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49日+a  作者: 道月 遠
4/14

会話が成立する


 学校に向かった(ねぇ)ちゃんの友達を追いかける為に外を走っていると、病院で会った案内人と似たような格好の奴等が彷徨(うろつ)いているのに気づいた。


 うっわー、今日は厄日かよ。お迎え前の案内人が朝早くからウロウロすんなよなー。


 ん? でも、こいつらは紗幕してないな? 案内人じゃねぇーのか?


「そこの少年、この紙に描かれた男に見覚えはあるか?」


「っ!?」


 うっわ! 話しかけられた!! な、なんだ? 逃げられでもしたのかよ。あーでも、あの案内人の言葉を信じるなら、49日を過ぎても行きたくないって逃げ出す奴もいそうだな。そういう奴を見つけるチームか?


「最近は家の中にしかいなかったからなぁ」


 姉ちゃんの友達を追いかけるのを諦めて、仕方なく答える。


「希少な時間だとは承知しているが、協力を頼む」


 正直、面倒くせぇとは思うけど……会話が成立するのはマジで久し振りだ。あ~その生真面目に頭まで下げる態度とか何処の学級委員長だよ。見れば良いんだろ! 見れば!!


「あれ……こいつ……」


 黒で統一された喪服のような格好。俺の葬式で見た奴じゃね?


「見た事があるのか!? いつ!! 何処で!! 誰の近くに!!」


 矢継ぎ早に質問すんなよ。って! こいつの同僚っぽい奴等まで俺を見るなよ!! うっわ! 近寄ってくるし!! 独りで耐えてた俺がアホみたいに感じるからマジで止めろ!!


 肝心の奴等とは目線も合わないし、会話も出来ねぇんだよ。期待しそうになるだろ、バーカ、バーカ! バーカ!!


 俺は死んだ。だからコイツらが見えるし、会話が成立する。


 だから姉ちゃん達には俺が見えないし、俺の声は届かない。期待するだけ、無駄だ。


「……俺の葬式で似たような奴を見たつーだけだよ。……1ヶ月も前だし、情報としちゃ古いんじゃね?」


 ……無駄だと……分かっている。


「いや、この【背中押し】はコレクターが跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)していた悪しき時代を彷彿とさせる。早急に捕まえたい」


 ん? 捕まえたいって……なんか、警察官みたいな事を言ってね? 逃げ出す奴対策か? でも、案内人にコレクターに気を付けろとか言われたよな。


「コレクターって何?」


「天の定めた命の期限よりも先に、死へと導き……それらの魂を集める者達の事だ」


 あーだから、コレクターか。意外に危ない奴等の呼称だったんだな。


「おい、あの子は【包む母親達】の標的にならないか?」


「【包む母親達】は死への導かれた幼い魂が標的だろ?」


「彼は齢10を過ぎているだろうが……念の為、確認しなければならないな」


「隊長! 情報がありました。丈郷(じょうごう)コウタ、天寿。天寿ならば、【包む母親達】の標的にはならないでしょう。【背中押し】は死んだ者には興味がないようでし、大丈夫でしょう」


 ……意味わかんねぇけど……標的とか、物騒な話してんな。いや、それより目の前のコイツが隊長なのか? 生真面目な奴は委員長とか、隊長とか……長になる趣味でもあるのかよ。


 あーもー仕方ねぇなぁ。変に誤魔化す理由もねぇし……答えてやるよ。


「別人かもしんねぇけど……俺の葬式で似たような奴は確かに見た。違和感があったから覚えてる」


「違和感?」


「ああ。なんつーか、死んだら世界の全部が遠いつーか、目の前にあるのに届かないって感じなんだけど……アイツは、こっちぽいってゆーか。声をかければ、振り向きそうな感じがしたな」


 そう、例えるなら。


「あー、うん。例えるなら、アンタらみたいな感じ……って()ぇよ。よくわかんねぇけど一緒にしたのは不味かったか?」


 メッチャ空気悪くなってんじゃねぇーか。あー余計な事、言った。


「葬式。条件は合いそうだな」


「おい、彼の葬式に出席した者の名簿を入手しろ! 至急だ!!」


 は?


「君は最近、家に居たと言ったな。家族は? 家に帰って来ているか? 様子がおかしくなったと感じる者は?」


 だから! 矢継ぎ早に質問すんなっ……て。


「姉ちゃん」


 そうだ。


 いくらなんでも変なんだよ。あの姉ちゃんが冬眠みたいな寝惚けた事をズルズルと続ける訳がねぇんだよ。


「お姉さん? その人は今、何処……って! 君!! コウタ君!!」


 家に帰る為に走り出したから、声が遠ざかる。でも、あんなん聞いて落ち着いていられるかよ! 【背中押し】とかいうコレクターは死んだ奴に興味ねぇっつてたよな! 生きてる奴の魂が目当てって事じゃねぇかよ!!



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