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その105 トップアイドルを目指す次女レディーサキュバス

 次女のレディーサキュバスは、姉のボスサキュバスに比べて、だいぶ子柄でスレンダー体系だ。

 まぁ、トップアイドルを目指すのに、容姿だけで勝負するのは明らかに利口じゃないからな。

 容姿で注目されれば一時(いっとき)の脚光を浴びるが、実に短命的だ。

 長い目で考えれば、容姿すらを上回る何かで勝負するに限る。


 レディーサキュバスはバチクソにルックスは良いが、決して容姿に頼らず、ちゃんと他の要素の努力を惜しんでいないのが、言葉で言わずとも空気感で伝わってくる。


「あ、お姉ちゃん! 今日ね、黒死蝶先生に振り付けを褒めて貰えたよ!」

「いつも沢山練習してたもんね。頑張ったわね」

「むふ~♪」


 ボスサキュバスに頭を撫でて貰って、とても綻んでいるレディーサキュバスだが、姉の膝上に座りながらはどうかと思うぞ。

 ツッコむのも何かと面倒だと思い、ただただ傍観しながら食事を済ませた。


 そういえば、黒死蝶の名前をどこかで聞いたことがあったが、確か月光蝶とタッグを組んでいた伝説のアイドルだったか。

 奴の衣装を身に纏い、月光蝶と共にステージにも立ったな。

 割と気持ち的には前向きだったが、最前列にいやがった右腕が失言を漏らした事で、全てが台無しになったんだ。

 思い出しただけでもムカついて来たぞ。


 やはりここは元凶である右腕に向かって発散するしかない。


 とりあえず、鼻に小瓶を突っ込んで遊んでいやがるから、口にも何か突っ込んでやるか。


 手元にお手頃な物がないか探す中、右腕がプルプルと震え始め、ヤバいと気付いた時には既に遅かった。


「ぶぇ……ぶぇっくし! あ、取れた! あ」


 この世で一番汚い飛沫を、正面にいる私に浴びせやがった罪は、極刑よりも遥かに重い。

 己の愚かな過ちに青ざめた右腕は、逃走を図ろうと背を向けた。

 私がそう易々と見逃す訳もなく、即座に両足を金縛りに掛け、転倒させた。


「わ! お、お父さん? 大丈夫?」

「れ、レディーちゃん……ぱ、パパは今日で存在抹消されます!」

「いい事ね」

「ちょ!」

「やば~」


 右腕の身内が入って来たからか、すっかり生皮剥ぎ刑と肉削ぎ系のやる気が失せてしまったな。

 まぁ、何時でも私は手を下せるという教訓になった筈だ、今回は右腕の身内に免じて許すとするか。


 汚れてしまった体にリフレッシュを掛けつつ、右腕を介抱するレディーサキュバスを眺めていると、とある違和感に気が付いた。

 ジャージ姿だから非常に分かり辛いが、レディーサキュバスに決して存在しない膨らみがあったんだ。


 つぅーっと滅多に掻かない汗が頬を伝い、これは本気で動揺している証拠だった。


「な、なぁデス太郎……」

「はい~? 何でしょうか~?」

「わ、私の錯覚か分からんが、レディーサキュバスにアレの膨らみがあるんだが……」

「あらあら~気付いちゃいました~?」

「魔王様、ここはこのキノコ執事が説明しますぞ」


 キノコ執事によると、サキュバスは低確率でアレ付きで生まれ、両刀使いとして名を残せるぐらいサキュバスから尊敬される。

 ただし同系統のインキュバスには、一切そのような事はないそうだ。


 つまり、レディーサキュバスは両刀使いでトップアイドルを目指すという事だ。


 布面積の多い衣類なら然程気にはならないが、アイドル路線のままでいけば、水着やらの限りなく布面積の少ない衣類を着用する機会が増す。


 そんなポロリの危険性がある以上、アイドルは向いていない気もするが、レディーサキュバス自身が決めた道なんだ。

 ここはグッと堪え、いざポロリし掛けた時には、遠隔モザイク処理の力で救おう。


 魔の者の世界常識がこれ程までに奥深いと、改めて学んだ私だが、少し似た様な特性を持つ生物がいると思い出した。


 確か、人間界に生息するハイエナと呼ばれる生物の雌に、アレが存在しているんだ。

 しかも雄よりも大層立派だと、その事実を知った時の父は、丸一日布団から出てこなかった記憶がある。


 父が何故布団から出てこなかった理由が、今の私と同じく本気で動揺していたからなんだと、何年か越しに理解出来た私だった。

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