23.シャロの正体と事件発生
「では、同盟も結成したことだし、本題に入りましょう。シャルロット、何があったの?」
魔法使いの真実と、ジャバウォック公爵令嬢の転生という大事な話を聞かされていたので忘れていたけど、今日私たちが集まったのは“シャロ”について話すためだった。
話を聞かされた今なら、公爵令嬢にも心置きなく話すことが出来そうだ。
「本題と言うには、薄い話かもしれませんが……。実は先日、邸に白い毛に琥珀色の目をした動物が現れたのです」
「それがどうかしたの?」
「実は、その動物について、どの図鑑にも記載がないんです。狐かと思ったのですが、あんな色の狐は存在しないと……」
「なるほど!それで知識豊富で賢い私に相談しに来たのね!」
「えっへん!」と言いながら誇らしく胸を叩くホワイトリリィ様は、ローズマリー様から軽いパンチを食らった。
「白い毛に琥珀色の目を持つ動物……」
痛がりながら後頭部を摩る少女を横目に、ローズマリー様は黙々と考えていた。
すると突然、ジャバウォック公爵令嬢が何かを思いついた様子で口を開いた。
「それって、魔獣ではありません?」
「「「え?」」」
魔獣?聞いたことがない。
二人の皇女様も初めて聞く言葉のようだ。
「魔獣ってなに!!?」
「魔獣っていうのは、普通の動物に人間の魔力を流し込んで誕生する獣ですわ。魔力を流すと、体が変色したり、変形することもあるんですって」
そんな獣がいるなんて、初耳だ。
その存在自体、誰からも教えられたことがない。最高峰の教育を受けている自信はあるのに……。
「貴女よくそんなこと知ってるわね?どこで知ったの?」
「あぁ、ジャバウォック公爵邸の書庫にあった本を読んだだけですよ」
ジャバウォック公爵邸の書庫……!
家庭教師から話を聞いたことがある。魔法使い関係の史料はジャバウォック公爵家が代々責任をもって管理しているという。
ジャバウォック家は魔女狩り事件の当時、皇帝と共にそれを止めるのに尽力した。
なぜなら、ジャバウォック家は魔法使いの協力を得て、家門として力をつけた過去があるからだ。
だからか、魔法使いに思入れのあるジャバウォック家は、「この件は自分たちに任せて欲しい」と主張したそうな。
そして今も代々魔法使いに関する史料はジャバウォック家が引き継いでいる。
「そんな本があるのですね……。ジャバウォック公爵令嬢はシャロが魔獣だと思いますか?」
「ジャバウォック公爵令嬢っていちいち言うの疲れない?長いわ。アリシアって呼びなさい」
「え?で、では、アリシア公女さま?」
だって、皇族に近い方を呼び捨てなんてとても出来ない。
「―――はぁ。まあそれでいいわ」
「諦めなさい。シャルロットはそういう子よ」
「そこがいいところなんだけどねっ!」
私はなんだか申し訳なくて苦笑するしか出来なかった。
「話を戻すわね。シャルロット、そのシャロって子は魔獣の可能性が高いわ。理由はね、貴女の魔力が桁違いに高くなってるからよ」
魔力が桁違いに……?
その魔力とやらを確認してみたくて、手のひらを広げたり握ってみた。だけれど別に何も感じなくて。
手首で脈を確認してみてもいつも通りだ。
「そんなことしても意味ないわよ。魔力は視えるものだから、ね。ローズマリー様もホワイトリリィ様も気づいてたのでしょう?」
アリシア公女は、人差し指を頬にあて、小さく首を傾げて聞いた。
それに対して二人の皇女様は、同じタイミングで「まぁね」と、ホワイトリリィ様は語尾をのばし、ローズマリー様は上品に言葉を発した。
「当然気づいてたわ。今までの魔力の二倍以上になっているわ」
「うん!その分引き出せる魔力量も増えるんじゃないかな?」
魔法とは、魔力があるだけでは使えず、それを引き出して行うものだと言われたことを思い出した。
魔力が二倍以上になった私は、それ相応の魔力量を引き出せるのだろうか。
そもそも魔法を使ったことがないのでイメージが全く湧いてこない。
「魔獣と契約して共に過ごすと、魔力が増えると本に書いてあったわ」
「契約なんてしてないと思いますが……」
「名前を付けたじゃない。それで契約完了ですわ?」
え?それだけで?
一瞬ぽかんとしたが、これはもう受けとめるしかないと、落ち着きを取り戻した。
「分かりました」
「よろしい。ところでローズマリー様、ホワイトリリィ様」
アリシア公女はゆっくりと立ち上がり、ドアがある方に体を向ける。
「なに?」
すると突然、右手の中指と親指を擦り合わせて音を鳴らした。
その音ともに、ドアが勢いよく開く。
「皇宮のメイドはきちんと管理なさった方が良いかと」
「「「!!!」」」
なんとドアの向こうに若い使用人が一人立っていた。
耳に手をあてているその姿勢は、盗み聞きをしていたようだった。
(話を聞かれていた!?)
ふっくらとした肌に、紅の濃い唇。その使用人は、奉公に来てる貴族の娘だろう。
「貴女、そこで何をしているの?」
「いえ、何もしてないわ」
「使用人がそのような言葉遣いをするとはどういうことですか!相手は皇族の方ですよ」
さっきのような言葉遣いは、貴族といえども使用人が使っていいものでは無い。
そう思って、つい反射的に説教をしてしまったけれど、相手は黙ったままだ。
「貴女は誰ですの?」
今度はアリシア公女が問いかけてみるも、またもや無反応。
「ねぇ!私たちの話盗み聞きしてたの?お姉さん誰なわけ?」
「ですから、盗み聞きなどしていませんわ。もう行っていいですか?」
「あのさーあ!嘘つかないでよ、帝国序列三十六位エラリアル伯爵家三女オリビア・エラリアルちゃん♡」
こういう時、ホワイトリリィ様はかっこいい。
いつもはただの陽気な方に見えるが、実は天才と呼ばれていたりもする。
その天才ぶりのひとつが、どんなものでも一度見れば忘れないというもの。
その能力は勉学にも役立っていて、アカデミーでは入学以来ずっと成績一位を保っていた。
「!?なんで……!!」
名前を当てられて焦った少女は、そそくさとどこかへ行ってしまった。
「ごめんなさい、まだこの世界に慣れていないのでお聞きしますが、エラリアル伯爵家って確か貴族派の家ですよね?」
「えぇ。そしてブリルガット侯爵家との親戚関係もある家ね」
それなら、盗み聞きをした狙いは分かりきっている。私を探りに来たんだわ。
「どうしましょう。私がもっと早く気づくべきでした……」
「アリシア公女様、そう気を落とさないでくださいませ」
「これはもう父上のところに行くしかないわね」
「陛下のところに、ですか?」
「うん。父上から正式に魔法について発表してもらうためにね。私たちが魔法使いなんて頭のおかしいことを言っていると噂がたつ前に、国から正式に発表するの!」
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