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その10 単眼巨人キュクロプス料理長

 騒めきがより一層耳障りだが、右腕が厨房カウンターでチンベルを鳴らしていた。


 ははーん……もしや食事を摂るのか。

 私が言わずとも行動するとは、中々気の利いた奴だ。

 デザートがあれば右腕の分も食ってやるか。 


「お? なんだ兄ちゃん。新人の魔人か?」

「えーまぁ、はい。料理長に会わせたい人がいるんで、呼んでくれます?」

「料理長に? 少し待っとけ」


 厨房を仕切る長か……そうか、右腕の魂胆が見えてきたぞ。

 その場を治める者への挨拶回りだな。

 この一択に限る。


 魔王城見学も兼ねてという、効率的な行動を存分に利用しているのだな。


 関心の一言に尽きるな。

 デザートは取らないでやろう。


「優男がオレに何用だ」


 ほぅ……料理長は単眼の青い巨人か。

 料理着が汚れまくって不衛生だな。 

 私に任せれば、その青肌も綺麗さっぱり洗浄できるぞ。


「あーいきなりで申し訳ないんだけど、ワシ元魔王なんです」

「……刻まれたいのか」

「包丁を向けないで下さい!」


 今の姿で元魔王だと信じる者はいないだろうな。

 魔の者達の印象は、あの糞ハゲだからな。

 疑われても致し方がないぞ。


「冷やかしなら飯食って帰れ」

「そうもいかないんだって! ほら、勇者様!」


 ここまで無責任な責任転換を初めてみたぞ……。

 コイツはしばらく飯抜きだな。


 まぁ、右腕に言われずとも挨拶ぐらいしてやるさ。


「ん? なんだ嬢ちゃん」

「私があいつの代わりに魔王となった者だ」

「嬢ちゃんがか? ふーん……」


 ジロジロ舐め回す観察に許可はしていないぞ。


 目玉ほじくって右腕に食わせてやりたい。


「魔王なんて誰でもいいけどよ、あの爺はどこ行ったんだ?」

「死んだ」

「ちょ?!」

「そうか」

「興味なさ過ぎじゃない!?」


 事実、薄毛魔王だったものはこの世に存在しないも同然。

 現実を受け止められないのなら、今度こそあの世で隠居生活を送らせてあげよう。


「で、魔王ちゃんは飯食ってくのか?」

「是非とも頂こう」

「おうよ! 腕によりかけてやるから、空きテーブルで待っときな」

「期待してるぞ」


 ふふ、料理長と私は波長が合うな。 

 どんな食事が提供されるか、座って心待ちしておくか。


 で、右腕は四肢を地に着け、分かり易く落胆しているな。


「右腕、いつまで無様な姿を晒している。早く座れ」

「……ワシ、部下から信頼されてなかった……とほほ……」


 アイツの陰気臭い空気で、待ち侘びている飯が不味くなるではないか。

 貴様がここへ案内したんだぞ、自業自得この上ない。

 早急に座らないのであれば、洗脳で操ることになるな。


 ……いや、その必要はない。

 私は何故、血迷った思考をしてしまったんだ!

 右腕と同じ席で食事をとらないといけないと、一体誰が決めた?


 否、誰も決めていない。


 つまり、私はこのまま座り続ければ問題ないんだ。

 右腕も地べたで食事をすればいいだけの話なんだ。


 何もしなければ全て丸々納まる、これが理想的な解決策だ。

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