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【モノローグ】ささやかな

 中学校の制服を着たままで、降り立ったのは田舎も田舎な小さい駅。


 収穫も終わり殺風景で物悲しい畑に囲まれた細い道を、約三十分。着いたのはごく小さなお寺。少し進むと、ひっそりとした緑の中にお地蔵さまがいる。小さな姿で、まるで赤ちゃんのようなお地蔵さま。


 水子供養。


 わたしは定期的に、ここに来ている。もちろんわたし自身に子供がいた訳じゃない。供養は、いるかも知れなかったわたしの兄弟姉妹のためのもの。


 いや、いるわけなかったのかもしれない。お母さんの仕事だとか人となりだとか、そういうの全部知らないように生きてきた。察さないように、調べないようにと。わたしが一人暮らしまがいの生活を送っていることも、何も考えないようにして受け入れている。


 手を合わせて、思い浮かんだのは雑多な感情達だ。


 まず、ごめんなさい。みんなの分まで生きようって思っていたのに、わたしは惨めで弱い。なんの取り柄もないクズ、後藤優を許して。毎日努力もせずに生きてる、ひどい人間なんだ。心の中で何度も謝った。


 そして、もしも。男なの、女なの。年上、年下。どんな声でどんな顔で、どんな性格で。ふっと思い浮かべては、胸と指先が締め付けられる感覚に陥る。


 しばらく目を閉じたまま、いろんなことを考えてみる。貴方たちの為にできることってなんだろう、なんて思う。その答えはいつも見つからない、きっと暗闇をどれだけ探しても、欲しいものは置いてないのだろう。


 カラスが鳴いて、日が落ちる。そろそろ、帰ろうと立ち上がると、静まりきった辺りにスニーカーの擦れる音が響いた。


 



 帰り道はいつも辛い気持ちになる。最悪な土産物なのに、ここに来なきゃと何かがわたしを駆り立てる。その何かはきっと、罪悪感と出来心以外の何者でもないのか知れない。それでも、その日の晩は‘‘みんな’’に思いを馳せるしかないのだ。


 そしてまた、明日の学校を憂鬱に思って一日画終わっていく。ああ、楽になりたい。

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