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その117 魔界城へ

 無限牢獄内を猪突猛進する脱獄囚の私達は、ものの30分程で外まで出て来られ、脱獄に成功した。

 壁という壁をことごとく破壊し尽くして進んだから、とてもスムーズだったな。


 だが同時に、山のように巨大な無限牢獄に甚大なダメージを負わせてしまい、黒煙やら爆発音が引っ切り無しに響いていた。


「あわわわわ……こ、このままだと無限牢獄が木っ端微塵ですよ!」

「だな」


 ハデスへの見せしめに丁度いいが、大罪人共がこの機に乗じて、逃げるかもしれん。

 奴らは裁きの下で生きているんだ、何人(なんぴと)たりとも外へは出さん。


 力を少し解放し、無限牢獄を瞬間修復させ、問題は呆気なく解決。


「おぉー現魔王様って何者なんですか?」

「人間界で歴代最強の元勇者だ。このぐらい余裕だ」

「へぇ~人間が魔王なんて面白!」


 ある意味ヘカトンケイルの奴も、大きな括りで見れば、右腕と同類だな。

 やっぱり連れて行くのを止めようとしたら、鬱陶しい蠅の羽音に、ズッシリと重い着地音が背後から聞こえた。


「し、新魔王しゃま! よくぞご無事で!」

「おぉベルゼブブか」


 涙と鼻水で綺麗な顔がぐちゃぐちゃだが、どうやら構っている時間はないようだ。


 空からは大量の守護デーモン共、陸からは大砂煙と地鳴りを成す規模の大群が、私達の下へ迫っている。

 あれだけの強行脱獄をすれば、そうなるわな。

 だが、来るのが少々遅いな。


「ベルゼブブ、魔界城のハデスまでの最短ルートは分かるか」

「じゅるるる……い、1分程お時間を頂けるのなら、ルートを割り出します!」


 ここ無限牢獄から見える魔界城まで、約数十km程距離はあるが、私の足なら1分も掛からない。

 右腕の奴を除けば、ヘカトンケイルとベルゼブブは付いて来られる筈だ。


「魔界城までの移動時間1分だけだ。分かったなベルゼブブ」

「承知しました!」

「いい返事だ。ヘカトンケイル、右腕を担いで私に付いて来い」

「了解了解。では元魔王様、失礼」

「ひょほ! わぁー! 視線が高いや!」


 呑気に楽しんでるのは右腕の馬鹿だけだな、まぁ移動中に舌を噛んで苦しめばいい。


 とにかく必要最低限の役割は説明し終わったんだ、これ以上この場に佇む意味はない。

 


 私が走り出したのを瞬時に察知したヘカトンケイルとベルゼブブは、ちゃんと並列で付いてきた。


 再び猪突猛進する私達を止めに来た大群は、私達に敵う訳もなく高々と無力に舞うだけだった。




 約束の1分が経過する直前、ベルゼブブは魔界城の到着前にルートを割り出した。


 まず第一前提として、ハデスのいる最上階まで、優に1万mを超えているようだ。

 屈強な魔の者でさえ全力で5日間休みなしで、ようやく辿り着く場所。

 しかも魔王城の様にエレベーターはなく、果てしない螺旋階段を昇る以外に道はない。


「ですが、我のような羽有りの魔の者なら、螺旋階段の吹き抜けを飛んで行けますので、新魔王様をハデス様の下へ運べます!」

「ルートは分かったが……期待の眼差しがキラキラ過ぎないか?」

「運んでいる最中は新魔王様と密着出来るので! ふんす!」


 欲が前面に出過ぎているが、ルートは完璧だな。

 ただ、ヘカトンケイルは流石に運べないだろうから、別の役割りを与えるか。


「ヘカトンケイル。お前は追っ手を食い止めながら、螺旋階段を昇って来い。邪魔する奴らを徹底的に無力化だ」

「了解!」

「わ、ワシはどうすれば?」


 右腕はこんなのでもサキュバスクイーンの旦那であるから、ハデスとは一応親戚に当たる筈だ。

 何かの役に立つかもしれんから、一緒に連れて行くか。


「私と一緒に来い」

「え、コイツも運ぶんですか? 我は嫌です! 臭くなりそうです!」

「お前……たく……運んでくれたら、お前が望むことをしてやる」

「やります! なので膝枕頭なでなでを、あとでお願いします!」

「わ、分かったから、顔面を近付けるな。圧が凄まじい」


 魔界城の中枢に螺旋階段があるそうで、まずはそこを目指し魔界城へと突入。


 待ち受けていた武装した魔の者が行手を塞ぐが、私を止める事は不可能だ。

 魔の者が高々に頭上へ舞い、難なく中枢の螺旋階段へと来れた。


「さぁ! 新魔王様! 我の懐に!」

「あぁ」

「わ、ワシはどうなるんですか?」

「貴様はロープに括って運ぶ。極力触れたくないからの」


 虫ケラを見下すの目に、右腕は自らロープを足に結んでいた。

 腐ってもベルゼブブの部下なのは、忘れてはいなかったようだな。



 作戦通り、ヘカトンケイルが追っ手を食止めているうちに、ベルゼブブには早急に飛んで貰わねば。


 ただ、何もせずに運んで貰うのも気が引け、飛行能力特化のバフを掛けてやった。


「こ、この湧き上がる力! これが愛の力なんですね!」

「そ、そうだな」


 吹き抜けを全力で飛び立ったベルゼブブに、ただただ私は苦笑いまま運ばれるのだった。

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