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その1 勇者VS魔王

 世界に魔王が現れて早3000年、人類は魔の者達に侵食されていた。

 魔王討伐に幾度となく勇者が駆り出されてきたが、未だ成し遂げられずにいる。


 魔王討伐は全人類の望み。


 そんな人類の望みを叶えるべく、勇者である私が、終止符を打ちに旅立った。



 旅立ちから早数年、念願の魔王城へ足を踏み入れ、城内の数多の窮地を乗り越えてきた。


 残るはこの扉先だけ。

 思い残すことがないよう、扉は蹴り破るのみ。



 ……どうやら当たり部屋みたいだ、無駄に広々して高貴な雰囲気が、如何にもラスボス臭を漂わせている。

 それに玉座にいる奴こそ、諸悪の根源の魔王で間違いなさそうだ。


「魔王。勇者である私が、お前を滅しに来……」

 

 ……ん?


 ……おかしいぞ。

 

 魔王と思しき奴が、角付きの年老いた白髭の爺さんではないか。

 伝記の挿絵だと、わりかし若々しい角生えイケメンだったぞ。 

 

 はっ、もしや魔王の右腕というヤツか?

 なら問答無用で行かせて貰う。


 それにしても右腕の分際で、随分と身構えもしない余裕の態度だ。

 一太刀で終わらせて欲しいみたいだな。 


「……勇者。一つ尋ねる」


 右腕が一体何を尋ねるというのか……少しばかり気になるな。

 

「なんだ」

「歴代勇者って、何で魔王城まで辿り着けなかった訳?」


 何で、と言われても昔の諸事情なんか知らん。


「私には関係ない」

「いや、ありありでしょ?!」

「ない」

「強情!」


 ピーピー五月蠅い右腕野郎だ。

 今すぐ抹殺しよう。


「最後に魔王の居場所を吐け」

「ワシが魔王だって!」

「嘘を付くな。これを見ろ」

「……ナニコレ。ワシ、人間からこんな美化されてたの? ポッ」


 何故頬を染めて満更でもなさそうなんだ。

 くたびれた爺さんの惚け顔なんぞ見たくない。


「ってそうじゃない!」

「もう満足したか?」

「いやいやいや! そもそも歴代勇者が誰一人現れなかったのに、君は何故ここまで来れたんだ?!」

「この足で自力でだ」

「でしょうね!」


 魔王という珍妙な生き物は情緒不安定だな。

 だが、私を油断させるまやかしかもしれない。

 今度こそ魔王を討つ時だ。 


「お前の質問には答えた。行くぞ」

「待て待て待って?! ワシに戦う意志はこれっぽっちも無いから?」

「戦え」

「話聞かん勇者だな! こちとら3000年も待ち惚けていたのよ?! もう、体がなまり過ぎてヤバいから!」 

「話にならん」


 体がなまっているなら、常日頃から備えを怠らなければいい話。

 腑抜けた甘ちゃんに同情の余地なし。


「足腰はずっと痛いし! 関節は悲鳴を上げてるわ! もう体ボロボロ! ご老体も同然なんです!」

「人間界での悪行三昧の数々、私の手で断つ」

「話聞いてぇええぇ!」 

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