第三話 華麗なる変態たち 〜酒池肉林バイセクシャル教諭〜
登場キャラおさらいのコーナー
名前:通称:簡単なプロフィールの順番で書きます!
向井直:直、ナオちゃん:本作の主人公。姉がいない姉萌気質で豊河先輩に「お姉ちゃんになってください」と告白する。
瀬木昏斗:昏斗:イケメンでロリコンで情報通。直の友人。
二限目の始まるチャイムが鳴り響く。
学園の中心から離れた第三校舎。その廊下の端ともなればチャイムの音もかすかに聞こえる程度だ。
この学園の保健室は、珍しく忘れられたような場所にある。
『生徒の心と体を休める場所であるはずの保健室が職員室の近くにあったら、休まるものも休まらない』という校長の意向らしい。
「校長の考えには大賛成だけど、養護教諭があれじゃあね。」
昏斗は軽やかに一段飛ばしで階段を登る。階段を四階分登っても息一つ切らしていない。
「はあ、あの……あのま……はあ、まじょ……魔女に……ほんとに女心が……わかるのか」
対する直は、フルマラソンを走った直後かのように肩で息をしていた。
「どうだろうね。ギリギリ女みたいなところあるからなあ。前は女子生徒連れ込んでたし……ってナオちゃんそれは体力なさすぎでしょ」
「うるさい……元サッカー部の……お……お前が体力ありすぎるんだ。僕は普通だ」
「それが普通だったら日本のワールドカップ優勝は遠いだろうね」
直の息が整うまで少し待ってから、廊下の隅にある保健室へ向かう。通路を挟んだ窓際には、布巾とシーツが干されて風に揺れている。今日は少し風があった。
前を歩く昏斗が扉に手をかける。すると保健室の中から、熱のこもった甘い声が聞こえてきた。
「……だ、だめですよ先生。ぼくたちは先生と生徒なんですから」
「……いいじゃない。誰が見てるわけでもないんだから」
「あ、ちょっとベルトはずさないで……ってシャツ脱がないでくださいよ」
「……脱がないとできないじゃない」
「……先生、あっ」
「んふっ……かわいい声だすのね」
昏斗は寸でのところで手を止める。
「……なんか中で禁断の恋が営まれてるんだけど……今日は男だね」
「どうした、早く入って拭かないと風邪引くぞ」
「あちょっとナオちゃん……」
直が昏斗の脇を抜けて扉を開ける。やや古びた扉なのでガラガラと大きな音が出る。
「先生、女心と拭くものを……って取り込み中か」
落ち着いた口調で遠慮なく入っていった。
保健室の中のベッドの一つにカーテンが掛かっている。カーテンに写った影は仰向けになった男性とその男性に乗りかかった女性の像を写していた。まさしくその姿は生徒と先生ではなく男と女である。
扉が開いたことで、廊下を吹き抜けていた風が直の頬をかすめて保健室に入っていく。ベッドを囲っていたカーテンを揺らして包まれていた中身を顕にした。
「あらまあ」
艶めかしい声とともに白衣を着た四つん這いの女性が姿を表した。白衣もシャツもずり落ちて、暗い紫の下着、大きく張りのある胸部、太ももの裏に渡るガーターベルトが途方も無い色気を主張している。普通の男子生徒なら発情を通り越して卒倒しているところだ。
「これがいわゆるラッキースケベというやつか……でもなんだ、まったくいい気分じゃない」
「ナオちゃんは遠慮ないなあ、俺は気を使ってちょっと待ってようかと思ったのに」
二人の変態には、三十路を迎えて油の乗った教諭の身体に何一つ反応しなかった。昏斗も直の後ろから臆することなく顔を出す。
「ひえっ! お、オレは関係ないですから! なにもしてませんから!」
馬乗りにされていた男子生徒がズボンを上げて、二人がいる方とは違う扉から逃げるように去っていく。これではどちらが男でどちらが女なのかわからない。
「たしかあの子サッカー部の期待の新人でしょ。青田買いがすぎるね」
一年生は入学してからまだ一週間しか経っていない。よほどその一年生が可愛い顔をしているのか、この変態教諭にしても手出しが早すぎる。
「向井……瀬木……あんたらね……あの子逃げちゃったじゃないのよ。もうすこしで若い精力摂取できると思ったのに!」
怒号とともに二人の方に枕が飛んできた。直の頭上を通り越して昏斗の顔面に見事ヒットする。
「ぐへっ!」
うめき声を上げる昏斗を尻目に直はベッドに近づいていく。あくまで無表情で、半裸を目視し続けている。
「チジョ先生頼みがあるんだ」
直はまっすぐに半裸教諭の瞳を見据えて言った。半裸教諭は察したように目を細めると、自らの唇を舐めて微笑を浮かべる。
「どうした向井、あんたが代わりに先生とまぐわってくれるのか?」
直は淀みなく言う。
「僕に女心を教えてくれ」
「やっとあんたもその気になったのね。来なさい遊んであげるわ」
ブラの紐を降ろして今度は女教諭がベッドに仰向けになる。直の腕を取って引きずり込もうとしている。
直と教諭の顔が一ミリのところまで来た。
「何を勘違いしているのか知らんが、僕は告白された女子高校生の気持ちを教えてくれと言っているのであって、肉体的に先生とまぐわいたいと言っているんじゃないぞ。第一チジョ先生のような年増には欲情しないし、その無駄に華美な下着も、これから垂れゆくだけの胸にも興味はない。わかったならあと十年若返ってから僕を誘ってくれ」
直がゼロ距離で言い放つ言葉の弾丸は三十路の教諭の顔面に全弾命中した。
瞬間、プライドを引き裂かれた教諭は右の拳を作る。今度は物理的な弾丸と成って、前かがみになっている直の頬に向かって飛んだ。読んでいたように直は寸前でしゃがんで交わす。頭上に飛んだ拳は――
「ちょっと先生、急に入ってきたのは謝るけど痛いよってえちょっとなにっホベガッ!!」
――歩み寄ってくる昏斗の顎にクリンヒットした。
今回のお気に入りセリフのコーナー
直「これがいわゆるラッキースケベというやつか……でもなんだ、まったくいい気分じゃない」
かつてこれほどまでにラッキースケベに何も感じない主人公がいただろうか……ってセリフですね。直は素直な人ですから、見栄を張っているわけではなく本当にそう思ったんでしょうね。
「僕は年増には興味がない」
そんなこと言ったらまたチジョ先生に殴られますよ。
「お前もあんな人生下り坂女がいいのか?」
いやまあ私だってもう少しピチピチな女性の方が好みですけど、まあでもチジョ先生もなくはないっていうか、別にチジョ先生から誘ってくるならやぶさかではないぐらいなんですけどね。
「何様なんだ。お前キモいな」
うっ……。傷つきましたがこれからも執筆がんばります……もし面白いと思った方は感想評価ブクマなど、もろもろよろしくおねがいします……私が立ち直れるように……何卒……。