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その12 まともな食事

 乳房はあとで入念に殺菌消毒しないとならないな。


 たく、どこまでも迷惑なオーガだったな。

 微妙に加減したせいで殺しそこなったが、アイツにはいい教訓になっただろう。


「はにゃ~……」

「わ、ワシを巻き添えにしないで下さい! 勇者様!」

「いたのか」

「理不尽!」


 投擲先にいる貴様が悪いだけで、私には一切悪はない。


 それにしても心なしか、周囲の魔の者達の騒めきが静まっているようにみえる。 

 非常にいいことだ。

 私は静かに食事をしたいタイプの人間だからな、今の環境が丁度いい。


「待たせたな魔王ちゃん。第一食堂で一番人気の定食だ。たんと食いな」

「ほほぉ……これはまた食欲をそそる見た目の数々だ」

「ふっ、味は勿論保証する」


 人間の世界でなら唐揚げ定食と言ったところか。

 香りがより一層腹を刺激するぞ。


 今のところ料理長の腕前を信じているが、口にするまでは確信を得られない。 


「ちなみ食材はなんだ」

「安心しな魔王ちゃん。グロ食材は使ってねぇ」

「そうか。では、いただくとしよう」


 気遣いのできる料理長に頭が上がらないな。

 どれどれ、問題の味はどんなもんか確かめるか。


 先ずは主食である唐揚げからいくか、衣がこんがり小麦色なのもいい感じだ。


「はむ……」


 こ、これは!?

 カリッと触感の味付き衣から、肉汁を閉じ込めた肉が踊りだしたぞ!

 噛む度に旨味が増して、口が至福の洪水に飲まれる!

 飲み込んでしまえば、最高の余韻が体を満たし、我慢できず次のから揚げへと手が伸びていた。



 私は無我夢中でから揚げ定食を食らい、ものの数分で完食をした。


 脳がとろける美味さだった……至福の一言に尽きる。

 魔の者達がこれを食している事実に、猛烈な妬みを覚えたが、どうでもよくなった。


 これから私も食せるのだから、同じ釜の飯を食う者なんだからな。


 ふふ、懐広い私が言うんだから間違いない。


「非常に美味だった。これからも精進してくれ」

「おぅ、いつでも待ってるぜ」


 満足気な料理長が厨房に戻って行ったが、私も大変に満足したぞ。


 さて、腹ごしらえも済んだことだ。

 右腕に次なる場所へと案内させな……なんてことだ。


 右腕の奴、まだ食ってたのか。

 遅すぎるのにも程があるぞ。


「早く口に詰め込め。私を待たせるな」

「勇者様が早過ぎなんですって! ほが?!」

「なら食わせてやる。おら、口動かせ」


 巨乳美女に食べさせて貰えるんなんて、貴様はなんて幸せ者なんだろうな。

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