じゃあな
「とりあえず姉ちゃんは、父ちゃんと母ちゃんより長生きして、地獄に来なくて良いようにしろよな」
もう会えないと覚悟していた姉ちゃんを相手に勝手に話しているけど、声は届かない。
そりゃそーだし、それで良い。もう居ない存在に縛られて、【背中押し】みたいなコレクターに狙われるよりは何倍もマシだからな。
『コズエ? そろそろ時間よ?』
まだ、姉ちゃんを心配してんのか……母ちゃんが遠慮がちに姉ちゃんに声をかけに来た。まぁ、あれだけベッコベコに凹んでたらなぁー。
『うん。ありがと』
そう言って、姉ちゃんは家を出る為に動き出した。……仕方ねぇなぁ。やっさしい弟様が見送ってやるよ。
「【背中押し】の心配ですか?」
ち、違ぇよ。なんでそうなるんだよ。心配なんてしてねぇから!! ただの見送りだよ。バーカ!!
まぁ、最後だからってのはあるけど……ぜってーに言わねぇからな。
「心配なんてしてねぇよ」
『行ってくるね』
呟く声はまだ、寂しさを感じる。けど……まっ、姉ちゃんなら大丈夫だろ。隊長に【背中押し】について話している時に「君の魂を手元に置けない以上、お姉さんは【背中押し】に狙われる事はないだろう」とか、変な保証、貰ったしな。つーより。
「それより……お前さ、コレクターの事、ちゃんと説明して行けよな」
「まさか、本当に来るとは思っていませんでしたから」
おい。お前が変なフラグ立てたんじゃね?
「優しい、お姉さんですね」
それで狙われるとかアホだけどな。でも。
「認めるよ。本当に良い、人生だった。……誰のおかげとか言わねぇぞ! 俺に関わった全員がいたからだからなっ!!」
「はいはい。【背中押し】に関わらせてしまった迷惑分と、【背中押し】情報提供分の例外的な1日丸ごと付き合わされる羽目になった私を憐れんでくれた君が逃げ出すとは思えませんが……そろそろ、行きましょうか」
流しやがった! あー行けば良いんだろ? 行けば。でも、さ。まだ……姉ちゃんの背中が見えている。これじゃあ、見送りが中途半端だよな。
「りょーかい。てか、やっぱり50日の方がキリ良くね?」
「それは上に言って下さい」
どうでも良い事を言って時間をちょこっと稼ぎ、姉ちゃんの背中が見えなくなるまで見送る。
「じゃあな、姉ちゃん」
終
気になっている部分を書き足していきたいと思っていますが、完結にさせて頂きます。
最後に本当に短い、最初の物語。姉視点を投稿したいと思います。こちらも、もしかしたら……長くなる時がくるかもしれません。