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その11 赤オーガ

 立ち直った右腕は、勝手に私の正面に座りやがった。

 よりにもよって正面なんて、正気の沙汰とは思えない。


「いやーさっきは落ち込みましたけど、視点を変えれば気が楽になりましたよ」

「誰も聞いてない」

「まぁまぁそう言わずに」


 駄目だ。

 コイツは強メンタル過ぎて、手に負えない。


「ワシって実際、一からやり直してるもんでしょ?」

「貴様の精神はどうなってる」

「何か変ですか? これが普通なんですけど」

「……いや。それが貴様なんだな」

「はい。で、今度は部下との信頼関係を改める、絶好のチャンスだってことにしたんです!」

「へぇー」


 3000年もの間、魔の者達の描く魔王像に気付かなかったのが、残念で仕方がない。

 強メンタルではなく現実逃避なんだな、きっと。


 哀れみの言葉さえ送りたくないが、視線だけはやろう。


「ねぇ君、どこ出身の魔人?」

「あ?」


 なんだ、ただの赤色肌のオーガか。

 人間に近い顔立ちだが、随分と整ってるな。


 しかしなんだ、私に声を掛けるなんてどうかしてるぞ。

 やはり魔の者達の考えることは分からんな。 


「そんな怖い顔してると、綺麗な顔が薄れちゃうよ?」


 ふん、コイツは見る目がないみたいだな。


 才色兼備の申し子と呼ばれた私は、何時如何なる顔でも変わらないのだよ。


 でだ、恐らくだがオーガの目的はナンパって奴だろうが、滑稽で仕方がない。

 こんな笑い者とは相手するまでもない、軽くあしらって消えて貰うか。


「湾曲した角をストレートにして出直せ」

「きっついなーでも俺、君の紅蓮の角に惚れ惚れしちゃってる♪」


 角に焦点を当てるなんて、見る目があるじゃないか。

 即興で作った割には自信作でな、正直私自身も気に入ってる。


「そうか。その言葉だけは受け取っておく」

「デレもいいね♪ じゃあ、お近付きとして一緒に食べてもいいよね?」


 飄々と私の隣に座るだけならまだ許すが、肩に手を回していいとは一言も言ってはいない。

 無駄に筋肉質で重いだけで、邪魔以外のなにものでもない。


 このまま投げ飛ばして、目の前からご退場願おう。


「それにしても、でかいおっぱいだね♪ えい♪」


 こ、コイツ……私の豊満な乳房に、許可もなく無断で触れただと……。


「ゆ、勇者様?! こ、コラ! 君! いくらなんでも失礼じゃないか!」

「すげぇタプタプじゃん♪ ますます気に入っちゃった♪ えいえい♪」

「えぇー無視ー……」


 所詮は、私のエロい体目当ての性欲の塊だったか……。

 ハプニングならまだ半殺しで許してやるが、コイツは事前に宣言してから堂々と触れやがった。


 尚更質の悪い行為だ。

 死に値する。


「ねぇ、今夜俺の部屋で気持ち良いこ」

「貴様は知っているか」

「ちょ、俺の立派な角を掴まないで!? メシメシ鳴ってるから!?」

「私に許可なく触れた者の末路を」

「ひぃい?!」

「もげて死ね」


 脆弱な乙女に軽々しく投げ飛ばされる男なんぞ、ゴミカス以下だ。

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