌の女は、ウンディーネだな。

 私達に一切気付かず、腹に酒瓶を乗せているが、完全にへべれけなオッサンだな。


 ただ、今の状態で関わりたくないから、今回は素通りさせて貰おう。


 近付かない様、舵を取るヘカトンケイルに告げている最中、ウンディーネがゆっくりと水面に立っていた。


 ふらふらと立つのも辛そうだが、案の定、顔が一気に真っ青になって、ゲロっていた。


「うぇろろろろろろろ……うぇっぷ……はぁ~やっぱ、出すもん出すとスッキリするわ~さーて酒酒~」


 ゲロった後に酒を飲むとは正気の沙汰とは思えん。

 こんなんが四大精霊の1人なんて、一体誰が信じるんだろうか。


 とりあえずウンディーネは見なかった事にしようと決め、向こう側へと進むの私達だった。

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