表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/142

その110 女勇者の感情起伏

 大浴場に改築した5階層インフェルノに、やってきたサキュバスクイーン達と小脇に抱えられた私。

 もうどうとにでもなってしまえ精神で、黙って連行されて来たが、5歳児という好奇心の塊はうずうずして仕方がなかった。


 それもその筈、大浴場と言う名の、大型レジャープール施設も同然なんだからな。


 泳いで遊べる、まさに子供には楽園だ。


「あらあら~魔王ちゃんったら、楽しみ過ぎてバタ足しちゃってる♪」

「はっ! か、体が勝手にしてりゅんだ! わたちの意思(いち)じゃにゃい!」

「この可愛さ、氷漬けにして永久保存したいわね」


 雪女の思考がぶっ飛んでるが、私の意思ではもはやバタ足が止まらん。


 小脇に抱えられつつバタバタし続け、脱衣所でスッポンポンに脱がされ、赤白水玉のフリル水着へと着せ替えられた。


「おかわ~♪ クルっと一回回ってみて!」

「むぅ……しょうがにゃいから、一回だけやりゅ」


 ぎこちないワンターンをお望み通り披露してやったら、サキュバスクイーンが大興奮で抱き締め、気持ち悪いスピードで頬擦り。

 肌がもげ落ちそうだが、己の欲が済むまで止める気配がない。


 一方、痙攣しながらぶっ倒れてる雪女は、今にも昇天しそうだった。



 そんなんでサキュバスクイーンと手繋ぎで、大浴場へと足を踏み入れたが、目に映る全てがキラキラと黄金の輝きを放っていた。

 きっと5歳児による誇張幻覚だと思うが、湧き上がる好奇心は歩みとなって、ずんずん進んでしまう。


 以前の姿で、大浴場の改築具合を様子見した際は、好奇心なんて頭の片隅に追いやっていたが、5歳児になったことで改築の成果を身に染みて体感できているな。

 そこだけはいい経験をさせて貰えているぞ。


「慌てなくても大浴場は逃げないからね♪」

「しょ、しょんなこと知ってりゅ!」

「ふっふっふ~とりあえず、魔王ちゃんが行きたい所から行きましょうね~」

「ふふん! しょれでいい!」


 堂々たる足取りでウォータースライダーを目指しているが、道中のアイスクリーム屋を視界に入れた途端、喉から手が出る程欲しがってる私がいた。

 濃厚且つクリーミーな冷たい甘味が、まるで禁忌の果実の如く、私を未だかつてない程に誘惑しているぞ。


 意思が拒もうと体は抗えず、サキュバスクイーンの手をクイクイ引っ張って、口からあり得ない言葉が漏れた。


「お母しゃんお母しゃ……はっ」

「むふぅ~! 魔王ちゃんったら、もう~♪ もう一回お母さんって呼んでみて!」

「あ、ぁぅ……」


 思考までもがどんどん幼児化してることに、もはや恥ずかしいを通り越している。

 よりにもよって、他人を親だと勘違いして呼んでしまう黄金パターンに、自分を殴ってやりたかった。


 顔が熱くなるぐらい恥ずかしがる私に、サキュバスクイーンはアイスクリームを買って来てくれ、恥ずかしさは一瞬で吹き飛んだ。

 感情の起伏がここまで激しいと、元の姿に戻った時にも影響されそうで、今から背筋がぞわってしてしまうぞ。


 なので少しでも気を紛らわす為、アイスクリームで口元がベトベトに汚れるまで、夢中で食べ続けた。


「もう魔王ちゃんったら〜こんなにお口汚しちゃって~」

「美味しい過ぎりゅのが、わりゅいんだ」

「そうだね~♪ それじゃ、行きたがってたスライダーに行こうっか!」


 たかが水の流れる滑り台なのに、ワクワクとドキドキが止まらないまま、スライダーの列に並び、いよいよ私達の番になった。

 だが、数十mもの高さから下を一望した私は、想像を絶する程に足がすくみ上がり、今にも失禁し掛けていた。


「た、高ぃ……うぅ……」

「ほらほら! 私が一緒に行くから大丈夫だよ!」

「ほんと……?」

「涙目上目遣いのお願い、おかわ~♪」


 サキュバスクイーンの懐にすっぽり収まり、スライダーを滑り降りた。


 私は如何なる死地でさも、難なく乗り越えて来た鋼のメンタルだ。

 が、今の私はウォータースライダー如きで走馬灯を見るぐらい、死を覚悟するスライムメンタルになっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ