剣の勇者の独白
私の名は、ユウジン。
異世界から召喚された剣の勇者だ。
魔王を撃退し、現在は一線を外れている。
永世大将軍などと言う、富と名誉を手に入れた。
しかしながら、今は心踊ることなく毎日を過ごしている。
騎士団の運営、騎士の採用等部下の作成した書類に目を遠しただ署名をする事が私の日課だ。
鍛練もするが、以前のような情熱も感じない。魔王のいなくなった今、私より強い者はいないからだ。
部下を育てようと一時がんばったが、勇者の私の素質に叶うものなく、好敵手と呼べるものはうみだせなかった。
仕事はたいてい午前中に片付く為、自宅に戻り昼食をとる。
メイドが用意した昼食を、妻と一緒に食する。
妻は、貴族の娘だ。魔王討伐のあと、王さまの薦めで嫁いできた。
其れなりに、美しく教養に溢れた女性であったので、断る理由もなく結婚した。
ちなみに、魔法使いの勇者は、サンニント結婚したらしい。8人の子供がいるらしい。お盛んなことだ。
私達には、子供が出来なく妻は気にしている。
側室を持つように進められた事もあったが、気に入った娘もいなかったのでそのままにしている。
多少の鍛練をしたあと、書斎にこもり、午後のティータイムとしけこむ。
ガラス越しに差し込む、日の光が心地よい。
穏やかな毎日だか、以前のような彩りのない世界。
心踊る出来事のない毎日を、私は過ごしていた。
ある時部下から、はやりの喫茶店があることを聞いた。
なんでも、ミルクコーヒーと言う飲み物が絶品で、メイドのこが凄くかわいいと評判らしい。
ふーん。
と聞き流していたが、妙に気になっていつの間にか店の前まで来ていた。
確かに店は混んでいて、店の前に順番待ちが何人か待っていた。
メイド服を着た娘に最後尾に並ぶよう言われたので、仕方なくそのまま待つことにした。
席に付き、はやりのミルクコーヒーを頼む。
メイドが微笑みと共に運んでくる。
一口飲むと、メイドがお口に会いますかと尋ねてくる。
美味しいと答えると、満足そうに笑顔を返しお辞儀をする。
初めて会った娘なのに妙に懐かしさを覚えた。
店の雰囲気なのか、ミルクコーヒーの味なのかは分からない。
家路を歩きながら、私は、ある女性の事を思い出していた。
異世界転移したての頃、愛していた女性の事を。