24.手紙と皇女の意図
シャロが魔獣だと発覚し、さらに使用人の令嬢に盗み聞きをされていたという衝撃的な一日を過ごしてから、約一週間が経過した。
ローズマリー様からこんな手紙が届いた。
[親愛なるシャルロットへ
シャルロット、元気にしているかしら?私たち、特にホワイトリリィは元気に過ごしています。
早速本題に入ります。あの日以降ずっと気になってたでしょう?結論から言うと、国は魔力の存在を認め、その存在を公表することになりました。
ただし、こんな風に少しばかり捏造して。“魔力は皆の中に眠っているが、使うことが出来るのは選ばれた者のみである”と。他にも、魔力の引き出し方は非公開だったり。国というか皇帝は、魔法使いをむやみやたらには増やしたくないみたいです。
他にもいくつか決まったことがあるから以下に箇条書きで記します。
・国立魔法研究所の設立
→これは私が所長を務めることになりました
・ソレイユアカデミーに魔法科を新設
→入学試験で私、ホワイトリリィ、そしてアリシア公女が魔力量を見定めて、基準値以上の者のみが選ばれます
・帝国魔法師団の創設
→アカデミーの卒業生から採用
・“魔法使い”と認められた者は国の管理下におかれる
ざっとこんな感じですね。私的にはどんどん魔法使いを育成してもいいと思うのだけれど、政府はその気ではないみたいです。まぁ大人からしてみれば、自分の持ってない能力を若者が持つことになりますもの。癪よね。
あぁ、貴女にも第一線で活躍してもらいます。魔獣を従えてるのは世界であなただけなんだから当たり前でしょう。
最後にひとつ。
二ヶ月後、皇室主催の舞踏会を開くことになりました。ここで魔力の存在が正式に発表されます。
どうせ兄上と貴女がファーストダンスを踊るでしょう?
そこで、貴女たち二人に魔法を披露してもらいます。帝国の未来は明るいということを見せつけるためね。
ですが、ここで問題発生。兄上とシャルロットはまだ魔法が使えませんでした。
ということで、これから毎週末皇宮にいらっしゃい。そして二人きりで魔法を使えるよう特訓しなさい。いいですか、二人きりですからね。ぜひ二人の仲を深めてください。
詳しい日時は後ほど連絡します。それでは。
ローズマリーより]
あの日からたった一週間しか経っていないのに、これだけのことが決まっているというのは、正直驚きだ。
その全てを教えていただけたことには感謝しているが、同時にずっしりとした責任感を感じる。それはまるで大きな赤子を腕に抱いているよう。重いのだけれど決して落とすことは許されない。
二ヶ月後に開かれるという舞踏会も憂鬱だ。
私はきちんと魔法を使うことが出来るのだろうか?
皇太子殿下と二人きりで練習をしなくてはならないし。
「……ん?二人きり!!??」
「お嬢様!?どうかなさいましたか!?」
「あ、ええと、なんでもないわ……」
(つい声を出してしまったじゃない!恥ずかしいわ……)
「ふーっ」
ひとまず冷静になろうと深呼吸。そして考える。
どうしよう、皇太子殿下と二人きりだなんて……。
私には皇太子殿下に自分が相応しいという自信が無い。いつも彼に恥じないよう、振る舞いに気を付けているし、話しかけてみるも、彼の笑顔を見たことがないからだ。
仲が良い訳では無いのに二人きりというのは、正直辛い。
しかも、何故かローズマリー様は“二人きり”というのを強調している。これは上手くやれというメッセージなの?
それならば……。
「エリー、これを燃やしてちょうだい」
「よろしいのですか?」
「えぇ、内容は覚えたし、秘密事項がたっぷり書いてあるから誰かに見つかる前に燃やしてほしいの」
「かしこまりました」
―その頃、皇女宮にて
「ローズマリー!!本当にあの手紙を出したのか!?」
大きな音を鳴らして開かれた扉は、シルスマリア帝国第一皇女・ローズマリーの部屋へと繋がる扉。
「ええ、ルイス兄上」
その扉を開けたのは、シルスマリア帝国第一皇子にして皇太子、ルイス・ラ・レイヴン・シルスマリアだった。
「本当にあの、ふた、二人きり……」
「ええ、本当に、あの、二人きりで特訓しろ書かれた手紙を出しましたが、何か?」
どうやらルイスは、ローズマリーの出した手紙について文句を言いに来たようだ。
「馬鹿野郎!!!僕が彼女と二人きりで何ができると言うんだ!!ぁぁああ!!!」
「随分口の悪い皇子様ですね。客がいらっしゃっているというのに」
「ん?」
ルイスはローズマリーの周囲を見渡す。
そこには見目麗しい高位貴族であろう令嬢の姿が。
「帝国の若き太陽、ルイス皇太子殿下。お初にお目にかかります。ジャバウォック公爵家が長女、アリシア・ド・ジャバウォックですわ。以後、お見知り置きを」
アリシアの挨拶は完璧だが、口元が微かに緩んでいた。
対して、ルイスも顔を真っ赤にしながら答える。
「あぁ、君がアリシア公女殿か。その……今の聞いてた?」
「はい、バッチリと。ええと、その、殿下はシャルロット様のことがloveなんですね……!!」
アリシアはよく分からない言葉を用いたが、ルイスには充分意味が伝わったようだ。
「ちっがぁぁぁぁぁう!!!!!」
冷徹というイメージとはかけ離れたルイスの叫び声は皇女宮に隙間なく轟いた。
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