表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49日+a  作者: 道月 遠
12/14

1日をどう過ごすのか


「それで、その濃度を保つとは……実に惜しい人材ですね」


 うっわ。言葉のチョイスは(ちげ)ぇけど、【背中押し】を思い出すような事を言い出しやがったな。しかも、濃度とか聞いたら駄目なやつじゃねぇかよ。


 俺は何も聞いてねぇからな?


「いや……刑期終了までに【背中押し】が捕縛された場合、上が勧誘する可能性も捨てきれませんね……」


 は?


「あぁ、すみません。可能性の話ですから、お気になさらず」


 いや、すっげー気になるから。聞こえなかった振りにも限度があるつーの。


「教えたら不味い話な訳?」


「可能性の話ですよ?」


 推測の域を出てはいないと釘を刺されたのかもしれねぇけど、関係ねぇから。聞ける範囲で聞いて、伝えりゃ安心させられるだろ。


 まぁ……向こうは聞こえてねぇから、ただの自己満足だけどな……。


「構わねぇから。増えた1日分、有効利用させてもらうぜ?」


「まぁ……君がそれで良いなら問題ありませんが……本当に……そんな使い方をして、良いんですか?」


 少しずつ、整理され始めた俺の部屋を見渡して、聞きにくそうに問いかけられる。無茶苦茶だろうが、無理矢理だろうが、まだ見える場所にはいられる。いなくなってしまった俺に与えられた1日を無駄遣いして良いのかって言ってるも同然だな。


「良いんだよ」


 どっちかつーと、巻き込まれたアンタが可哀想すぎで迷惑とかかけたくねぇじゃん。俺は一言だけでも、言いたいことが言えて、伝わったから後は自己満足で良いんだよ。


「私に遠慮されていませんか?」


 バレた。


「なんでだよ。俺の刑期が終了したらの話に、遠慮する要素があるのか?」


「……それもそうですね。そういう事にしておきましょうか」


 うっわ、なんだよ。その、私にはわかってますから。的な雰囲気。遠慮する要素がねぇのは事実だろ!


「では、そうですね……どう表現したものか……」


 普通に悩みだしやがった! 凹まれたままも面倒だけど、普通にしてても面倒な奴だな!


「能力、才能、素質、素養……正確に何であるかは教える事は出来ませんが……君は、そういうものが濃厚……いえ、多いのです」


 あー濃度な。隊長に続いて案内人も無自覚に使ってたのかよ。それが多いのと刑期終了後の話がどう関係してくる訳?


「多いだけ。という場合もありますが……君の場合、それを使用、行使、活用が出来る事が確認されていますので……」


 は? いつの間に?


「あ~詳しくは教えてはいけない部分なので、その辺は聞かないで下さい」


「あーまぁ、だろうなぁ。続けろ、続けろ」


 それ詳しく聞こうとしたら、濃度に関する話になるだろーし……まぁ聞かないでやるよ。


「助かります。まぁ、確認されたのが原因というか、敗因というか」


 嫌な例えしかしてねぇな。


「君は案内人、監視人、捜索隊、捕縛隊など……私達の仕事に携わる才能、のようなものがあるので……最悪、刑期終了を待たずに働かされる可能性もあります」


 刑期中に働けって……それ、拒否権がねぇやつじゃね?


「まぁ、かつてのように捕縛隊の人数よりコレクターの数が多いという事態にでもならなければ、そんな可能性は皆無ですけどね」


 あー跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)していた時代な。つーか、その良かったですね。的な笑顔が疲れているのはなんでだよ。案内人自身が刑期終了前に働かされているみてーじゃん。


「しかし、刑期終了した時の選択する内容の1つに冥府で働く事が含まれるのは間違いないでしょうね」


 選択するって事は……自分で選べるって事だよな。


「選択出来る内容って、刑期終了しねぇと聞けねぇ感じだけど……刑期中に変わるもんなのか?」


「あ、はい、聞かないで下さい。選択内容に関しては上の判断ですからね。上が変われば、色々と変わる事が多いですよ」


「それ……振り回され……」


「聞かないで下さい」


 いや、聞きたくねぇし! つーか、聞かないで下さい。っていうのが答えじゃねぇか!! 面倒くせぇ。


「とにかく……君の場合、【背中押し】が刑期中に捕縛されれば、【背中押し】に狙われる心配がないので、冥府で働くという選択肢が出てくる。という事です」


 心配してくれるのは良いけど……俺の今後に【背中押し】が関わってくるとか嫌すぎる。【背中押し】自身と関わらないだけでも安心するべき……なんだろーけど。


「選ぶのは君自身ですが、刑期中から冥府に勧誘されるでしょうねぇ」


 すっげー確信しているよな。そして俺も残念な事に勧誘されるだろーな。とか思ってしまった。

 隊長が無茶苦茶な事を言って、上が許可を出した1日。あの生真面目隊長は善意しかねぇだろうけど……許可を出した上には何か思惑があるとしか思えない。しかも、刑期が終了していない時点で俺に拒否権は無いっつー事は……刑期中に働かされる可能性……俺の場合は結構、あるんじゃね?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ